沖縄に伝わる守り神「シーサー」。今回の特集は、10年前、宮城・女川町で被災し、今は東松島市で暮らしながら陶芸に取り組む男性を紹介。
シーサーや龍など、力強いものが多い男性の作品。そのひとつひとつに故郷の復興への願いが込められている。

落ち込んだ気持ちを勇気付けてくれた「シーサー」

阿部繁夫さん:
なかなか目がうまくいかないんですよ。目は難しいんです

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女川町出身の阿部繁夫さん(70)。この日、阿部さんは厄を払い福を招くとされる「青龍」の製作に取り掛かっていた。

阿部繁夫さん:
みんな苦労しただろうから、いくらかでも力もらって、パワーもらって運気を呼んでもらって、きょうよりあした、あしたよりあさって、ずっと良くなってもらうように作っている

東日本大震災の津波で、女川町にあった阿部さんの自宅は流失。家族は全員無事だったが、現在は東松島市に住む娘夫婦の元で暮らしている。

阿部繁夫さん:
女川にお世話になっています。だから、女川にずっといたかった

社長を務めていた電気設備会社も津波で被災。
立て直しに奔走していた5年前、阿部さんは体調を崩して入院した。落ち込んだ気持ちを勇気付けたのが、退院後に沖縄で見た「シーサー」だったという。

阿部繁夫さん:
躍動感のあるシーサーに出会ったんです。これはすごいなと思って。宮城にもいいかなと。守り神として家に置いたらいいだろうなと思って、そういう気持ちがいっぱいあった。それでのめり込みました

50歳から趣味で陶器作りをしていた阿部さんは一念発起。沖縄の陶芸家・新垣光雄さんの元で修行を重ねた。

阿部繁夫さん:
作り方とか、いろんなこと教えてくれたし、普通なら教えてくれないけど、全て教えてくれた。感謝感謝、あの人が変えてくれた

作品作りに最も重要なのが天気と湿度。土の乾き具合を見極めながら、素早く繊細に心の中でイメージする作品に仕上げていく。

阿部繁夫さん:
手を抜けないですよ。ちょっと手を抜いちゃうと、ヒビ入って割れる場合ある。割れないようにするのに、本当に気を抜けない

これまで作った「シーサー」や「青龍」は合わせて70体以上。宮城シニア美術展で工芸部門の最優秀賞を受賞するなど、作品の完成度も高く評価されている。

阿部さんのこだわりの一つが、作品の色合いや質感を決める、うわぐすり。すべて「マンガン」を使っている。

阿部繁夫さん:
釉薬(ゆうやく)はマンガンという釉薬を付けている。マンガンってカタカナなんですけど、「満願」って、願いが満ちるという意味を込めてマンガンを使っている。大変な思いをみんなしたんで、一日でも早く復興を願うばかりです

龍のうろこをまとったオリジナル「アマビエ」

登米市津山町にある柳津虚空蔵尊。境内にある喫茶店には、阿部さんが新型コロナウイルスの早期終息を願い奉納した「アマビエ」が飾られている。

柳津虚空蔵尊 杉田史 寺庭:
若い方がとても喜ばれているんです。なんかサーファーみたいなアマビエ様だと

たてがみにはシーサーのような巻髪を付け、体には龍のうろこをまとった阿部さんオリジナルの「アマビエ」。シーサーや龍が持つ、魔よけなどの願いも込めた。

柳津虚空蔵尊 杉田史 寺庭:
今、世相が暗いじゃないですか、ちょっとみんなが見るとなんとなくクスッと、かっこいいとか、かわいいと笑ってくれる。明るい神様だと思って、とても感謝しているんです

阿部繁夫さん:
気持ち的に明るくなるように願って作りました

故郷の復興、そして疫病退散。人々の幸せを願い、阿部さんはこれからも作品を作っていく。

阿部繁夫さん:
龍でもシーサーでもアマビエでも、とにかく元気になってもらえれば一番うれしいです

(仙台放送)