4月12日から高齢者向けの接種も始まった、新型コロナワクチン。その接種体制をどう整えるかは自治体の判断にゆだねられている。

地域ごとに人口や生活環境も違う中で、どのような工夫をしているのだろう。今回は接種体制の充実を目指し、独自の取り組みを模索している3つの自治体を紹介したい。

メインは個別接種「練馬区モデル」

まず紹介するのは、東京都練馬区が提唱した「練馬区モデル」という接種体制。特徴は、練馬区内の診療所(約320カ所)での個別接種を中心に考えていることにある。その上で集団接種の選択肢も用意し、早期の接種完了を目指すとしている。

練馬区モデルの特徴(出典:練馬区ウェブサイトより)
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個別接種の流れは、住民が診療所に直接予約して、この予約数に応じて区が冷凍されたワクチンを診療所に移送して、接種してもらうというものだ。

ワクチンの温度管理を徹底するため、区全体を4つのブロックに分けて、各拠点となる区立施設に保管用のディープフリーザー(超低温冷凍庫)を配置。ここからトラックなどで診療所に移送した後も、取り扱いに注意するように周知している。

診療所までのワクチン移送イメージ(出典:練馬区ウェブサイトより)

この練馬区モデルのメリットは、住民が遠出をする必要もなく、通いなれた「かかりつけ医」から接種を受けられること。3密や混乱を避けられるだけでなく、普段から診療を受けている間柄から、ささいな体調の変化などにも気づける可能性もある。

接種の流れ(出典:練馬区ウェブサイトより)

練馬区の人口は約74万人で、6月1日から75歳以上の高齢者、6月下旬以降に65歳~74歳の高齢者、7月中旬以降に基礎疾患のある人、8月以降に一般住民の接種が始まる予定。担当者は「引き続き、医師会などと協力して、『早くて 近くて 安心』な接種の実現に万全を期してまいります」としている。

「弟子屈町」は高齢者をタクシーで送迎

ワクチンをめぐっては、接種場所までの移動手段も課題となっている。北海道弟子屈町はそんな悩みをなくそうと、高齢者をタクシーで無料送迎する方針だ。

弟子屈町の人口は約7000人で、そのうち高齢者は約2900人。5月以降、高齢者施設などの入所者と高齢者から、集団接種が行われる。その一方でワクチン供給量の少なさなどから、接種場所は町近郊にある「地域交流ホールてしかが」1カ所になる予定だという。

集団接種会場となる「地域交流ホールてしかが」(提供:弟子屈町)

町の担当者によると、弟子屈町は集落が点在する地理的条件もあり、自宅から「地域交流ホールてしかが」まで、片道20~30キロある人も少なくない。公共交通機関が発達しておらず、さらに高齢者の免許返納も進んでいるため、移動手段がない人もいるという。

そこで考案したのが、タクシーでの送迎サービス。町内のタクシー業者と連携して、希望する高齢者には、自宅と「地域交流ホールてしかが」までの送迎を行う方針だ。

送迎に使うジャンボタクシー。10人ほど乗車できる(提供:弟子屈町)

担当者は「接種会場まで来られない高齢者もいる。「一人でも多くの人に接種してもらうにはどうすればというところから、送迎の発想が出てきた」と話している。

大和市は「別動隊」を組織

ワクチンの接種形式は現状、集団接種と個別接種が一般的だ。神奈川県大和市はこれに加えて、柔軟に活動できるよう、医療従事者による「別動隊」を組織した。

別動隊の目的は大きく二つあり、一つは高齢者の接種環境を整えること。具体的には、最寄り駅から距離があり、医療機関への移動が難しい団地に出向き、住民が訪れやすい集会所などで接種を行う予定とのことだ。

団地などに出向き、高齢者に接種を行うという(画像はイメージ)

もう一つの目的は、外国人が安心して接種を受けられる環境を整えること。大和市の人口は約24万人だが、実は82の国・地域の外国人、約7300人が居住している市でもある。別動隊は、市の国際化の拠点「大和市国際化協会」と連携して、通訳を用意するなどして、複数の外国語に対応した接種会場も作りたいとしている。

また、ワクチンの接種券を送付する封筒には、5カ国語(英語・スペイン語・中国語・ベトナム語・タガログ語)の二次元コードも記載している。ここにアクセスすると、外国語に翻訳された「新型コロナワクチン接種のお知らせ」も見ることができるという。

接種券を送付する封筒には、外国語の接種お知らせにつながる二次元コードも記載している(提供:大和市)

大和市では、5月17日から85歳以上の接種が始まり、その後も順次接種を進めていく予定。市の担当者は「一人でも多くの市民に、安心して接種を受けていただくことを重視し、ワクチンの確保も含めて、多様な接種ができるように体制を整えていきたい」と話している。


地域によって自治体の工夫はさまざまだが、どこも地域の事情が接種の妨げにならないよう、苦慮しているようだった。国も大規模接種センターの設置を検討しているが、人々が不安を感じることのない接種体制が求められているのは確かだろう。

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