「伊勢湾であがった魚が一番うまい」…人気鮮魚店店主の目利き

名古屋市北区の商店街にある人気の鮮魚店「魚晴」は開店してから30年以上、多くの人から愛される名店。朝、市場で仕入れたヒラメやキハダマグロなど、肉厚にカットされた「新鮮な刺身」や、秘伝のタレで香ばしく焼かれた「焼き魚」が人気だ。

人気を支えるのは、同業の名店から引き継いだ秘伝のタレと、この道40年の店主の魚への情熱だ。

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午前7時半。名古屋駅の東「柳橋中央市場」に、「魚晴」の店主・伊藤敏彦さんの姿があった。

「魚はしっかり顔を見て買うのが基本」と、まず立ち寄ったのは、愛知の豊浜漁港で水揚げされた魚を扱う店。

目を付けたのは天然真鯛と、ヒラメ、そして鰆。

伊藤さん:
全国から来るんだけど、自分はこの鰆が一番うまい、味が濃厚、脂も違う

「地元伊勢湾で揚がった魚は味がすごくいい」と話す伊藤さんは、結局、照り焼きや塩焼き用に、鰆を4匹購入した。

豊浜の鮮魚を扱う店の男性:
優しそうで、とっつきやすそうだけど、魚に関しては厳しいね。見る目も確かだし

「仕入れたばかりの鮮魚を分厚く刺身に」…やりとりを楽しむ昔ながらの対面販売

午前8時半。店に戻ると、まず刺し身の準備のため、ヒラメを手にした。

伊藤さん:
このサイズは願ってもない。身が厚い、ボリュームがあるし

客に喜んでもらいたいと、厚めの切り身にカット。いつも、ついサービスしてしまう。この日の刺身は、「かつおのたたき」(350円)に…。

「きはだまぐろ」(480円)、「天然活平目」(400円)や…。

「平貝」(450円)に、「白魚」(450円)が並ぶ。どれも伊藤さんが目利きした自慢の品だ。

午前10時に開店。早速客がやってきた。午前中は、切り身や半身を中心に販売。

男性客A:
いいものを大将が見せてくれるから、じゃあそれ買うわって

女性客A:
いつもいいもの置いているからね、少しずつだからいいんだよね

伊藤さん:
魚の食べ方にしても、自分たちの知っているものを教えられることはすごくうれしいこと

昔ながらの対面販売。多くの客が伊藤さんとのやりとりを楽しみながら、買い物をしていく。

息子はSNSで「おすすめ情報」を発信…遠方からも客が通うように

男性客B:
今日LINEを見ておいしそうだなと思って、いっぱいあると思って来ました

最近は店のSNSを見て、来店する客も増えた。息子の一平さんが、インスタグラムやLINEで発信した「おすすめ情報」を見て、遠くはあま市や津島市、大治町など愛知県内から通ってくれる。

一平さん:
親父の魚をSNSを通して広めていきたいなと思っています

客「匂いにつられてつい寄っちゃう」…妻が丁寧に焼く香ばしい「焼き魚」

午後1時過ぎ。魚晴のもう1つの看板商品である「焼き魚」が店頭に並ぶ。今朝、市場で仕入れた鰆を串に刺し、妻の晴子さんが、1本1本丁寧に焼いていく。

女性客B:
焼き魚がおいしい、だからつい匂いにつられて寄っちゃうんですよね

近隣の働いている主婦に、特に人気の焼き魚。この日は脂がのった「ぶりの照り焼き」(500円)に…。

「鰆の塩焼き」(750円)。

そして「えび塩焼き」(150円)など、どれもふっくりとした身が自慢の10種類が並ぶ。

中でもイチオシは、さばの照り焼きだ。肉厚な切り身に秘伝のタレを付けて焼いていく。見た目より意外にあっさりとしたこの評判のタレには、秘密があった。

苦しい時に鮮魚の名店から伝授された秘伝のタレ…30年続けてきた味を変える決断に

魚晴は昭和の終わり、30年以上前に名古屋市北区の水草団地商店街に開業。当初から刺し身と焼き魚を提供するスタイルで、団地の人はもとより近隣の人たちに支持されてきた。

しかし、数年前ぱったりと魚が売れない時期が…。その時、手を差し伸べてくれたのは同業者だった。

伊藤さん:
閉店された「魚梅」さんから直々に教わったタレです

当時、名古屋市中川区に、焼き魚やうなぎの蒲焼きで有名なお店「魚梅」があった。売上が落ちこんだ時、伊藤さんが魚の焼き方やタレについて教えを乞うと、快く伝授してくれた。

伊藤さん:
最初に食べた時に、自分の照り焼きのイメージとかなり離れていた。ある意味カルチャーショックみたいな

魚晴はそれまでうなぎのタレに近いものを、照り焼きに使っていた。しかし、魚梅から教わったさっぱりとした味に変えたところ客の反応も上々だったため、伊藤さんは30年近く続けてきた店の味を変える決断をした。

戸惑いはあったというが、教わったタレに変えると売上が上向いた。
人気の「さば照り焼き」(550円)は、伊藤さんが目利きした新鮮なさばを、名店から譲り受けた秘伝のタレで香ばしく焼いたものだ。

魚に情熱を傾けた、その道のプロ2人による極上の逸品だ。

コロナ禍でも魚求める人は後を絶たず…店主の魚へかける情熱が続く限り

午後3時過ぎ、近隣の主婦が、夕食を求めてやってくる。

女性客C:
家では匂いが付くから、焼かないですよね。だからつい買っちゃう

女性客D:
切り身すら高いので…。だったら、調理されたおいしいものを買った方がコストパフォーマンスはいい

男性客C:
コロナの影響で、外食がほとんどない状態ですから、仕事帰りの自分にとっての楽しみです

新型コロナの影響で客は減った。しかし、伊藤さんの魚を求める人は後を絶たない。

妻・晴子さん:
魚にはとても熱い。魚が1番、私は2番

息子・一平さん:
一番近くにいる親父から魚のさばき方を教えてくれたので、そこは大事に守っていきたい

「人に喜んでもらえる、役に立つような魚晴でありたい」。伊藤さんの魚へかける情熱は続く。

「魚晴」は、名古屋市北区の水草団地商店街。

(東海テレビ)

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