「リサイクル」にさらに価値を加える「アップサイクル」という言葉をご存じだろうか?
廃棄されるものに新しい命を吹き込む女性を取材した。

地球の未来を考えて「廃棄物」に命吹き込む

東広島市の工房で、洋服のお直しや小物を製作する吉田奈緒子さん。
代表作はビニール素材のバッグ。

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使うのはさまざまなタイプのビニール生地で、デザイン性の高い仕上がりが好評だ。

工房こどもノか 代表作はビニール素材のバッグ
工房こどもノか 代表作はビニール素材のバッグ

工房こどもノか・吉田奈緒子 代表:
軽くて丈夫で、はっ水効果があるので、雨が降った時に中の物を守ることができる。そういったものが魅力かなと思っています

仕入れから販売まで1人で行い、インターネットを中心に受注生産している。

結婚後、主婦となった吉田さん。2人の子を育てながらものづくりへの熱が高まる。
専門学校の夜間クラスで学び、1年半前に工房を立ち上げた。

主婦から専門学校、工房の立ち上げへ
主婦から専門学校、工房の立ち上げへ

吉田さんには、意識していることがある。

工房こどもノか・吉田奈緒子 代表:
できるだけごみを出したくないとか、そういう意識をもって製作に取り組んでいます。環境活動家の方のお話しを聞いたのが大きかった。何年後かには地球はどうなっているかという話を聞いたのが衝撃的で、もっと周りに伝えていって、1人ひとり意識して行動しないといけないのかなと

地球環境を思い…
地球環境を思い…

建築廃材を捨てずに“価値ある何か”へ

吉田さんは動き始める。

「廃棄されるものを再利用できないか」。相談したのは、家族が家を建てた地元ハウスメーカー。
建築で使うビニールシートの再利用を提案したのだ。

日興ホーム 広島・東広島市
日興ホーム 広島・東広島市

2016年の熊本地震で、大量のブルーシートを再利用していた取り組みからヒントを得た。

日興ホーム 注文住宅営業部 東広島営業所・羽原忠宏さん:
弊社もごみを処理するのにもたくさんのお金がかかっているので。そのごみを何か違う用途で使えないかなというのは、当初から話にはなっていたので

新築の家を雨や風から守るブルーシートは、家1棟ごとに新しいものを使用し、その都度、廃棄されてきた。

数にして、年間約170枚。縦・横10メートルと大きく、1枚でバッグ160個分になる。

大きなビニールシート!バッグ160個ができる
大きなビニールシート!バッグ160個ができる

工房こどもノか・吉田奈緒子 代表:
「アップサイクル」と言います。リサイクルというのは、いらなくなった洋服を誰かにまた使ってもらって、まわしていくというか。アップサイクルというのは、廃材を、使わない捨てるものを、また新たにバッグや他のものに変えて、価値を高めてあげるというものがアップサイクルになります

世界に1つ、汚れも「味」 アップサイクルバッグ

アップサイクルバッグの製作は、通常のバッグとは異なる。

工房こどもノか 広島・東広島市
工房こどもノか 広島・東広島市

ーー結構汚れているんですね?だいたいこんな感じですか?

工房こどもノか・吉田奈緒子 代表:
はい。こんな感じです。泥の足跡が付いていたりですとか。でもこれは泥だけなので、きれいな方かなと

毎回、丁寧に汚れを拭き、消毒する。

通常のバッグは1つ約15分でできるが、アップサイクルバッグはその10倍以上、3~4時間かかる。

こうして、建築廃材のアップサイクルバッグが誕生。
多少の傷は敢えて残し、味として生かした。

新たな命が吹き込まれたバッグは、1つ1つ同じものはない。

“カーテン”や“壁紙”の端切れを使った新たな展開も…

空の駅オーチャード 広島・三原市
空の駅オーチャード 広島・三原市

地元の店で委託販売もスタート。買い物客にアップサイクルを知ってもらい、環境を考えるきっかけにしてもらいたいと考えている。

ーーどんな方が買われる?

べじねす 森塚佳世子さん:
お若い方が多いですかね。本来なら捨てられてしまうものを、みんなが楽しく使うっていう、モノを大事にする気持ち、そこがとても共感できるところで、これからもずっとお願いしたいと思い私も大好きな商品です

本来なら捨てられてしまうもの…
本来なら捨てられてしまうもの…

一方、ハウスメーカーでも、これを機に新たな取り組みを始めた。

「ぜひ手にとってみてください」

契約者との打ち合わせの資料バッグとして、アップサイクルバッグを渡し始めたのだ。
これまでの袋とは違い、何度も使え、ごみの削減にもつながる。

「資料バッグ」としてお客さんに使ってもらう
「資料バッグ」としてお客さんに使ってもらう

客:
丈夫そうでいいですよね

客:
身近なことで、自分たちにできることを、こうやってつないでいただけたというのは、とっても素敵だなと思います

さらに、新たな展開も…

注文に応じ製作するカーテンや壁紙。その製作過程で出る端切れを利用し、キーケースなどのグッズ作りを検討することになった。

日興ホーム注文住宅営業部 東広島営業所・羽原忠宏さん:
(SDGs12番の)つくる責任、つかう責任。「家づくりを通して地域社会に貢献します」という目標、理念を掲げていますので、まさに家づくりを通して出てきたごみを再利用して、何かお客様に活用していただく。これからどんどん続けていきたい活動ですね

捨てられるものに新たな価値を加え命を吹き込む。1人の1歩が着実に、広がりを見せている。

工房こどもノか・吉田奈緒子 代表:
(捨てるものを)手に持って、一度考えてもらえたらなって。洋服だったら穴があいてたり、もうサイズが小さくて着れなかったりというのも、もしかしたら工夫すれば何かに変えられるというものもあるので。すぐには捨てずに、一度ちょっと考えてもらえたらと思います

(テレビ新広島)

テレビ新広島
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