オホーツクの北海道・北見市常呂町。この町を、漁業で盛り上げたいと奮闘する若者たちがいる。
その若者たちの心の支えとなり、漁業に命を燃やした1人の漁師。その生き様に迫った。

鮮魚店に“生産者の顔が見える”売り場

大丸札幌店にある鮮魚店。
現在、この店の一角に、あるコーナーが設けられている。

北海道・大丸札幌店の一角に…
北海道・大丸札幌店の一角に…
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漁師・マスコスモ代表 柏谷晃一さん:
「ところどんぶり」と「常呂にぎり」。全て常呂町で取れているもの

販売しているのは、名産のホタテやカキを使った握り寿司。

北見市常呂町産の水産物が並ぶ
北見市常呂町産の水産物が並ぶ

自宅で簡単に調理できるアヒージョのセットなど、北見市常呂町産の水産物を加工した商品だ。

商品を卸したのは、常呂町の漁師・柏谷晃一さん。
漁師仲間たちで立ち上げた水産加工会社「マスコスモ」の代表。

漁師・マスコスモ代表 柏谷晃一さん:
普通だと、誰がどこで獲ったのかわかりにくいと思うが、「マスコスモが獲ったものならおいしい」と思ってもらえたらいいなと

産地だけではなく、“生産者の顔が見える売り場に”と、コーナーには1人の漁師のポスターが貼られていた。

“生産者の顔が見える売り場”に1人の漁師のポスター
“生産者の顔が見える売り場”に1人の漁師のポスター

漁師・マスコスモ代表 柏谷晃一さん:
家に持ち帰って、ゆっくり食べてもらえたら、“川口”を感じてもらえるのかな

「漁業の力で地元を変えたい」異色の“DJ漁師”

魚を片手に、まぶしい笑顔の漁師、川口洋史さん。

漁師・マスコスモ 川口 洋史さん(当時35):
中学校卒業するくらいから、鮮魚のブランディングをしたいと思っていて。そのために大学に進学したり、広告会社に勤めたりした

取材クルーが川口さんに会ったのは2019年の10月。
大学卒業後、東京の広告会社を経て、地元常呂町で漁師になった。

漁師・マスコスモ 川口洋史さん(当時35):
しっかりと利益を追求して、その利益をしっかり地域に還元していく。街にコミュニティースペースが必要であれば、そこにお金を使っていく

川口さんはイベントなどを通し、常呂町の水産物のおいしさを発信してきた。

「漁業で街を変える」
「漁業で街を変える」

時には自ら寿司を握り、DJで会場を盛り上げ…
「漁業の力で人同士をつなげ、地元を変えたい」とポジティブに活動する異色の漁師。

ときにはDJも務める
ときにはDJも務める

より新鮮な水産物を消費者に届けるため、市場を通さず、小売店や飲食店と直接売買できるように札幌などで営業をしてきた。

今回の出店も、川口さんの営業努力が実を結んだもの。

魚の北辰 札幌大丸店・新沼豊盛店長:
ただ仲卸から買って売るのと、生産者を知ったうえで売るのは、売る側としての思いも違う

この日、あいさつのため札幌に来た柏谷さんたち。
しかし、そこに川口さんの姿はなかった。

そのわけは…

漁業に命を燃やした漁師…遺志は仲間たちが

実は川口さん、2020年12月に白血病で帰らぬ人となっていた。

仏壇に手を合わせるのは、弟の悟史さん。
兄と同じく、漁師で水産加工会社のメンバー。

川口洋史さんの弟・悟史さん:
兄が残してきたものに、僕らがどれだけプラスの価値をつけて発信できるか。そこを考えて会社を新しい体制で再出発していきたい

亡き川口さんの努力もあり、現在取り引きをしている店舗は全国で20店ほど。
柏谷さんは川口さんの跡を継いで、代表になった。

漁師・マスコスモ代表 柏谷晃一さん:
今回つなげてもらったのは川口のおかげですし、今後はさらに良いものを作りたい

仲間が故人の遺志を受け継ぐ
仲間が故人の遺志を受け継ぐ

漁業に命を燃やした漁師の川口洋史さん。
その遺志は、仲間たちが受け継いでいく…

(北海道文化放送)

北海道文化放送
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