ハロウィーンの1週間前、JR仙台駅前で下校途中の高校生などに声をかけていたのは、警察職員の「少年健全育成官」だ。宮城県警が2026年に補導した少年は、9月末までで延べ2500人にのぼり、去年より190人増えている。増加の一因としてSNSの普及があると県警は分析する。街頭補導の現場と少年院の少年の言葉から、非行を食い止めるために何が必要なのかを探った。
街頭補導は「捕まえる」ためではない
街頭補導を行う宮城県警の少年健全育成官が声を掛けたのは通う学校も学年も違う高校生4人組。4人が集まっていた明確な理由はなく、「何となく」だという。
街頭補導では、20歳未満が犯罪に巻き込まれないよう注意を呼びかける。飲酒や喫煙などの不良行為があった場合は、保護者に連絡するなどの対応にあたる。この日の取材中に補導された少年はいなかった。
ただ、県警は今年、深夜徘徊や喫煙などで延べ2500人を補導している。内訳は次のとおりだ。
• 深夜徘徊:1319人(前年同期比+24)
• 喫煙:457人(前年同期比+36)
• 不健全娯楽:186人(前年同期比+36)
街頭補導の目的について、宮城県警本部少年課の長谷川陽子少年健全育成指導官は次のように語る。
宮城県警本部少年課 長谷川陽子少年健全育成指導官:
街頭補導というと、たばこを吸っている、お酒を飲んでいる、そういった子供を捕まえるというイメージが強く持たれるが、実はそうではない。いろんな問題を抱えた子を、早く見つけて適切な措置につなげるというのが目的。
対話を重ねて信頼関係を築き、“非行の芽”を摘むことが、街を歩く理由なのだという。
「やらないのはダサいと思って」中1で大麻
仙台市若林区の東北少年院では、家庭裁判所から少年院送致の決定を受けたおよそ50人の少年が、社会復帰に向けた矯正教育を受けている。
少年たちは、なぜ非行に走ってしまったのか。
恐喝容疑で逮捕され、2度目の少年院送致となった少年が取材に応じた。過去には特殊詐欺の“受け子”として逮捕され、一度は少年院を出ている。
恐喝容疑で逮捕された少年:
中1で初めて大麻を吸って、そこで薬物を買うために反社とのつながりができて。かっこいい先輩たちがやっているのに、自分がそこでやらないのはダサいかなと思ってしまって。
覚醒剤やコカインなど、薬物を断ち切ることができなかった。
恐喝容疑で逮捕された少年:
薬をやっていたことで自分自身がすごく短気になってしまって、ちょっとしたことでイラっとして殴ったりお金をとる行為をしました。被害者の方には申し訳ないが正直やった時のことすら覚えていません
そもそも薬物に手を染めたきっかけは「居場所」だった。
恐喝容疑で逮捕された少年:
自分にとって生きがいだったというか、中学1年生の時に友達がいなくなってしまったということもあって、(不良グループに)どっぷりはまってしまって。
悪さをしたら「すごい」とほめてくれるのでどんどん(不良グループに)よっていった。家族以上に家族というか。
SNSでつながる非行グループは「ノリ」で凶悪化も
県警本部少年課の山﨑耕平少年事件指導官は、非行に走る少年の傾向をこう説明する。
県警本部少年課 山埼耕平少年事件指導官:
学校や地元が心地よい居場所であれば良いが、居場所がなかったりすると、今度はSNSなどでつながった非行グループの中に自分の居場所を見つける。
SNSでつながったグループには、より危険な傾向がみられるという。
県警本部少年課 山﨑耕平少年事件指導官:
SNSでつながったグループは緩くつながっている。その場のノリや悪ふざけから派生して安易に非行行為に走る。場合によっては傷害、強盗などの凶悪な事件につながる。

今年、県内では少年が逮捕される事件が相次いでいる。仙台駅近くの駐車場も現場の一つとなった強盗致傷事件では、逮捕された少年と被害男性を結びつけたのはSNSだった。
2026年10月22日、16歳から17歳の少年3人が、10代の男性に暴行を加えてけがをさせ、現金1000円を奪った疑いで逮捕された。事件の発端は、少年がSNS上で身分を偽って被害男性と連絡を取ったことだった。

刑法をもとに検挙・補導された県内の少年(刑法犯少年と触法少年)は、去年1年間で397人だった。20年前と比べると2割まで減っている。ただ近年の傾向を見ると、コロナ禍の2022年には190人まで減少したものの、そこから増加傾向にある。SNSの普及が背景にあると見られている。
警戒を強める薬物、中学生にも広がる
警察が学校などと連携して特に警戒を強めているのが、SNS上で出回る薬物情報である。
正しい情報を知ってもらおうと警察や学校は、授業を行うなど連携を強めている。
特に大麻は、「違法ではない」といった嘘の情報や、隠語を使った販売などを背景に、2025年、全国で検挙された少年が過去最多となった。
2026年7月には、仙台市の男子中学生が自宅で大麻を所持したとして逮捕される事件もあった。
薬物への依存が友人への恐喝事件の引き金となった少年。
少年院では薬物依存を脱する更生プログラムが組まれているが、それでも不安は拭えないという。
恐喝容疑で逮捕された少年:
薬が100%ない少年院という場所でも、自分の体は(薬物を)欲している。自分で責任を取れない薬に関しては、簡単にやらなければよかったと後悔している。
子供たち自身が防犯の担い手に
学生同士で防犯活動に携わる取り組みも進められている。若林区民ふるさとまつりでは、地元の中学生ボランティアが県警の非行防止ソングに合わせたダンスの披露や防犯に関するクイズなどブースを出店した。
若林地区少年補導員協会 小野和徳会長:
第三者視点では見るだけで終わってしまいがち。能動的に自分たちが(防犯に)関わることで、もうひとつ突っ込んで物事を考えていける。私たちも、子供たちに遠慮しないで言いたいことを言えるよう、関わりを持って見守っていきたい。
県内には、大人ではなく子供たちが主体となり、同世代の非行防止や防犯活動に取り組むボランティア団体、児童生徒健全育成ボランティア「アルカス」がいる。
年齢の近い大学生もサポートしている。少年健全育成ボランティア「ポラリス」の大学生は「怖がらずに気軽に相談してもらえる身近な存在であれたらと思う」と話す。
「少し先のことを考えて」少年院で語る将来

防犯に関わる子供たちがいる一方で、非行や犯罪に走ってしまう少年がいる。これが現実だ。
少年院の少年は、自らの経験をこう振り返る。
恐喝容疑で逮捕された少年:
悪いことをしている時は、その場が楽しければいいとか、その時のことしか考えなかった。自分の行動がいかに(将来に)影響していくか、自分の行動によって将来がどれだけ狭められるかを考えた方がいい。
見守ってくれる人がいて、居場所があること。非行や犯罪を食い止めるつながりを作るための継続的な活動が、地域のため、そして少年たちの未来を守ってゆく。

