津波で児童74人が犠牲に…校舎に残っていた“ボロボロになった校歌の額”を復元

10年前の東日本大震災の津波により、児童74人が犠牲となった宮城・石巻市の大川小学校の校舎には、ボロボロになった「校歌の額」が残っていた。

震災から5年後、被災地を支援していた名古屋の37歳の女性は、大川小学校の悲劇を次の世代に語り継ごうと決意。この額を復元させるプロジェクトを2020年9月に立ち上げた。

子供たちが1枚ずつ板に文字を彫り、復元された「校歌の額」は、震災から10年を迎える2021年3月に、大川小学校の犠牲者の遺族に贈られる。

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この日、愛知・田原市の伊良湖岬小学校では、防災について考える授業が行われていた。

子供たちは、それぞれの木の板に文字を彫り、ある小学校の校歌が書かれた額を作っていた。

その小学校は、宮城・石巻市の大川小学校。2011年の東日本大震災の巨大津波により、全校児童の7割にあたる児童74人が犠牲に。

津波に押し流された校舎の中で、残っていたのはボロボロになった校歌の額。多くの文字が流され、読み取れない。

これを、伊良湖岬小学校を含む全国8つの小中学校の子供たちで、1枚ずつ板に文字を彫って復元しようとしている。

伊良湖岬小学校の6年生A:
目の前でみんなが死んだりしたら、きっと悲しむから。大川小学校の子たちもそうだったんだろうなと思いながら

伊良湖岬小学校の6年生B:
今後かけがえのない命がなくならないように、どう津波と地震と向き合っていくのかを考えて彫っています

手付かずで残された「校歌の額」…被災地支援する女性が震災から5年後に目にした光景

このプロジェクトを立ち上げたのは、石原杏莉さん(37)。

震災の直後、名古屋で一般社団法人「aichikara」を創設し、普段は大学の職員をしながら、被災地支援に取り組んでいる。このプロジェクトを始めたきっかけは、震災から5年後、支援のため訪れた大川小学校で目にした光景だった。

石原さん:
校舎の中を案内いただいて、校歌の額だけは手付かずになっているというお話があって…。何かお手伝いできないかなって

この時、石原さんに芽生えた思い。「大川小学校のことを多くの次の世代に知ってもらいたい」。

児童「大川小の子たちの分も頑張って生きる」…東日本大震災を知らない子供たちが参加

プロジェクトに参加した愛知・半田市の乙川小学校。小学5年生の児童は10歳から11歳、震災の記憶はない。

乙川小学校の5年生A:
(東日本大震災のことは)覚えていません

乙川小学校の5年生B:
まだ1歳くらいだった。大川小学校の子たちの分も、頑張って生きようと思いました

集まった31枚の文字の板。

石原さん:
児童の皆さんが、気持ちを込めて彫ってくれたものですので、1つの額に収まった時は何倍にも気持ちが膨れ上がって、温かいものになるんじゃないかな

石原さんの強い思いから、2020年9月に始まったこのプロジェクト。しかし石原さんには葛藤もあった。

石原さん:
(当時を思い出すものを)残さないでほしいという意見が、一方あった。これを続けていくことが、望ましいのかどうかっていう…

全国の子供達から集まった442枚の文字の板…裏側に刻まれたのはそれぞれの夢

プロジェクトには子供たち以外にも様々な人達が…。aichikaraのメンバーは、仕事の合間を縫って、ボランティアで作業に参加。

さらに、長野県の工芸店が「さくら咲く」という校歌の歌詞にちなんで、桜の飾りを寄付してくれたり、岐阜・中津川市の工務店が仕上げの作業をしてくれたりと、石原さんに共鳴した多くの人たちからの協力で少しずつ形になった。

石原さん:
ご遺族の方々に、お届けできればいいなっていう思いでしかなかったので…。こんな大きなプロジェクトになるとは想像もしていなかった

そして、全国の子供たちから442枚の文字の板が集まった。裏側には、子供たちの夢が刻まれている。

乙川小学校の5年生C:
優しいお母さんになりたい。ウェディングプランナーになりたい

伊良湖岬小学校の6年生C:
未来の日本のためになるような仕事がしたい

石原さんが書いたのは、「大川小学校のような悲劇が二度と起きないように、社会に尽くす」。

大川小のような悲劇を繰り返さない…復元された「校歌の額」で次の世代に語り継ぐ

2021年3月5日、ついに校歌の額が完成。お披露目には、文字の板を彫ってくれた岐阜・中津川市の加子母小学校の子供たちが参加した。

石原さん:
きっと皆さんが(裏に)書かれた夢の中にも、大川小で命を失った多くの方々が叶えたかっただろう夢があると思う。皆さんには、これからも一生懸命勉強して、夢を叶えてもらいたいと思います

たくさんの人の夢や思いが詰まった額。完成した額は3月28日に大川小学校の犠牲者遺族の会に送られる。

遺族の男性:
嬉しいというか、感動というか。いつか経験した人たちはいなくなります。今の若い子たちが、次の世代に語り継いで、継承していただけるように望んでいます

「大川小のような悲劇を繰り返さない」…。
石原さんは、「この額1枚1枚を彫る事に携わってもらうことが、後世に伝えていくこと。今回のプロジェクトの意味は大きかった」と話す。

(東海テレビ)