3月24日からスウェーデン・ストックホルムで開催される世界フィギュアスケート選手権2021。

2020年の世界選手権は新型コロナウイルスの影響で中止となったが、今年は無観客にて行われる。

4年ぶりの“世界王座”奪還を狙う、羽生結弦選手。2019年の世界選手権では、ネイサン・チェン選手(アメリカ)との壮絶な4回転バトルの末、銀メダルとなった。

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今回の世界選手権へ向けて羽生選手は「自分がやるからには何か表現したいし、伝えたいメッセージとかいっぱいあると思うので、勝ちつつ、価値のあるものにしたい」と意気込んだ。

「ここで化石になっちゃダメだな」

2020年12月の全日本選手権には圧巻の演技で、5年ぶり5回目の日本一に輝いた。

「ここまで来れてよかったです。『やっと心から勝てた』と言える演技ができました」と試合後に羽生選手は語っていた。

「やっと心から勝てた」と思ったわけは、羽生選手にとって今シーズンは長く、暗いトンネルの中にいたからだ。

2019年12月の全日本選手権で、羽生選手は初めて宇野昌磨選手に敗北し、2位に。

それでも「何か試合で負けるたびに、『君はレジェンドだからもういいんだよ』と言われるんですけど、それを言われるのも悔しいんですよね。ここで化石になっちゃダメだなって思っているんで」と気を引き締め、前を向いた。

2ヵ月後の四大陸選手権で、羽生選手は平昌五輪を制した同じプログラム、ショート「バラード第1番」、フリー「SEIMEI」に変更するという決断を下し、優勝を果たす。

この時、ジュニア・シニアの主要な国際大会、オリンピック、世界選手権、四大陸選手権、GPファイナル、世界ジュニア選手権、ジュニアGPファイナルをすべて制する、スーパースラムを男子で初めて達成した。

「もうやめようと思った」

この勢いで世界一に挑むはずだったが、新型コロナウイルスの影響で2020年3月の世界選手権は中止になる。

その後、コーチにも会えない状況の中、練習もままならない日々を送り、羽生選手のモチベーションは低下していったという。

「自分がやっていることが無駄に思える時期がすごくあって。一人だけ、ただただ暗闇の底に落ちていくような感覚があった時期も。なんかもう一人、やだって思ったんですよ。一人でやるの、もうやだ、疲れたなって。もうやめようと思ったんですけど」

そんな時、練習でふと演じたのが、松任谷由実さん作曲のエキシビションナンバー「春よ、来い」だった。

「『やっぱ、スケート好きだな』って思ったんです。スケートじゃないと自分は感情を出せないなって。だったら、もうちょっと自分のためにわがままになって、みなさんのためじゃなくて、自分のためにも競技を続けてもいいのかなという気持ちになった時が、ちょっと前に踏み出せた時です」

こうして迎えた2020年12月の全日本選手権で、羽生選手は揺れる思いの中、出場を決断する。

「自分の演技を見て、別になんでもいいんですよ。なんでもいいから、誰かの心に何か感情が灯る、何かの気持ちが灯る、きっかけになればいいかなと思います」

全日本選手権のショートプログラムで首位に立った羽生選手は、フリーでは「SEIMEI」の流れを受け継ぐ和のプログラムを初披露した。

戦国武将・上杉謙信の戦いを描いた曲「天と地と」で、鬼気迫る演技を披露した羽生選手は、見事優勝を果たす。

2日後のメダリスト・オン・アイスで披露したのは、羽生選手を再び立ち上がらせた「春よ、来い」だった。

世界フィギュアスケート選手権に向けて「勝ちつつ、価値のあるものにしたい」と語る羽生選手。ネイサン・チェン選手から王座を奪還できるか、注目が集まる。