鹿児島県鹿屋市で30年間続いている「かのや土曜朝市」。出店者と客の高齢化で規模が小さくなるなか、若い世代が継承しようと動き始めた。市役所職員らによる「かのや土曜朝市応援団」が企画した30周年記念イベントには、通常の倍となる20店舗が出店し、肩と肩がぶつかるほどのにぎわいを見せた。ちなみに、出店料は1カ月で500円である。
毎週土曜日、ゆっくりと時間が流れる朝市
「かのや土曜朝市」は、毎週土曜日にリナシティかのやに隣接するイベント広場で開かれている。30年の歴史を持つ朝市だ。会場には植木や果物などが並び、ゆっくりとした時間が流れている。
しかし、その裏側では厳しい現実もある。出店者の一人は「高齢化で出店する方たちがいなくなって、ここ30年でお客さんも亡くなられた人たちが多いのでだいぶ少なくなった」と話す。
約20年前の朝市は、大きなテントが立てられてにぎわっていた。多い時期には70店ほどが軒を連ねていたという。だが年々規模は縮小し、現在は10店舗ほどになった。
出店者や客の高齢化に加え、新型コロナウイルスの流行も追い打ちをかけた。かのや土曜朝市実行委員会の迫伸義会長は「その前までは弾んでいたんだけどコロナでパッタリだった」と振り返る。
「かのや土曜朝市応援団」が登場
そんな朝市に、近頃は若い世代の姿が見られるようになった。自らを「かのや土曜朝市応援団」と名乗る人たちである。

メンバーの下原彩良さんは「普段は全然違う仕事を。市役所に勤務しているんですけど」と話す。応援団の中心は鹿屋市の職員だ。本来の業務とは直接関係ないものの、課の垣根を越えてサポートしている。
同じく応援団の久木山龍太郎さんが参加した理由は、朝市そのものへの感動だった。「30年も毎週土曜日にずっと集まり続けてやっている朝市は、全国的に見ても少ないと思う。そんな朝市を鹿屋でやっていることにすごく感動して」と語る。

朝市を若い人たちにも知ってほしい。そんな思いから、応援企画の第1弾として30周年を記念したイベントを開くことにした。
打ち合わせは「昔ながらのスタイル」で
イベントの準備は、出店者の事情に合わせて進められた。下原さんによると、高齢化の影響でLINEを使える人は少ない。そのため、打ち合わせもアナログで、毎週朝市の会場に足を運び、紙を使って行った。下原さんは「昔ながらのスタイルでやる」と話す。

最初は少し消極的だった出店者たちも、徐々に心を開いていったという。迫会長は「うれしいですよ。感無量だ。胸がワクワク感やなあ」と喜びを語った。
打ち合わせ中には、ほほえましい場面もあった。出店者が「おミカンを!いやー1個じゃなくて全部」と、ボランティアで支える応援団にミカンを差し入れたのだ。皆で力を合わせる雰囲気が伝わってくる。

迫会長は初めてテレビに出演し、緊張しながらもイベントをPRした。
台風接近の中で迎えた記念イベント当日
迎えた記念イベント当日は、台風30号が接近するなかでの開催となった。迫会長は「予報は午前中なんとかもってくれたらいいんだけど」と空を気にしていた。
作業は夜が明けないうちから始まった。いつもの出店者は、いつも以上に商品を並べる。ある出店者は「ちょっと多めに持ってきた」と意気込んだ。市役所職員も、いつも以上に集まった。
昔のような賑わいの復活を目指して、朝市が幕を開けた。
通常の倍の20店舗、抽選会も大盛況
30周年の朝市には、通常の倍となる20店舗が出店した。応援団が交渉し、キムチを売る店や、フォカッチャを売るイタリア料理店などが加わった。
さらに応援団のアイデアで、出店商品や割引券が当たる抽選会も行われた。会場は、お客さんの肩と肩がぶつかるくらいのにぎわいとなった。

訪れた客からは喜びの声が聞かれた。
「きょうは楽しいです。すごくいっぱい買いましたよ。イワシとエビと白菜とかほうれん草とか」
「初めて来ました。野菜も魚も安く買えていいです」

新しい風とともに、週末の日常をこれからも
出店者の多くは高齢で、下原さんによると、最初はイベントに対しても「えーやるの!?」という反応だったという。しかし今は、熱意が徐々に高まってきている。
下原さんは「このタイミングで新しい方が入ってきてその方と一緒に盛り上げていけたら一番いい」と先を見据える。

30年続く週末の日常を、これからも守っていく。応援団の力が加わったかのやの朝市には、新しい風が吹きつつある。

