新型コロナウイルスの感染拡大はいまだに終息の兆しが見えない。
シリーズで連載する「名医のいる相談室」では、各分野の専門医に病気の予防法や対処法をわかりやすく解説してもらう。
今回は、「冬にできやすい口内炎」について、口腔外科の名医、東京歯科大学の柴原孝彦先生に話を聞いた。

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マスクで口の中は余計に乾燥

柴原孝彦先生:
冬における口の状態は、特にコロナ禍も加わって、大変な状態になっていますので、そのことについてお話しします。

冬になるとやはり乾燥します。
皮膚はゴワゴワして、目も乾燥したり、口の中も同じなんです。

口の中も乾燥してきて、さらに今コロナで皆さんマスクをしています。そうすると余計に口の乾燥が出てきます。

マスクをすれば遮断されて乾燥しないと思うかもしれませんが、逆です。
ずーっとマスクをしていると苦しいので口が開きます。そうすると余計に今までよりも乾燥が強くなって口内炎を訴えて来る方が多いです。

痛い口内炎は怖くない。痛くない口内炎は怖い。

柴原孝彦先生:
どういう口内炎だったら安心かというと、暴飲暴食した後、翌日になったら急に口の中に赤くただれたものが出来た。その「食べた」という動機付け、原因があります。
そして、翌日か2日後といった短期間のうちに出てきて、痛くて仕方ないですよね。

この突然出てきて痛みのある口内炎は怖くない
そのときは辛いですけど、だいたい1週間で治ります。

一方、痛くない口内炎、でも口の中を見たら、赤っぽい、白っぽい、色が付いている。これは怖い場合があります。

痛くない口内炎は怖い。
痛い口内炎は怖くない。

これを覚えておいてください。

口内炎の原因

柴原孝彦先生:
皮膚と粘膜は同じような構造をしています。
上皮」という皮のようなもので守られています。

粘膜の場合は、200~300ミクロン、0.2~0.3ミリという薄い膜で、それが粘膜の下の「結合織」という、血管や神経、血が出るようなところを守っています。

紙のようなものが下のぐちゃぐちゃしたものを守っている感じ。これが上皮です。
口内炎は上皮から出てくる病気です。

場合によっては、上皮が剥がれたりすると、中の結合織が見えて赤くなったり、痛かったりしてくる状態です。

粘膜は口の中にたくさんあるけど、なぜ、そこだけピンポイントになるのかというと、その場所が弱いところなんでしょうね。

例えば、歯並びがそこだけ粘膜に当たっているとか、歯磨きするときにそこをいつもゴシゴシやっているとか、何かのきっかけがあった時に、スイッチが入って傷を作ることがあります。

0.2~0.3ミリの上皮の中には、神経細胞はありません。そこだけに限られた傷というのは、痛くもかゆくもない。

しかし、傷が付いて中から出てきた場合は上皮が剥がれます。
中の結合織には神経や血管があるので、出血したり、痛かったり、大変な思いをするんです


そういう患者さんが来た場合は、上皮に代わる軟膏を塗ったり保護して、再生を待ちます。
だいたい2週間で治ります。

唾液の中には菌がいっぱい

柴原孝彦先生:
さらに、膿が出ることもあります。黄色っぽい色です。
口の中の菌がそこに繁殖すると感染を起こします。

膿がどこから出てくるかというと、膿を起こす菌は、歯と歯茎の間の隙間にいっぱい繁殖しています。それが悪さをします。

お口の中を綺麗にしておかないと、それが唾液中にも入り、浮遊します。

その状態でキスしたことを想像してみてください。嫌でしょ。
キスしたい場合は、ラップを敷いてキスした方がいいですね。

それくらい、唾液の中には菌がいっぱいいますので、よっぽど安全だという確認がないと、簡単にキスはしない方がいいと思います。

名医のいる相談室
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