廃棄のピンチ…みかんジュースを「猫」が救う

新型コロナの影響で消費が落ち込み、廃棄のピンチにさらされてしまったご当地グルメ…そんな危機的状況を「猫」とのコラボで救おうという、かわいくも画期的な企画が登場した。

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それが、和歌山グルメのネットショップ「チキンナカタ」を運営する有限会社中田鶏肉店から販売される、その名も「ニャンジュース」

和歌山みかんの果汁100%使用しているというジュースの瓶には黒猫の顔と肉球がプリントされ、猫好きなら思わず手を伸ばしてしまいそうなデザインになっている。

「ニャンジュース」は猫用の飲料ではないが、箱の中には段ボール製の「猫専用こたつ」も同封。天板もついていて、家にある布をこたつぶとんのように天板との間にはさむだけで、こたつができあがるという。

人間は本物のこたつで温まりつつみかんジュースを楽しみ、ペットの猫ちゃんも専用こたつでくつろげる…という、猫を飼っている人には嬉しいセットとなっているのだ。

実はこの「ニャンジュース」、とあるホテルの朝食で提供される予定だったもの。

コロナ禍で宿泊客が減ったことで、7200リットルものジュースが廃棄されてしまう可能性が出てきたことから、これらのジュースを“再利用”するため、このような企画を立ち上げたのだという。

SNSでは「デザインがかわいい!欲しい!」「猫飼っていなくても欲しくなっちゃう」と話題になっているが……中田鶏肉店の公式サイトを見てみると「新鮮な鶏肉と、美味しいお惣菜のお店」との案内がある。

一体どうして、「猫×みかん」のコラボ商品の販売に踏み切ったのだろうか? 担当者に詳しくお話を伺った。

鶏肉店がみかん販売の背景に「地元愛」

――「ニャンジュース」発売の経緯を教えて

取引先であるホテルの部長さんから、退職のご挨拶がありました。コロナの影響で、と…。ホテルの朝食で提供するために自分が買い付けた和歌山みかんジュースが、コロナによる来客数の激減で大量に余っているので、引き取り先を探していると…。

電話口で部下の方々に迷惑をかけたくないという気持ちが伝わってきました。その部長さんには、私も非常にお世話になったのもあり、なんとか力になってあげたいと思いました。


――「猫×みかん」という異色の商品を扱うきっかけは?

「猫と、こたつと、思い出みかん。」という猫専用こたつ付きみかんを発売したのがきっかけです。

少し遡りますが、2018年に関西空港の橋が損傷するほどの大型台風がありました。その時に仕入れ元の養鶏組合の鶏舎も大きな損害を受け、鶏肉の仕入れがストップしました。鶏肉店として売るものがなくなり、路頭に迷っていた時、地元の方々に助けられました。

そのときの繋がりやご縁で、あるみかん農家さんから、中田さんのネットショップで、うちのみかんを売ってくれないか?という相談がありました。

私の地元、和歌山は有田みかんが有名です。ただ、私の住む街は有田地方の隣の地域のため、有田みかんという名前を謳えません。品種も同じ、味も遜色ないほど美味しいのに、ブランドの認知度が低いために、農家さんが希望する価格で買い取ってもらえなかったり、市場に流通しにくいのです。

このみかんの美味しさをどうやったら知ってもらえるか?ということを考え、企画の仕事をしている友人と、おまけを作ってもらおうと考えていた段ボール屋さんとで一緒に考えました。

私自身猫好きで、保護猫カフェ(ネコリパブリック)の運営をしている別の友人の支援になればという想いもあり、人だけでなく、猫も喜ぶ商品を作ろうと考えました。2018年の11月半ばから、1カ月足らずで商品化しました。それが、2018年末に発売された「猫と、こたつと、思い出みかん。」です。

ニャンジュースは、「猫と、こたつと、思い出みかん。」が私たちのお店のひとつの看板商品となったので、今回もそのシリ―ズ商品として販売することを決め、このような商品が生まれました。

「ニャンジュース」は、廃棄される可能性のあったみかんジュースをそのまま再利用し、新しくパッケージしたもの。「お世話になっている方の力になりたいという思いと、廃棄ロスを無くしたいという思い」で作られたという。

そんな「ニャンジュース」発売の背景にあったのは、地元の助け合い。
大型台風の被害の中で結ばれた縁をきっかけに、ブランドの面でなかなか流通しにくい地元のみかんを多くの人に食べてもらいたいという思いから、みかんと猫用こたつのセットを販売。

発売直後の1週間はわずか3件しか売れなかったそうだが、ネコ専門メディアでの紹介やツイッターでバズったことをきっかけに、関西地方のテレビ番組や全国紙にも取り上げられるほどの大人気商品となり、今回の「ニャンジュース」の販売につながったのだ。
 

猫ちゃんが飲むのはNG!「猫好きな人が味わって」

――「ニャンジュース」のアピールポイントは…

一つ目は、一流ホテルの朝食で使われていた、味の濃い和歌山みかん100%のストレートジュースあること。二つ目は、この商品は人が喜ぶだけでなく、猫にも喜んでもらえること。そして、この商品を購入することで、売り上げの一部が、野良猫や捨て猫を保護し、新たな飼い主さんを見つける保護猫活動に支援されるという点です。


――これまでの予約希望数は?

ありがたいことに10日程で600件ほどのご注文が入っています。年末ということもあり、段ボールが足りなくなってしまい一時的に販売を中止しましたが、今は販売を再開しています。ジュースの瓶に詰める充填作業をしていただいている会社さんにも、あまりにも反響があり、一気に注文が入ってしまった影響で、いま工場で一生懸命に充てん作業をしていただいているところです。

購入は12月10日から1月22日までの予約受付となっているが、その人気から一時は販売を中止していた「ニャンジュース」。現在は2月上旬出荷予定分の販売を再開している(12月23日現在)。

そんな大人気の「ニャンジュース」だが、猫ちゃんと一緒に楽しむためには、一部注意点もある。


――ちなみに、猫ちゃんも一緒に飲んで大丈夫?

×です。猫ちゃんには柑橘類のジュースを与えないでください。特にみかんの皮に含まれるリモネンという成分は、猫ちゃんのお腹を壊してしまう恐れがあります。ジュースはあくまで猫好きな人に味わっていただければと思います。


――今後も「猫×みかん」のシリーズは展開する?


この商品は「人よし、猫よし、社会よし」な商品だと思っていますので、長くご愛顧いただけるシリーズにしたいですね。猫好きな方が喜んでくださるのはもちろんですが、地元の農家さんが喜んでくれたり、困っている人が喜んでくれたり、何かしら少しでも人の役に立てるシリーズにしていければと思っています。

また、私たちが住んでいる和歌山にはおいしいグルメがたくさんあります。今後も和歌山の生産者さんたちと手を組み、いろんな商品をご紹介していこうと思っています。その中からまた新しい企画もできるとよいなと思います。

「ニャンジュース」はチキンナカタ公式サイトなどから予約購入でき、価格はジュース180ml瓶×10本と猫用段ボール製こたつのセットで5,628円(税込)となっている。

地元企業の繋がり合いと、猫愛が合わさったアイテム。生活に大きな影響を与えている新型コロナだが、そんな中で生まれた新しい価値にも目を向けていきたい。

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プライムオンライン編集部
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