現在シーズンを迎えている有明海の冷凍網ノリ。
近年、一部の地域でノリがカモに食べられる被害が深刻化している。
漁業者が「死活問題」と嘆く、その実態とは…

「憎い…」有明海で冷凍網ノリのカモの食害が深刻

2020年に撮影されたこの写真。

ノリの網にたくさんのカモが…提供:鹿島市
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有明海に張られたノリの網に、多くの鳥が群がっている。
ノリを食べるカモの様子だ。

ノリ漁師 野田勝さん(53):
憎くてたまらんでしょう。見たら殺したくなるぐらいだと思いますよ。この1年そのために…このノリを摘んで、生業として生活している以上は、それをカモにやられるなんて…

「憎くて…」ノリ漁師の思い

被害が特に大きいという佐賀・鹿島市。
実際に、ノリの養殖場に行ってみると…

川野優也記者:
このあたりにノリ網がたくさん張られているのですが、一番手前の網を見てみると、ほとんどノリが付いていないですね。これがカモの被害。一列隣と比べると、違いがよく分かります

隣の網と比較すると…

摘み取りを目前に控えていた冷凍網ノリ。カモの食害が深刻化していた。

カモ対策の決め手なく…被害額数百万円にも

ノリを食べるカモは「ヒドリガモ」という種類で、鹿島市には200羽ほど飛来しているという。

ノリ漁師 野田勝さん(53):
1つの群れを追い払っても、次の群れが来る。いたちごっこ

この漁業者は、酷いときで張り込んだノリの約8割がカモに食べられ、被害額は数百万円にのぼった。

ノリ漁師歴38年の男性:
死活問題。1回食べられたら二度と収穫できない状態になるから。1回食べられた時点で漁期終了、そこの網は。自分の収入が、下手したら2~3割減ってしまうから…

ヒドリガモはいつやってきて、どの時間に多くノリを食べるのか?
正確なことは分かっていない。そのため、対策もなかなかうまくいかない。

ヒドリガモ 提供:鹿島市

ノリ漁師歴38年の男性:
だいぶ考えて(対策を)やってみますけれど、なかなかコレという決め手がなくて…。100%の策はまだ全然見つかっていない

現在この養殖場では、カモ対策で大量の白いビニールをぶら下げたり、大きな音が鳴る爆音機を設置したりしている。

しかし、どれも今一つ。有効な対策は見つかっていない。

環境と産業の調和は…

漁業者にとっては、いっそのことカモを駆除したい思いもある。
しかし、野鳥との共存共栄を目指す鹿島市のラムサール条約推進室は、駆除以外の方法がないか、環境と産業の調和に頭を悩ませている。

鹿島市 ラムサール条約推進室・江島美央主査:
水鳥を駆除してというのはあり得ないですね。水鳥を駆除せずに、なるべく人間の生業を傷つけずに頑張っていきたい

肥前鹿島干潟は、水鳥の重要な生息地としてラムサール条約に登録されている。
地元の産業であるノリ養殖を守りつつ、水鳥であるカモも守る方策はあるのか…

漁業者の生業と水鳥の生息地を守るためには…

そんな状況で始めたのが、LEDライトを使ってカモを移動させる実験。

LEDライトでカモを移動させる実験
カモが一斉に…

肉眼ではライトの光は見づらいものの、カモが一斉に逃げていった。
ノリの食害を減らす、有効な対策になるのか?

NPO法人バードリサーチ・神山和夫さん:
LEDライトに限らず、おそらく強い光が当たれば「普段と違うな」ということで逃げるんだと思います。どういう風な(光の)当て方をするといいのかとか、例えばずっと明るくすればすぐに(カモが)慣れてしまうので、「どういうタイミングで当てるか」などの工夫がこれから研究する面

漁業者にとっては、ノリを食べるカモは憎い存在。
しかし、鹿島市ラムサール条約推進室にとっては、カモを守りながら打開策を見つけたい。

この問題を解決するのは簡単ではない。

鹿島市 ラムサール条約推進室・江島美央主査:
「カモが食べるから、ノリが食べられるのを我慢してください」とか、「ノリが食べられるからカモを駆除してください」とか、そういう両極端ではなく、その折衷案がすごく難しい。どちらの立場にも立たなくてはいけないと思って事業をしています

ノリ漁師 野田勝さん(53):
「共存共栄」、きれいに言ったらそうかもしれないですけど、我々からすれば自分たちの生活が脅かされている。自分たちの生活と鳥の生活どっちをとるか?やっぱり自分たちの生活をとるのが、みんなそうでしょうし…

カモの食害は、鹿島市など一部の地域で局所的に確認されているが、被害の全容はまだ分かっていないという。

鹿島市ラムサール条約推進室は、現在漁業関係者と食害被害対策について話し合いをしていて、
今後、専門家を交えて、研究していく予定だ。

(サガテレビ)

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