宮城を代表する名産品、「笹かまぼこ」を製造する老舗企業の倒産が相次いでいる。円安や原材料費の高騰が直撃する中、「企業努力のみで吸収できる範囲を超えている」と業界団体が緊急声明を発するほど事態は深刻だ。宮城の名物でありながら、海外情勢に翻弄される笹かまぼこ業界の今を追った。
老舗メーカーが次々に事業停止、自己破産へ
宮城県内では、笹かまぼこ製造会社の倒産が立て続けに発生している。
塩竈市の「武田の笹かまぼこ」は、2025年11月21日に仙台地裁へ自己破産を申請し、同日破産手続き開始決定を受けた。
1935年創業の同社は、JR仙台駅構内や道の駅、百貨店などで販売を展開し、2013年3月期には年間売上高約6億1900万円を計上していた。コロナ禍以降は自動販売機の導入やコラボ商品の開発など新たな手を打ってきたが、支払い利息などが重荷となり連続で赤字を計上。2025年11月20日付で事業を停止していた。
亘理町に本社を置く「馬上かまぼこ店」は、1912年(大正元年)創業の老舗だ。
細工かまぼこを主力商品とし、1992年6月期には年間9億円を超える売上を計上した実績を持つ。しかしその後、消費の低迷や原材料費の高騰が追い打ちをかけ、2022年6月期から債務超過に陥った。経費削減に努めたものの、ナフサ供給不安なども影響し、2026年9月7日までに事業を停止して自己破産を申請。
塩釜市の「カネコ橋沼商店」も、2026年9月25日に自己破産申請の準備に入ったことが帝国データバンクによって明らかになった。
1927年創業で、「松島笹」や「牛タン笹かま」を主力商品としてきた同社は、1994年3月期に年間7億9000万円の売上を誇っていた。しかし、2011年の東日本大震災で本店工場と事務所が全壊。1年間の休業を余儀なくされた後、2012年4月に事業を再開したものの、借入金の返済などで赤字が続いていた。2026年3月期には年間売上4億8100万円に対して生産コストの上昇から営業赤字となり、資金繰りが限界に達した。
原材料の9割以上を輸入に依存
なぜこれほど多くの企業が苦境に立たされているのか。その根本には、原材料の調達構造がある。
泉区に工場を構える1935年創業の「阿部蒲鉾店」の阿部賀寿男社長は、全国400のかまぼこ製造会社が加盟する「日本かまぼこ協会」の会長も務める。同社長によると、笹かまぼこの原料となるスケトウダラやヒラメなどの白身魚について、多くのかまぼこ製造会社は原材料の9割以上を海外からの輸入に頼っているという。
阿部蒲鉾店 阿部賀寿男社長:
環境の変化で揚がる魚も変わってきている。安定した原料を確保するには、海外に依存するしかない状況。

国の統計によると、アメリカ産の冷凍たらのすり身の価格は、円安と世界的な魚食ブームによる原料の争奪戦を受けて急騰している。2025年1月には1キロあたり376円だったものが、2026年7月時点では483円と、わずか1年半ほどで約3割も上昇した。輸送コストや人件費の高騰も重なり、製造コストはどの企業にとっても深刻な問題となっている。
こうした状況を受け、日本かまぼこ協会は今年6月に「緊急声明」を発表。「企業努力のみで吸収できる範囲を超えている」として、国などへの支援を求めた。
阿部社長によると、多くの企業が1970年代中頃から徐々に、原材料を海外産に切り替えたという。当時は安く、大量に仕入れることが可能だった。輸送コストの増加、世界的な争奪戦、円安、国内の人件費の高騰など、明るい材料は少ない。「海外で製造するのも手ではないのか?」という質問に、阿部社長は、笹かまぼこは「宮城で作り続けること」に意味があると話す。
阿部蒲鉾店 阿部賀寿男社長:
使用する白身魚の配合など色々なこだわりがある。そういった意味で、宮城で作るという意味は非常に大きい。
「地元の食文化」故の問題
同じ仙台名物で、やはり原材料をアメリカなど海外に依存している「牛タン」も、コスト上昇の影響を受けている。しかし牛タンと笹かまぼこでは、消費者の反応に大きな違いがあると専門家は指摘する。
七十七リサーチ&コンサルティング 田口庸友首席エコノミスト:
牛タンのような商品は、観光客が高くても消費するので、十分ではないですけれどカバーできている。
笹かまぼこは県内の消費者中心なので、価格が上がると買い控えが起こってしまって、十分に価格転嫁できない。
七十七リサーチ&コンサルティング 田口庸友首席エコノミスト:
大変皮肉なことに、仙台名物と言いながら、海外情勢や為替の影響を大きく受けるようになっている。
観光客が積極的に消費する牛タンと異なり、笹かまぼこは地元の日常的な食品として根付いてきた。それ故に、値上げをすれば地元消費者が買い控え、売上が落ちるという構造から抜け出しにくい。宮城の食文化として長年親しまれてきたことが、逆に経営の足かせになっている側面もある。
「伝統の食文化を守りたい」 生き残りをかけた挑戦
厳しい環境の中でも、企業は前を向いている。海外で開かれる商談会で、「宮城の笹かまぼこ」を売り込む企業も増えているほか、阿部蒲鉾店では、健康志向の高まりを追い風に、タンパク質を手軽に摂取できる新商品の開発・販売に取り組んでいる。
阿部蒲鉾店 阿部賀寿男社長:
伝統の食文化なので、それはしっかり守っていきたい。非常に環境としては厳しいが、いかに生き残っていくかということを考えながら、ものづくりや販売の方法も色々考えながら取り組んでいく。
宮城県内では現在も約40の企業が笹かまぼこを製造している。明治時代から続く「かまぼこの食文化」を次の世代へつなぐため、各企業が知恵を絞る日々は続いている。

