韓国で大ブームとなったシャインマスカットの価格が急落している。背景には新規参入の増加による過剰生産や品質低下があるという。韓国政府は海外への販路拡大を進める方針だが、生産者からは苦しい状況を訴える声も上がっている。一方、日本では苗木流出による損失やブランドイメージへの影響が課題となっている。
1房200円にまで価格が急落
韓国・ソウルにある市場で、存在感を放っていたのは、今が旬のシャインマスカットだ。

店頭の値札には4000ウォン(日本円で約471円)と書かれている。

さらに別の店では、シャインマスカットが3房入った箱が5000ウォン(日本円で約600円)とあり、1房あたりの値段は200円と驚きの安さだ。

韓国ではブドウ界のエルメスとも呼ばれ、大ブームを巻き起こしていたが、なぜお手頃価格で売られているのか。
取材した青果店からは「利益がない、お金にならないよ。シャインマスカットの値段が一番下がっているんだ」「毎年下がって、特に今年が一番安いです」といった声が聞かれた。

2018年11月時点では2キロあたり約2万7000ウォンほどだったが、その後価格が下がり、2026年11月2日時点の価格は5939ウォンと、4分の1以下まで急落している。
この状況に消費者は「ひとまず価格が安いのはいいことですね」と話す。
実際に価格の安い商品を口にしても、際立った渋みなどは感じられなかった。
原因は“作りすぎ” 品質低下も問題視
一方、シャインマスカットを栽培する農家は「本当に頭を抱えています。今は原価すら回収できないブドウが非常に多いんです」と深刻な状況に直面している。

一体なぜ、韓国でここまでシャインマスカットの値段が下がったのか。その原因の一つは過剰生産、つまり“作りすぎ”だ。

韓国では6年ほど前にシャインマスカットがブームとなり、新規参入が相次いだ。

その結果、今では国内にあるブドウの栽培面積の4割弱をシャインマスカットが占めている。
若い農家からも「始めた頃は相場も良く、雰囲気も良かったんです。しかし私が農業に慣れていくうちに価格があまりにも下がってしまって、どうしていいか分からないほど苦しいです」と悲鳴が聞かれた。
また、品質の低下も問題視されている。
慶山市のブドウ農家は「現在の仕組みでは、味が良くなくても見た目が良ければ高値がつくんです」と話す。

糖度が低くても粒が大きいほど高値がつくことから、消費者離れの一因になっているという。
日本発祥ブランド 苗木流出で損失「年200億円」
糖度が高く皮ごと食べられるのが人気のシャインマスカットは、日本国内で1973年から品種改良を始め、33年に及ぶ歳月と努力を積み重ね、2006年に品種登録された日本発祥のブランドだ。

当時は輸出や国外での生産を想定していなかったため、海外での品種登録を行っていなかった。

そのため、現在韓国で広まっているシャインマスカットは、日本から苗木が流出し普及したものとみられている。
こうした現状は韓国だけではない。

FNNが4年前に中国・北京市内の市場を取材した際、多くの店でシャインマスカットが山積みになっていた。

農水省によると、4年前の時点で中国国内におけるシャインマスカットの栽培面積は日本の約30倍の規模で、東南アジアなどに多くの中国産が輸出されている。

さらに中国への流出はブドウだけではない。
中国の大手通販サイトを見ると「愛媛48号 紅公主」と書かれている商品が載っている。

紅公主とは紅プリンセスという意味で、愛媛県が開発した高級柑橘、紅プリンセスと同じ名前だ。

2025年に本格販売が始まったばかりの新品種だが、愛媛から流出したものとみられている。

日本から苗木が流出し大ブームになったものの、品質の低下や作りすぎで価格の急落に直面している韓国のシャインマスカット。

韓国政府は国内の流通価格を安定させるため、海外にも販路を広げる方針だ。

こうした次なる動きは、日本産にどのような影響を及ぼすのか。
国内で100種類以上のブドウを栽培・管理する林ぶどう研究所の林慎悟さんは、3つの懸念があるという。

林ぶどう研究所・林慎悟さん:
その他地域のものが輸出・販売されるようになってくると、そこで(日本産の)販売機会があるものがその機会を失うことが起きる。日本産のものの数量が『売りづらく』なってくること、当然悪いものが市場に流れれば『安くなり』、悪いものが流れていくと『あまりおいしくない品種だという認知』が進む可能性もあるので、うまくブランドイメージをどのように守っていけばいいかということが今後重要になってくると思う。

林さんが約10年かけて開発した岡山県産のオリジナル品種、マスカットジパングは、現在海外での品種登録を進めていて、流出防止や品質管理が今後の課題だ。
林ぶどう研究所の林さんは「流出もそうですし、品質をできる限り管理をするという意味でも、そのあたりを意識して(生産)地域を限定している」と話す。
対策に品種登録など行う専門機関立ち上げ
農林水産省によると、苗木が中国と韓国に流出したことによる損失額は年間で200億円弱に上ると試算されている。

これは本来得られるはずだった許諾料のみの試算で、この数字には日本が輸出をした先で韓国産などと競合して販売機会が失われる影響などは含まれていないため、損失額はさらに膨らむとみられている。

対策について、農林水産省はこの夏、開発者に代わって海外での品種登録や無断栽培の監視などを行う専門機関を立ち上げた。
オリジナル品種マスカットジパングを生産している林ぶどう研究所では、複製が難しい電子タグを商品につけることで正規の品種であることを証明しているといい、今後こうした動きの広がりに注目だ。
(「イット!」11月4日放送より)

