イギリスで国際防衛eスポーツ大会が初めて開かれ、日本から自衛隊も参加した。ゲームで培った能力をサイバー防衛や次世代の人材育成などに活用する動きが注目されている。
軍人たちが戦う舞台は…eスポーツ
画面を見つめ、マウスとキーボードを操る選手たち。
仲間と声を掛け合い、相手の動きを読みながら戦う。その本業は、各国の軍人だ。
10月8日から11日、イギリス北東部サンダーランドで、初めての「国際防衛eスポーツ大会(IDEG)」が開かれた。
日本の自衛隊を含む10カ国が参加し、銃撃戦や自動車レース、仮想空間でのドローン操縦など4種目で競った。
ゲームで培った力を、国を守る力へ。
大会では、競技だけでなく、防衛を担う人材の育成についても議論された。
注目される分野の一つが、サイバーセキュリティーだ。
「すべてのハッカーはゲーマー」
日本でも、GMOインターネットグループへの不正アクセスをはじめ、企業や医療機関などを狙うサイバー攻撃が相次ぎ、情報や資産をどう守るかが喫緊の課題となっている。
国防の分野でも、通信や情報システムを攻撃から守る力は欠かせない。
その担い手を、ゲームの世界から見つけようとする動きがある。
「すべてのゲーマーがハッカーというわけではありませんが、すべてのハッカーはゲーマーです。国を守る次世代の優秀なハッカーを見つけたいなら、ゲームのコミュニティーを見る必要があります」
そう語るのは、サイバー人材の発掘・育成に取り組む「ザ・ハッキング・ゲームズ」のCEO、ファーガス・ヘイ氏だ。
「ハッカー」と聞くと、不正に侵入して情報を盗む人物を思い浮かべるかもしれない。
しかし、コンピューターの仕組みに精通した技術はシステムの弱点を見つけ、攻撃を防ぐ側にも生かせる。
ヘイ氏が着目するのは、ゲームとハッキングに共通する思考だ。
パターンを見抜き、仕組みを全体として理解し、高い集中力で問題を解く。
ゲームの中で発揮されるこうした能力に、サイバー人材としての可能性を見いだしている。
サイバー攻撃への備え「兵士像を考え直す必要がある」
ヘイ氏は、ドローンや自律走行車両による戦いに注目が集まる一方、サイバー攻撃への備えも欠かせないと強調する。
ファーガス・ヘイ氏:
相手を不安定にする最も手軽な方法は、サイバー攻撃です。
その脅威に対応するためには、軍が求める人材像から見直す必要があるという。
ファーガス・ヘイ氏:
将来の戦闘を担う人材像を、考え直さなければなりません。雨の中で腕立て伏せをする人ではなく、パズルを解くのが非常に得意で、自閉症の特性があり、優れたハッカーである人かもしれません。制服を着て広場で行進することはなくても、通常の兵士以上に敵に影響を与えられる可能性があります。
学歴や資格だけでは見つからない才能
従来の兵士像には収まらない人の能力を、どう見つけ、生かすか。
ヘイ氏が軍に求める変化は2つある。
一つは、軍のイメージを変えること。
若いゲーマーに、軍にも自分の能力を生かせる場所があると知ってもらうことだ。
もう一つは、人材の見極め方を変えること。
学歴や資格だけでは、ゲームを通じて身についた能力を捉えきれないと指摘する。
ファーガス・ヘイ氏:
私の組織にいる世界最高水準のハッカーたちは大学に行っておらず、資格もありません。すべてゲームの中で技術を身につけました。
自衛隊もeスポーツの可能性に注目
自衛隊も、こうした動きを注視している。
大会を訪れた統合幕僚監部防衛計画部長の白井亮次空将補は、eスポーツについて「効率的、効果的に訓練するという意味で、有効な手段だと理解しました」と話した。
ゲームを得意とする人材の積極採用については、「まだその段階ではなく、検討中」とした上で、「将来的には必要になると、私個人としては考えています」と述べた。
日々、何げなく楽しむゲーム。
その中で磨かれた判断力や問題を解く力が、サイバー攻撃から社会を守る仕事につながるかもしれない。
eスポーツへの注目は「国を守るのはどんな人か」という人材像にも、変化を促している。

