生まれたばかりのイヌやネコを預かって育てる、ミルクボランティアと呼ばれる活動を知っているだろうか。
殺処分数が全国ワーストの香川県で、命をつなぐ取り組みが進んでいる。

ミルクを飲む姿が愛らしい子犬。生まれてから1週間もたたない小さな命。
世話をしているのは、坂出市に住む吉田文香さん。
吉田さんは、保健所に収容された離乳前のイヌやネコを2カ月間、預かって育てるミルクボランティアという活動をしている。現在は6匹の子犬を飼育中。

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ミルクボランティア・吉田文香さん:
そりゃ可愛いですよ。可愛くないと育てられない。みんな可愛い

ミルクボランティアが育てたイヌやネコは、動物愛護センターや譲渡を行うボランティアを通して、新たな里親の元へ行く。

このミルクボランティアの制度は、県が3年前から始めたもので、背景にあるのが深刻な殺処分の状況。
香川県では2019年度、2,219匹のイヌが保護され、そのうち約4割に当たる920匹が殺処分された。
イヌの殺処分数は、7年連続で全国最悪となっている。

特に離乳前のイヌやネコは、数時間おきに授乳する必要があるため、保健所の負担が大きく、これまで、ほとんどが殺処分されていた。

中讃保健福祉事務所・中村宗主任:
(ミルクボランティアに)夜間・休日含め、きめ細やかなケアをしてもらうようになったことで、譲渡できるようになるまで(約2カ月)元気に育ち、殺処分せず新しい飼い主に譲渡できるようになった

小さな命をつなぐこと。それがミルクボランティアの役割の1つだが、決して簡単なことではない。

自分の時間を削って育てる

ミルクボランティア・吉田文香さん:
普通なら、生後2カ月までは母犬が育てる時期。それを人の手で育てようと思うと、それは大変。睡眠時間削って、1日中ミルクやらないといけない

吉田さんの手帳。昼夜を問わず3時間置きにミルクを与え、飲んだミルクの量や体重に大きな変化がないか記録している。

ミルクボランティア・吉田文香さん:
命と直結している大事な時期なので、すごく気にしている

吉田さんは、譲渡ボランティアの代表も務めていて、日中はボランティアが管理するシェルターでイヌやネコの世話をしているが、片時も子犬たちから離れることはない。

ミルクボランティア・吉田文香さん:
1日中、24時間離れることはない。私が移動する先にこの子たちを連れて行く。自分の時間は無い

ミルクボランティアには、もう1つ、イヌやネコを人に慣れさせるという大きな役割がある。

小野修司記者:
こちらの2匹のイヌは、生後3カ月ほどのときに野犬だったところを保健所に収容された。近づこうとすると警戒しながら距離をとる。一方、ミルクボランティアが育てたイヌは近づいても全く離れようとはしない

動物には、様々な環境に適応する「社会期」という期間がある。
イヌやネコの場合、生まれてから約3カ月間が社会期にあたり、この期間を過ぎると、人になれさせるのは急激に難しくなり、せっかく保護しても譲渡することができず、多くは殺処分されてしまう。

ミルクボランティア・吉田文香さん:
逃げ回る(人なれしていない)と里親は見つかりにくい。しっかり愛情を注いで可愛がって、この子たちが人間と暮らしていくうえで、人慣れさせるのが、ミルクボランティアの役割だと思っている

こうした努力もあり、2019年度の県内の譲渡数は、イヌ1,189匹、ネコ512匹と前の年度に比べて約4割増えた。
しかし、保健所に収容される半数以上は離乳していて、社会期を超えているケースも少なくない。
そうした野良犬や野良猫を減らさなければ、殺処分をゼロにすることはできない。

中讃保健福祉事務所・中村宗主任:
無責任なエサやりは、飼い主のいないイヌやネコを維持してしまう。そういう動物を減らすためにも、無責任なエサやりをやめてほしい

ミルクボランティアのやりがい

吉田さんは、この日 自分が育てたイヌを譲渡するため、新しい里親のもとに向かった。
3年前からミルクボランティアを始め、これまでに引き取ったイヌとネコは約400匹。
私生活を犠牲にしてまで続ける理由が、この瞬間にあるという。

ミルクボランティア・吉田文香さん:
全総力を注いで、2カ月間、この日のために育ててきたので、1番うれしい瞬間。小さな命に明るい未来が待っていることが分かるから、すごいやりがいがあって、楽しいこと。救える命を一つでも多く救っていくことで、殺処分を減らしていきたい

殺処分ゼロを目指して。ミルクボランティアの活動が、小さな命をつないでいる。

(岡山放送)