福岡・太宰府市で起きた主婦暴行死事件の裁判員裁判。
傷害致死や死体遺棄などの罪に問われている山本美幸被告(42)と岸颯被告(25)の被告人質問が行われ、互いに罪をなすりつける主張をした。
岸被告「山本被告に逆らえなかった」
2月9日、証言台に立ったのは岸被告。
証言台の後ろには、両被告の希望でパーテーションが立てられた。
岸颯被告の弁護人:
高畑瑠美さん(当時36)の遺体を運ぶ車中での録音について、あなたは笑っているような雰囲気がある。どうして?
岸颯被告:
山本さんの今後を想像したら、面白くて笑ってる。罪が明らかになって、世間やマスコミからたたかれる姿を想像したら、ざまあみろと思ってうれしかった
弁護士からの質問にこのように答えた岸被告。
気持ちが高ぶったのか、早口で当時の状況を振り返った。
岸颯被告:
瑠美さんを救えるなら救いたかったですね。山本さんが暴力団とつながりがあると信じていたので、報復が怖かった
山本被告との間には上下関係があり、逆らえなかったと主張した。
‟暴行の実況”は「警察に通報してもらうため」
一方、検察側は、岸被告が暴行した証拠として、その様子を山本被告の息子などに通信アプリで知らせていたことを挙げていた。
岸颯被告の弁護人:
瑠美さんの「左膝の皿を砕いた」とか「ゼリー状になった」とか、知人にLINEで暴行の状況を実況しているようだが、あなたが暴行をした?
岸颯被告:
してないですね
岸颯被告の弁護人:
では、暴行したのは?
岸颯被告:
当然、山本さんです
岸颯被告の弁護人:
どうしてこんなLINEを?
岸颯被告:
報復が怖くて自分は通報できないので。(知人に)警察に通報してもらおうと送りました
岸被告は、「暴行は全て山本被告が行った。暴力団とのつながりがあり、暴行を止められなかった」と主張した。
「何度も止めた」山本被告は正反対の主張
それに対し、山本被告は2月12日の法廷で―
山本美幸被告の弁護人:
岸さんが暴行している時、あなたは止めなかったんですか?
山本美幸被告:
止めてます! 「そういうことやめり」って何度も言ってます
山本美幸被告の弁護人:
体を張ってでも止めなかった理由は?
山本美幸被告:
岸さんが怖かったからです
時折、語気を強め、自らの関与を否定する山本被告。
これを聞いていた岸被告は、持っていたペンで頭をかき、苦笑いを浮かべた。
山本美幸被告の弁護人:
あなたは木刀で殴ってない?
山本美幸被告:
してないです。岸被告に木刀で突かれたので「ヤバいな」と思って、それからは止められなかった
死につながる暴行をしたのは岸被告で、自身は瑠美さんの傷の手当てをしていたなどと釈明した山本被告。
自分が主犯かは「そこまで考えていない」
一方で、瑠美さんの遺体を車で運んだとされる死体遺棄の罪については、やや主張を変えた。
当初は、「亡くなったとは思っていなかったので、罪にあたらない」としていたが、この日は、「生きているかどうか半々だと思った」と述べた。
検察官:
車内の録音音声で、あなたは「まだ死んだことに気付いていないふりをしよう」と言っていますよね?
山本美幸被告:
くわしくは覚えていないんですが…
検察官:
埋めるかどうかの話もしている。生きているかもしれない人を埋めるという話をしているんですか?
山本美幸被告:
いや、あの、だから、なんですかね…、(亡くなっているか)半信半疑でテンパった状態で…
また、「自分が主犯と思うか」と問われると、「どれに対してですか? そこまでは考えていないです」と答えを濁した。
裁判は今後も続き、判決は3月2日に言い渡される。
(テレビ西日本)
【関連記事】
太宰府市主婦暴行死事件(1) 被告に取り込まれ…一家をのみ込んだ脅迫・洗脳 警察も予想外の対応