特集は「再出発の冬」です。昨シーズンで営業を終えた長野市の飯綱高原スキー場。そこで長年、活動してきたスキースクールの校長は、一時は引退も考えましたが、周囲の励ましもありゲレンデを変え、再びスキーを教えています。

飯縄山の麓にある「いいづなリゾートスキー場」。雪に恵まれ、昨シーズンより一週間も早く営業を始めました。

長野市から:

「気持ちいい、シーズン最初の雪でさらさらしている」

オープンを特別な思いで迎えた人たちがいます。子どもたちにスキーを教えるのは43年の歴史を持つ「サクラメント・プロスキースクール(飯綱校)」のインストラクターたちです。校長は、スキー歴60年以上の島田久さん(68)です。

サクラメント・プロスキースクール(飯綱校)島田久校長:

「やってよかった、お客さんも来てくれるし、最高にうれしい」

島田さんたちがここでスキーを教えるのはこの日が初めて。昨シーズン、長年、活動してきた「ホームゲレンデ」を失ったのです。

そこは「いいづなリゾート」と同じ、飯縄山の麓にあった飯綱高原スキー場。2020年2月、惜しまれつつ55年の歴史に幕を下ろしました。今はひっそりと雪に埋もれています。

飯綱高原スキー場は1965年のオープン。

市街地から近く、多くの市民に親しまれてきました。

20代半ばだった島田さんがスクールを開設したのは1977年。その後、スキー熱が高まり毎年、600人以上の子どもたちを迎え入れてきました。

長野五輪の会場にも...。

フリースタイル・モーグルでは、里谷多英選手が金メダル!

サクラメント・プロスキースクール(飯綱校)島田久校長:

「志賀高原の方でスキー講師をやっていたので、来た時に都落ちしたみたいな感じで、田舎のスキー場に来た感じで寂しかった。でも住めば都で、とっても好きなスキー場になった。とにかく自然をうまく生かしたスキー場だった気がする」

市民に愛されてきたスキー場でしたがオリンピック後、スキー離れに拍車がかかり、雪不足による営業期間の短縮もあって来場者が減少。経営が悪化し、設置者の市は昨シーズン限りでの閉鎖を決めました。

営業最終日。

スクールOB:

「島田校長、ふみ子先生、42年間お疲れさまでした」

スキー場と共に歩んできた島田さん。自身の年齢も考え、「閉鎖」に合わせ一線を退き、スクールも閉じることを決めました。

サクラメント・プロスキースクール(飯綱校)島田久校長:

「あの時にはみんなにお祝いしてもらって、じゃあやめましょう、引退という感じでやめた。女房と二人で『終わったね』という話をしていた。寂しかったですよ」

しかし、再びスキーシーズンが近づくと…。

サクラメント・プロスキースクール(飯綱校)島田久校長:

「一番初めはお客さんから『もう一度やらないんですか』と電話などもらって、スタッフと話をして『もういいんじゃない』と言うんですけど。口では言ってるが目が『まだこれからやるんでしょ』という目で見る。それが痛いほどわかる」

毎年、スキー教室を依頼してきた幼稚園や小学校、そして、スタッフから再開を望む声が届きました。

それならばと「世話になった飯綱でもう一度、スキーを盛り上げたい」と、「飯綱高原」とはライバル関係にあった「いいづなリゾート」にスクールの開校をお願いしました。

「いいづなリゾート」にも既にスキー教室がありましたが…。

飯綱東高原観光開発ゲレンデ安全管理・服田昭男 統括責任者:

「お客さま来てのスキー場なので歓迎している。われわれの方も快く受け入れることができて、今後も長いお付き合いになるかなと」

サクラメント・プロスキースクール(飯綱校)島田久校長:

「非常に感謝。ずっとここ(飯縄山麓)でやらしていただいたものですから、最後はまた盛り上げて、恩返しではないがやっていきたい」

サクラメント・プロスキースクール(飯綱校)島田久校長:

「新しいブーツだから入らない…。(スキー用品は)ほとんど変えている。変わらないのは中身だけ、中身は変えようがない。経年劣化もいいところ」

スクールを作って44年目のシーズンが始まりました。この日、島田校長が教えたのは、4歳から小学校低学年の子どもたちです。

サクラメント・プロスキースクール(飯綱校)島田久校長:

「顔を上げた方がもっといい。良い顔してる、良い男!」

最後は少し滑れるように…。

サクラメント・プロスキースクール(飯綱校)島田久校長:

「できないものができる。それを目の当たりにしているというのがうれしい。そこが醍醐味」

子ども:

「楽しい」

保護者:

「幼稚園でお世話になっているスキースクールなので、とても信頼している校長先生がやっている。すごくうれしいです、続けてやってもらえるので」

かつて教え子だったインストラクターも…。

小1からスクール通うインストラクター:

「本当にうれしい。慣れない部分もあるので戸惑いもありつつ、新しいところで心機一転」

スキーを楽しむ子どもたち。熱心に教えるスタッフ。これまでと変わらない光景に島田校長は…。

サクラメント・プロスキースクール(飯綱校)島田久校長:

「できるならやっていこうじゃないかと、私たちの体が動く限りはと。(飯綱高原スキー場への)思いはあるけど、この地で生きていく、この地でやっていくという気持ちの方が強い」

再出発を果たしたスキースクール。

島田校長の子どもたちと向き合う日々は、これからも続きます。

(画像:サクラメント・プロスキースクール(飯綱校) 右・ 島田久校長)

長野放送
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