ワクチン接種会場で“病歴を確認できるシステム”を運用

4月12日から始まった、新型コロナウイルスワクチンの高齢者向けの接種。ここで課題とされているのが、接種を受ける人の医療情報(病歴など)の聞き取りだ。

正確な情報を得ようとすると、問診に時間がかかるとも言われているが、この課題の解決につながる可能性があるシステムが、香川県坂出市の接種会場で15日、全国で初めて運用された。

12日から始まった高齢者への接種(東京・八王子市)
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ワクチン接種会場で、接種を受けるために訪れた人たちに重い副反応を引き起こす病歴などがないか、問診を担当する医師らがその場で確認できるシステムの運用を開始したのだ。坂出市医師会から坂出市に提案し、接種会場で運用することになったのだという。

医師は接種を受ける人の正確な医療情報を素早く把握することができ、スムーズな接種につながり、受ける人と医師の両方が助かるシステムのようにも思える。

では実際、どのようなシステムで、ワクチン接種会場ではどのような手順で運用されたのか? また、このシステムを利用して接種を受けた高齢者からは、どのような声があがっているのか?

坂出市医師会の桑原和一副会長に話を聞いた。

本人の同意がある場合のみ、保険証の番号をカードに登録

――坂出市のワクチン接種会場で運用されたのはどのようなシステム?

かがわ医療情報ネットワーク協議会が管理している「K-MIX R BASIC」というシステムで、4月1日から稼働しました。

医療機関が診療報酬を請求する際に保険者に提出した、レセプト=診療報酬明細書の情報をもとに、病歴や投薬などの診療情報をデータベース化したものを、本人の同意のもと、閲覧できるシステムです。

このシステムを用いることによって、接種会場において、接種を受ける人のこれまでの診療情報を問診時に役立てることができると考えました。


――ワクチンの接種会場で運用されたのは坂出市が全国で初めて?

全国で初めてです。坂出市医師会から坂出市に提案し、接種会場で運用することになりました。


――接種会場ではどのような手順で運用された?

まず、接種を受ける人に「K-MIX R BASIC」の説明をしたうえで、BASICカード(QRコード付きのカード)にご自身の診療情報を紐づける登録するかどうか、本人の意思を確認します。

BASICカード(提供:香川県医師会)

そして、本人の同意がある場合のみ、BASICカードに保険証の番号を登録し、医療情報を紐づけます。

問診の際にBASICカードを、用意された専用の端末のカメラレンズにかざすと、病歴や投薬記録などが表示されるので、それを見て、医師がアナフィラキシーやアレルギーを引き起こす恐れがある病歴などがないか、不都合な薬剤の投与はないかなどを確認し、接種できるかどうかの判断に役立てます。

「K-MIX R BASIC」の病歴表示(提供:香川県医師会)

「聞き取りの時間を短縮し、正確な判断の根拠になる」

――このシステムをワクチン接種会場で運用しようと思ったのはなぜ?

ワクチン接種の問診において、接種を受ける人の医療情報の聞き取りに時間がかかることは、事前に分かっています。まず、診療情報をデータとして見ることができないとなると、こういった情報は接種を受ける人の記憶に頼ることになります。

接種を受ける人の記憶をもとにした不確実な情報だけで、医師が接種をするかどうかの判断をするしかありません。

また、医療情報を聞き取るときの会話では、ご本人の聴力がしっかりしていないといけないのですが、中には聴力の低下している高齢者の方もおられます。それから、ご自分の診療内容について上手く表現することが苦手な方もおられます。

こうした理由から、会話に基づく問診では正確で速やかに接種できるかどうかの判断をすることが難しい場合があると考えられます。このような難しい状況に対して、このシステムの導入が有効であると考えます。

医療情報の聞き取りの時間を短縮でき、しかも、接種できるかどうかの正確な判断の根拠になると考えています。

さらに、これによって、接種会場での人の流れの滞りも少なくすることが期待できます。

「K-MIX R BASIC」の投薬記録表示(提供:香川県医師会)

接種を受けた人「診療情報を正確に見てもらえるので安心です」

――このシステムについて、接種を受けた人からはどのような声が聞かれた?

「診療情報を正確に見てもらえるので安心です」という声がありました。


――接種を受けた人の中にはBASICカードに登録しない人もいた?

4月15日のカードの登録率は60%ほどでした。

これは、現在のところ、登録できる保険が国民健康保険と後期高齢者医療保険、一部の社会保険に限られていることを考慮すると、かなりの方が登録されたと考えています。これに加え、事前に登録を済ませている方もいます。


――このシステム、ワクチン接種会場以外ではすでに使われている?

システム自体は4月1日から稼働しているので、すでに診療で使用している医療機関はあります。

(画像はイメージ)

医療情報の聞き取りの課題解決につながる可能性がある坂出市の取り組み。今後、ワクチンの供給量が増えた時に備えて、高齢者のワクチン接種をスムーズに行うための各自治体の様々な取り組みを検証し、有効なものは共有し活用していくことが必要なのだろう。
 

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