赤いほっぺに青い体の鳥…色鮮やかな理由は?

赤いほっぺに鮮やかな青色の顔の生き物。このような特徴を言われて思い浮かべる動物はいるだろうか?

日本に暮らしているとなかなか思いつかないかもしれないが、そんな鳥が実際にいて、いま話題になっている。
 

ほっぺが赤い鳥と言えばオカメインコを思い出すけど、顔や胸がトルコ石のような鮮やかな青色をしたセイキチョウ(青輝鳥)と言う鳥も居るようだ。なんか可愛い。調べてたら求愛時にとんでもなく高速のタップダンスを踏む鳥だと言う事が分かった。肉眼では殆どその速さは見えない。

このコメントとともに、Green Pepper(@r2d2c3poacco)さんが投稿したのは、赤いほっぺに顔や胸がトルコ石のような鮮やかな青色をした「セイキチョウ」の画像。

セイキチョウ 提供:太田菜央さん
この記事の画像(7枚)

Green Pepperさんは、セイキチョウを実際には見たことはなく、真っ赤なほっぺが可愛くて投稿したという。確かにこの見た目は、誰かに教えたくなる可愛さがある。

日本ではあまり馴染みのないセイキチョウだが、なぜここまで色鮮やかな配色なのだろうか。また、投稿には求愛時にタップダンスをすることにも触れられているが、どのような生態なのだろうか。

ドイツのマックスプランク鳥類学研究所でセイキチョウについて研究をしている太田菜央さんにお話を伺った。

赤いほっぺは異性を惹きつけるためのオスだけの特徴

ーーセイキチョウはなぜ派手な配色になっている?ほっぺの赤色と顔の青色には何か理由がある?

大きな要因の1つはおそらく、異性を惹きつけるためです。頬の赤色はオスにしかない特徴で、青い部分もメスよりもオスの方が濃くて鮮やかな傾向があります。ただし、人間から見ると派手な色でも、必ずしも野外で目立つとは限らないようです。

タンザニアで野生のセイキチョウを調査した時は、腹側の青い部分が青空の色に、背側の茶色い部分はとまっている木の枝の色によく溶け込んでいて、慣れるまで見つけるのがとても大変でした。生き物の見た目や行動の進化にはいくつもの要因が関与しているはずで、今後様々な可能性を考慮しながら調査する必要があります。

セイキチョウのつがい(頬が赤い左がオスで、メスは右) 提供:太田菜央さん

ーーセイキチョウの生息地や生態は?

セイキチョウはタンザニアやケニアなどの東アフリカを中心に幅広く生息していて、現地の人にはごく身近な鳥です。体重は11グラム前後で、スズメより1回りか2回りほど小さいくらいのサイズです。社会的一夫一妻制で、雨が増えて巣材となる植物が多く手に入る時期に両親で子育てをします。基本的に生涯同じ相手とつがい関係を維持するようです。

人間の目では不可能…かなり“高速”のタップダンスをする

ーーセイキチョウは求愛行動としてタップダンスをするということだが、この行動については、どのようなことが分かっている?

私たちがこれまでにタップダンス行動を確認できているのは、セイキチョウ(青輝鳥、オスの頬が赤い)とルリガシラセイキチョウ(瑠璃頭青輝鳥、オスの頭が青い)だけです。他の近縁種も求愛ダンスとしてジャンプをすることはありますが、1度のジャンプで何度もステップを踏むようなタップダンス行動は見られません。

もちろん、まだ調べられていない種がタップダンスをしている可能性はありますが、ごく限られた種の独特な行動であることは間違いないと思います。

私は現在、ルリガシラセイキチョウをメインに研究していますが、セイキチョウについても飼育個体と野生個体を用いた観察と研究を行ってきました。ここでは便宜上セイキチョウとルリガシラセイキチョウをまとめて「セイキチョウ」と呼びながら、タップダンス行動にまつわる知見を紹介します。

ルリガシラセイキチョウ 提供:太田菜央さん

セイキチョウは求愛ダンスとしてリズミカルなジャンプを何度も繰り返します。この行動をハイスピードカメラで撮影したところ、1度のジャンプで大抵3、4回、多い時には6回のステップを踏んでいることを発見しました。

ヒトのタップダンスによく似たこの行動は、その時の個体のモチベーションや社会状況にもよりますが、長い時には二分以上続くこともあります。

セイキチョウの行動で興味深い点は、このタップダンス行動をオスだけでなくメスも行うことです。例えば1度のジャンプに含まれるステップの回数には、はっきりとした雌雄差はありません。これは、クジャクやゴクラクチョウなど派手なオスがメスに向かって一方向的にアピールする種とは大きく異なります。

また過去の実験で、セイキチョウが異性とふたりきりの状況よりも、第三者が見ている状況でよりたくさんダンスをすることを明らかにしています。ダンス行動はペア相手へのアピールと同時に、周囲の個体への牽制のような役割を果たしている可能性があります。

これらの特徴はおそらく、彼らが社会的一夫一妻制であり、つがい関係を長く維持する必要があるといった生態学的な要因が深く関わっていると考えられます。

ルリガシラセイキチョウ 提供:太田菜央さん

ーーセイキチョウとルリガシラセイキチョウの違いは?

セイキチョウとルリガシラセイキチョウの違いについてですが、見た目の違いとしては、オスの特徴(瑠璃頭、赤い頬)と、くちばしの色の鮮やかさ(雌雄ともにルリガシラのほうが鮮やかなピンク)があります。一夫一妻制で雌雄が求愛行動をおこなうことは2種に共通しています。

生息地はゆるやかに住み分けている印象はありましたが、同じ場所で繁殖していることもよくありました。ルリガシラは、少し木の密度が低い開けた場所でよく目撃する傾向、セイキチョウはもう少し茂った森にいることが多かったです。

タップダンス行動も基本的に非常によく似ているのですが、ルリガシラのほうがセイキチョウよりも1ジャンプ中のステップ回数が少しだけ多い傾向にあること、頭の振り方が微妙に違う(ルリガシラの方が頭をやや深く下げる)など微妙な種差があります。

ルリガシラセイキチョウ 提供:太田菜央さん

ーーツイートにはタップダンスは肉眼ではほとんど見えないとあるが、それくらい速い?

鳥の目には見えている可能性も大いにありますが、人間の目でその動きを捉えるのはまず不可能です。

1度のジャンプは0.07秒ほど、1度のステップは0.03秒ほどで行われます。私たちがセイキチョウの行動をハイスピードカメラで撮影しようと思ったきっかけは、セイキチョウの求愛ジャンプが他の小鳥のものと比べて明らかに大きな音を出しているのが気になったからです。

音を出すための何らかの独特な動きがあるのだろうとは考えていましたが、一度のジャンプにこれほど多くのステップが含まれているとは予想しておらず、とても驚きました。
 

“タップダンス”はコミュニケーションかも?

ーー他の鳥には見られないセイキチョウの特徴や行動はある?

セイキチョウはタップダンスをすることで、バチンと非常にはっきりした音を出します。セイキチョウの近縁種にペットとしても馴染みの深い文鳥やジュウシマツがいますが、彼らの求愛ダンスではこのような大きな音が出ることはありません。

セイキチョウがタップダンスで出す音や振動は彼らのコミュニケーションにも重要な役割を果たしていると予想しており、現在研究を進めているところです。セイキチョウのタップダンス行動はそれ自体も素早くて複雑ですが、彼らはこの行動を巣材を咥えたまま、時に歌(さえずり)もはさみつつ繰り返します。

なぜこれほど複雑な行動を雌雄で行うようになったのかは、まだはっきりと分かっていません。セイキチョウとその求愛行動はただ可愛くて面白いだけでなく、ヒトを含む動物の複雑なコミュニケーション行動がどのように機能し、進化してきたのかについて考え、研究する上でもとても魅力的です。

セイキチョウ 提供:太田菜央さん

セイキチョウの赤いほっぺはオスにしかなく、異性を惹きつけるためで、青色の部分もメスよりもオスの方が色鮮やかであることが分かった。そして目立ちそうな青色も、生息地では風景と溶け込んでいるようだ。

また、かなり高速のタップダンスだったが、社会的一夫一妻制のため求愛と同時に周囲の個体への牽制のような役割を果たしている可能性があるというのも興味深かった。タップダンスの行動についてはまだはっきりと分かっていないこともあるということだが、今後の研究によって何か新しいことが見つかるかもしれない。
 

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