最大22m到達の津波予想…予め施設の高台移転や避難先決定「事前復興」と地域の理解「我々家畜じゃない」
わすれない 3.11

最大22m到達の津波予想…予め施設の高台移転や避難先決定「事前復興」と地域の理解「我々家畜じゃない」

東海テレビ
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最大で22mまで津波が到達予想…予め病院や高齢者施設などを高台に移設

東日本大震災では津波による大きな被害が出たが、南海トラフ巨大地震でも愛知や三重の沿岸部では深刻な被害が予想されている。

そこで、三重・南伊勢町では、被災する前に病院や防災施設、保育園など様々な施設を前もって高台へ移転させる「事前復興」という防災の取り組みを進めている。

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山間に建てられた真新しい建物は、三重・南伊勢町の町立南伊勢病院。2019年の秋に、海抜90メートルの高台に移転された。

南伊勢町では、この建物の他にも防災施設や高齢者施設、保育園など様々な施設の高台移転が進められている。

約245キロにわたってリアス式海岸が続いている三重県の南伊勢町。

内閣府の想定では南海トラフ巨大地震が発生すると最短8分で津波に襲われ、最大で22メートルまで到達するとされている。

ところが、町は65歳以上の高齢者が5割以上と過疎化が進んでおり、ほとんどの集落は海岸沿いに点在している。

南伊勢町の町民A:
(津波が)来てしまったら仕方ないけど。どの場所でどう来るかわからないじゃないですか

南伊勢町の町民B:
テレビ見て、ぞっとした。東北のあれ(東日本大震災)を見てぞっとしたし、また今度地震あったし

南伊勢町の町民C:
(大地震が)きたら津波がヤバいってことですよね

そこで、多くの人たちの命を守るために、町が今進めているのが「事前復興」だ。

災害の発生に備え、あらかじめ街づくりを計画する取り組みで、南伊勢町では約5年前から大津波からの避難が難しい子供達や、高齢者らの安全を確保するため、沿岸部にある施設の移転を相次いで進めてきた。

園児の保護者「ここだったら逃げなくていい」…内陸部への園移転に歓迎の声

その一つ、町立さくら保育園は、元々沿岸部にあった2つの保育園を少子化で統合する際に、約2キロほど離れた内陸部の中学校跡地に移転した。

新たに登園用のバス路線を増やすことで、保護者に負担がかからないように配慮している。

園児の保護者A:
災害が起きた時に、安全な方がいいので、よかったのかなと思っています

園児の保護者B:
ここだったら、逃げなくていいくらいなので、すごくいいことだと思う

さくら保育園の園長:
ここで(海抜が)23mありますから、何とか逃げれば生きのびれるのは第一。お母さんにとっても、みる(保育する)側にしても、一番安全で安心だと

被災してからでなく前もって…仮設住宅や復興住宅の建設場所を予め決めておく

ほとんどの集落が海沿いにある南伊勢町。巨大地震に襲われると、津波により住宅の大部分が浸水することが想定されている。そこで町長は…

南伊勢町の小山巧町長:
一人暮らしの高齢者も多くおられます。被災した時にどこに住むかを含めないと、町の将来の姿が描けなくなる

まず、被災した後に建設する仮設住宅や復興住宅について、事前に建設場所などを決めることを想定。浸水が予想される集落については、町内の別の集落や隣町などに建設することも予め決めておきたいとしている。

小山町長:
(集落が)壊滅した場合に、どういう風に次に自分たちが住むか、早くその地域に戻れるかを、前もって話し合っておこうと

「被災からいかに早く日常に戻るかが、集落の将来の存続を決める」と小山町長は指摘する。

「我々は“家畜動物”じゃない」…避難先を地区外に想定する町の姿勢に疑問感じる住民も

三重・志摩市との境に位置する、南伊勢町の神津佐(こんさ)地区。海や川の近くまで山が迫り、平野部が少ないのが特徴で、津波により住宅の多くは浸水するとみられている。

「事前復興」について、町は2019年に一度だけ説明会を開いたが、新型コロナウイルスの影響もあり中断。その後は開かれていない。

神津佐地区の取りまとめ役・区長を務める田畑紀實さんは、町が十分説明しないまま避難先を地区の外に置くことを検討するなど、町の姿勢に疑問を感じている。

神津佐地区長の田畑さん:
(避難先を)よその町へというのは合理的ですけれど、我々は“家畜動物”じゃないので、もっときめ細やかな配慮が必要かなと

田畑さんは、「せっかく避難ができても、避難所でストレスを抱えるとか、亡くなるとか…。過去の震災を教訓にするべき」と話す。
住民も…

神津佐地区の住民A:
離れたところで生活するのは抵抗感じますけど…

神津佐地区の住民B:
できたら地元に、地元の人数が集約できるような避難所があればありがたい。地元が心配だし、生まれ育ったところなので、やっぱり外といわれると…

そんな中、区長の田畑さんには独自のアイデアがあった。高台にある友人が所有する空き家の敷地を利用し、簡易宿泊所や共同炊事場、食料の備蓄場所として整備。被災した場合でも、命さえ助かれば…。地域で生き残れる方法を模索したいと考えている。

「災害後、傷ついた心を支えあうのは地域の温かさ、助け合い。行政は独りよがりといわれないよう、住民の声に耳を傾ける努力をしてほしい」と田畑さんは話す。

専門家「重要なのは住民がどうしたいのか」…災害前に予め行政と地域が議論することが大切

専門家も「事前復興」を成功させるには、地域の理解を十分得た上で、街の将来像を含めてじっくり考えていくことが欠かせないと指摘する。

京都大学防災研究所 牧紀男教授:
一番重要なのは住民がどうしたいのか。事前復興のいいところは、すぐに答えを出さなくてもいいんです。しっかりと行政と地域が議論しておくことが、復興を早く進める上で重要です

大津波による被害が避けられない地域で少しでも、早く立ち直るために…。「事前復興」の取り組みは今後広がるだろうか。

(東海テレビ)

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