議員の海外視察に厳しい目が向けられている。発端は福岡県議会。3年間の視察費用が総額2億6000万円あまりに上ったことが、全国的にも議論を呼んだ。宮城県議会の議員たちはどこへ行き、どんな成果を得ているのか。県議に話を聞くとともに、海外視察のあり方を考える。
きっかけは福岡県議会の高額視察費 宮城県議会では
「海外旅行は続けます、その考えを一切変えることはございません。あっ、“海外旅行”じゃありません、“海外活動”です」
2026年6月の記者会見で、福岡県議会・蔵内勇夫前議長の口から飛び出した発言だ。
問題視されたのは、福岡県議が行った2025年度までの3年間における海外視察の費用。一泊16万9000円のフランス訪問や、一泊13万3000円のハワイ訪問など、高額と言える視察費が批判を集めた。現在、福岡県議会ではルールの見直しが議論されている。
視察費用は県民などが納める税金でまかなわれている。そこで、宮城県議会ではどのようなルールで行われているのかを確かめた。

県議会事務局によると、議員が行う海外視察は2種類ある。
1つ目は、県の事業や議案の審査のために議会が議決をして、「議員派遣」という形で海外に行くもの。2つ目は、会派や議員に交付される「政務活動費」を使い、議員の調査・研究のために行うものだ。
ルールはそれぞれ以下のとおり。
• 議会が派遣する場合は、費用の上限は100万円で、各議員が任期中に2回まで行える。
• 政務活動費で行う場合は、回数の上限がない。海外の宿泊費は4万円などと定められているが、現地の事情に応じて上乗せが可能で、交付された政務活動費内でやりくりする。
いずれの場合も、事前に調査目的や日程を記載した申出書や届出書を提出し、事後には報告書の提出が求められる。

2025年度は議会派遣分と政務活動費分を合わせて、4つの会派が9つの国と地域を訪問し、費用の合計は1508万円だった。2024年度は3つの会派が6つの国と地域を訪問し1951万円だった。
議長「県民への説明責任を果たすことが重要」
宮城県議会の佐々木幸士議長は、観光振興や外国人材の受け入れなど海外との関わりが多岐にわたるとして、海外視察の必要性を認める一方で議員に求められていることを次のように語る。
宮城県議会 佐々木幸士議長:
目的や費用、成果に厳しい目が向けられているので、「こういったものが実は前に進んでいる」あるいは「将来的に種をまいている」、そういった県民への説明責任を、議員として果たしていくことは重要だと思っている。
街の声は「批判」より「実感できる成果」

県民の受け止めはどうか。街で聞くと、費用への意見はさまざまだった。
「少し高い。税金で行っているので、抑えてもいいと思う」
「(視察費用100万円は)海外旅行の費用が上がっているので、1回で無くなってしまいそう」
「行く必要性を丁寧に説明してもらい、還元してもらえているという実感があれば納得できる」
「各所に出かけることで気付きがあるので否定はしない」
聞かれたのは、費用や視察そのものへの批判よりも、「実感できる成果」を求める声だった。
海外視察そのものや現在の費用に批判的な声は必ずしも多くはない。その一方で、今回話を聞いたほぼ全員が、議員がどこに行き何をしているかを知らなかった。
また、若い世代からは海外視察の成果を「慣れ親しんだYouTubeやTikTokなどのSNSで発信してほしい」という声もあった。時代に合わせた海外視察の報告方法を検討すること、常に変えていこうとする姿勢が、県民に与える信頼感につながるのかもしれない。
台湾・香港を訪れた県議が語る成果
2025年4月に台湾・香港を訪問した自民党会派の菊地恵一議員は、県内で活発に行われている海外の教育関係者や学生の交流の背景に、議員視察があると強調する。
自民党・県民会議 菊地恵一議員:
台湾の学校が宮城県での学校交流に何を望んでいるのか。普通の交流に加えて震災以降、震災の体験を学ぶ防災教育を強く求めていることを認識できた。
香港では、県産品の売れ方や、インバウンドで来てもらう際の交通の不便さについて、担当者から具体的な話を聞けたという。
とはいえ、インターネットを介して世界中とオンラインでつながることができる現代。行かずとも知れることもあるのでは、との問いには、こう答えた。
自民党・県民会議 菊地恵一議員:
宮城に対して何を願っているのか、何を子供たちに勉強させたいと願っているのか。心の中のより深いところの気持ちというのは、行ってみないと分からなかった。
菊地議員によると、台湾・香港での視察にかかった費用は、通訳や航空券などを含め7日間で1人70万円ほどだった。
自民党・県民会議 菊地恵一議員:
(宿泊場所は)中の上レベル。とてもじゃないが、超豪華どころか豪華ともいえない。誤解を招かないような内容にはしないといけないが、(海外視察は)必要なことだと思う。
専門家「行く意義の可視化を」
場合によっては、税金が恣意的に利用されかねないのが海外視察である。県民が視察の必要性を理解し、成果が広く還元されるためには、「成果を検証する仕組み」が必要だと専門家は指摘する。
拓殖大学 河村和徳教授:
成果というものは、あくまでも議員が頑張っていると評価されるのではなく、頑張っていることを踏まえて県民が評価をするということ。多様なところから情報発信されることによって、行く意義というものが可視化されるように仕掛けていかなくてはならない。
視察の目的や費用、そして成果をどう県民に伝えていくのか。議員には、その説明がこれまで以上に求められている。

