歴史も一緒に味わう別府のカフェ巡り 時を越えた空間で特別なひとときを
建物を解体せずにそのまま移動させる「曳家(ひきや)」という技術をご存じだろうか。
道路拡張で失われるはずだった歴史ある日本家屋が、その技術によって守られ、今、大分県別府市で和カフェとして新たな時を刻んでいる。
そこには、創業以来変わらない優しい味と、人々の熱い思いがあった。
時を越えた空間で、歴史も一緒に味わう特別なカフェ巡りの旅に出かけよう。
道路拡張から建物を守った「曳家」 創業以来の優しい味を今に伝える「茶房 信濃屋」
まず訪ねたのは、別府市西野口町にある「茶房 信濃屋」である。

立派な日本家屋が目を惹くこの建物は、もともと田川の炭鉱の別荘だったそうだ。

この建物には、大きな歴史の転換点があった。
2018年、道路拡張に伴い解体が検討されたが、歴史ある建物を保存するために「曳家」が行われたのである。

曳家とは、建物を解体せずにそのまま移動させることだ。
この大工事を経て、信濃屋は新たな歴史を繋いできた。

驚くのは建物の歴史だけではない。メニューも1981年の創業以来、ほとんど変わっていないのだとか。

今回、田中リポーターがいただいたのは、店自慢の「コーヒーゼリーぜんざい」と「かぼすソーダ」だ。

「コーヒーゼリーぜんざい」は、深煎りのオリジナルブレンドをゼラチンで固めた手作りのコーヒーゼリーに、あんこ担当のスタッフが丁寧に炊き上げたあんこ、そしてアイスクリームが絶妙に調和した一品。

ほろ苦いコーヒーゼリーと優しい甘さのあんこが相性抜群で、田中リポーターも「コーヒーの風味をしっかり感じます。とっても合いますね」と感動していた。

自家製のカボスシロップを使った「かぼすソーダ」は、爽やかでスッキリとした飲みやすさが特徴である。
完熟かぼすと砂糖を合わせ3か月~半年かけて発酵熟成させているため、酸味だけでなく優しい甘みも感じられる。

信濃屋には、創業以来守り続けるこだわりがある。
それは、「できるだけ手作りで、体に優しいもの」を提供すること。この思いの原点は、店主の長男が病気を乗り越えた経験にあるという。

「食べるというのはすごいことで、子どもたちに食べさせる気持ちで私たちも作ってる」という言葉に、店の温かさの理由が詰まっているように感じた。

明治の旅館建築がカフェに オーナー厳選スイーツと手作りドリンクで過ごす贅沢時間「冨士屋一也百」
続いて訪れたのは、別府市鉄輪(かんなわ)にある「冨士屋 一也百(ふじやはなやもも)」だ。

この風格ある建物は、なんと明治32年に建てられた元「冨士屋旅館」。今年で127年目を迎える、別府で唯一現存する明治時代の旅館建築である。
100年先も持つようにと再生工事が行われ、去年7月には新たな宿泊棟も完成。およそ30年ぶりに宿泊営業が復活した。

カフェスペースは、元々の和室を活かした和モダンな空間。コンサートホールやギャラリーも併設されており、様々な楽しみ方ができる場所になっている。

こちらでいただいたのは、秋におすすめのスイーツとドリンクだ。

「ウィーンのアップルパイ バニラアイス添え」は、オーナーが県内外から厳選した一品で、福岡の洋菓子店から仕入れているそう。

ヨーロッパのケーキが好きなオーナーが、その味を日本で再現している店の味に惚れ込んだという。シナモンなどのスパイスが効いたヨーロピアンな味わいが特徴だ。

そして、驚きだったのが手作りの梅シロップを使った「完熟梅シロップのアールグレイティー」。

紅茶に梅?と思いきや、その相性は抜群である。
完熟した日田の南高梅を、じっくりと温泉の蒸気で蒸すことで、甘みと桃のようなフルーティーな香りを引き出しているのだとか。

田中リポーターも「梅というより桃の感じ。ピーチティーのよう」と、その新しい味わいにすっかり魅了されていた。

「一也百(はなやもも)」という名前には、「100年先まで続く」ようにという願いが込められている。この場所で人々が交流し、鉄輪の文化に触れてほしいという思いが、店の随所に感じられた。

歴史ある建物を大切に受け継ぎながら、訪れる人々を温かく迎えてくれる別府の和カフェ。
建物の歴史に思いを馳せながら、ゆっくりとカフェタイムを過ごしてみてはいかがだろうか。


