米国世論調査に変化

 
 
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トランプ米大統領に対する弾劾調査も下院の情報特別委員会による聴問会が終わって一段落したが、ここへきて米国世論が弾劾に否定的に変わってきた。

まず今月17日から20日の間に世論調査で定評のあるボストンのエマーソン大学が行なった世論調査で、トランプ大統領に対する弾劾を支持したものが43%、反対したものが45%で、10月に行なった調査よりも「支持」が5ポイント減り「反対」が1ポイント増えて賛否が逆転した。

中でも注目されたのが民主、共和どちらにも与しない「無党派」の変化だ。10月の調査に比べて「支持」が14ポイント減って34%に、「反対」が10ポイント増えて49%になっている。

「無党派」が「弾劾反対」へ

この結果から見えることは、もともと支持政党のはっきりしていたグループでは大きな変化は見られないものの、共和党支持者の間では弾劾の公聴会の成り行きをみて安堵したように見られる一方、民主党支持者の間では不安がつのっているのかとも思わせる。

それよりも「無党派」が大きく「反対」に振れたことは、今回の公聴会で大統領罷免するに値する証拠が示されなかったことを表しているのではなかろうか。

また、ウィスコンシン州のマーケット大学が同州で今月13日~17日の間に行なった世論調査で、弾劾を「支持」するとするものは10月の調査より4ポイント減って40%に、「反対」が1ポイント増えて53%になっていたが、「無党派」の中で弾劾を「支持」したのは36%に過ぎなかった。

またこの調査では、トランプ大統領と民主党の立候補予定者との対比で支持を尋ねたが、トランプ大統領はジョー・バイデン前副大統領に対して3ポイント差、バーニー・サンダース上院議員(バーモント州選出)に対しても3ポイント差、エリザベス・ウォーレン上院議員(マサチューセッツ州選出)に対しては5ポイント差で優位に立っていた。

ジョー・バイデン氏(左)バーニー・サンダース(中)エリザベス・ウォーレン(右)
ジョー・バイデン氏(左)バーニー・サンダース(中)エリザベス・ウォーレン(右)

勝敗の鍵を握るウィスコンシン州

ウィスコンシン州は中西部のいわゆる「ラストベルト(錆びついた地帯)」にあり、大統領選ではその行方が勝敗の鍵を握ると言われており、前回2016年もトランプ大統領が僅差で勝利し当選に結びついた。

そのウィスコンシン州で弾劾に対する世論が「反対」に振れてきているとことに加えて、トランプ大統領が民主党の3人の有力立候補者を支持率でリードしているのは民主党に対する警鐘と言えるだろう。

反トランプ報道を貫いているワシントン・ポスト紙も、23日の電子版の論評欄で次のように指摘している。
「ウィスコンシン州の世論調査は、民主党の弾劾に対する挑戦に見える」

「両刃の剣」

「弾劾は両刃の剣だ」とは、今回の弾劾調査を始めたナンシー・ペロシ下院議長自身の言葉だ。事実、1999年にビル・クリントン大統領がインターンの若い女性との不倫問題で弾劾された時に、共和党がその問題ばかりを追求して他の政策をないがしろにしたことを批判されて次の中間選挙で大負けした負の前例がある。

そこで今回は大統領を守る側の共和党は「民主党は弾劾ばかりで北米自由貿易協定の批准にも手をつけない」などと攻撃しており、これが世論調査の変化に影響しているのかもしれない。

【執筆:ジャーナリスト 木村太郎】
【表紙デザイン:さいとうひさし】

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木村太郎
木村太郎

理屈は後から考える。それは、やはり民主主義とは思惟の多様性だと思うからです。考え方はいっぱいあった方がいい。違う見方を提示する役割、それが僕がやってきたことで、まだまだ世の中には必要なことなんじゃないかとは思っています。
アメリカ合衆国カリフォルニア州バークレー出身。慶応義塾大学法学部卒業。
NHK記者を経験した後、フリージャーナリストに転身。フジテレビ系ニュース番組「ニュースJAPAN」や「FNNスーパーニュース」のコメンテーターを経て、現在は、フジテレビ系「Mr.サンデー」のコメンテーターを務める。