福岡市中心部の住宅街にあるレストラン。コロナ禍で客足が激減した際に始めた養蜂が実を結び、希少なハチミツ『百花蜜』の味わいに注目が集まっている。
全体の僅か1割『ニホンミツバチ』
福岡市中央区の桜坂エリアにあるレストラン『IMURI(いむり)』。

店の小さな庭で『ニホンミツバチ』を飼育し、“桜坂産のハチミツ”を生産している。
『IMURI』副店長の末崎義昌さんが養蜂箱に案内してくれた。記者も防護服を着て巣箱のある庭に特別に入れてもらうと、日本の在来種『ニホンミツバチ』がびっしり。

農水省によると、女王バチ1匹と約2万匹の働きバチで構成された1つの巣箱を『1つの群れ』と考えると、国内で飼育されているハチの群れは24万2千群。このうちニホンミツバチは、2万5千群と約1割程度と言われている。
セイヨウミツバチに比べて飼育が難しく、採れるハチミツの量は、セイヨウミツバチよりも遙かに少ないニホンミツバチのハチミツ。文字通り希少な存在なのだ。

末崎さんが養蜂を始めたのは、約6年前。コロナ禍で客が激減する中、「何か面白いことをやりたい」というオーナーの一言がきっかけだった。

「全部セットになっているものを購入して、そこから始めた。2年目に自然にハチが入って、それを最初、スタッフでちょっと食べて…。その味にまず一番感動して、皆んなに食べてもらいたいなと思った」と末崎さんが当時を振り返る。

ただ、養蜂は簡単ではなかった。巣が割れて落下したり、群れが全滅したりと末崎さん達は、失敗も多く経験したという。

「お客様の中に養蜂されている方がいたので、その方に話を聞いてハチを譲ってもらった。飼っていたら可愛いくなってハマっていった」と笑顔になる末崎さん。
養蜂について知識を深めながら試行錯誤を重ね、遂に2025年、群れの越冬に成功。

今は2つの巣箱で養蜂を続けている。
稀少ハチミツ『百花蜜』の味わい
この日、末崎さんにハチミツの採取に立ち会わせてもらった。「きょうは1段分。(色が濃いのは)ちょっと熟成していると思います。

2025年からいた群れなので」と末崎さんが『巣蜜』を取り出しながら説明してくれた。規則正しく並んだ巣の中には、ハチミツがぎっしりと詰まっている。

「食べてみます?これをこのまま」末崎さんの言葉に甘え、試食。「凄い濃厚!お花の華やかな香りがしますね。美味しい」と記者も思わず笑顔になる。この味わいこそ、『飼育が難しい』とされるニホンミツバチに末崎さんが拘る理由だ。

「ニホンミツバチは、いわゆる『百花蜜』といわれる蜜を集めるんです。この地域の花をたくさん集めてできたハチミツです」。

特定の花だけでなく、様々な花から蜜を集めるニホンミツバチ。そのハチミツは『百花蜜』と呼ばれ複雑で豊かな味わいが特徴だ。
『IMURI』の『はちみつフェア』で提供されたメニューには、ニホンミツバチの『百花蜜』がふんだんに使われていた。

グラスの縁にたっぷりとハチミツを付け、新ショウガのシロップを炭酸で割ったノンアルコールカクテルやゴルゴンゾーラチーズを使ったケーキにも仕上げにハチミツをかけて提供。

その独特な味わいに多くの客が本当に驚くと末崎さんはその魅力を語る。
“尻振りダンス”は蜜源見つけたの証
レストラン『IMURI』がある『桜坂エリア』は、福岡市の中心部でありながら緑も多い地域。

この環境はハチたちにとってどんな場所なのか?専門家に見てもらった。

「これはきれいな巣箱だ。ニホンミツバチですね、間違いなく。良い環境だと思う。この戸板が目隠しになっていて、天敵からも守られているし、直射日光もこれで自然に入らないようになっているので温度調節がしやすい」と福岡大学理学部の藍浩之教授は高く評価する。

巣箱を眺めていると藍教授が、「(ハチが)花粉持って帰ってきている。“花粉団子”」と声をあげた。

「あれ、花粉団子。巣に帰ってきたら、それを落として巣の巣房の中に入れる。それがハチにとっては重要なタンパク源になる」とのこと。
餌ですか?と尋ねると、藍教授は「餌です」と即答。更に「今の時期、たくさん花粉を集めてきているということは、まだまだ巣に幼虫がいて仲間を増やそうとしている。なるべく若い個体数を維持しながら冬の寒い時期に突入しようという準備行動」だという。
一体どれくらいの数のハチがいるのか?巣箱の中を覗いてみるとー

「巣盤が見えないくらい、ハチがいっぱいいて元気。数千匹は中に働きバチがいます。今、尻ふりダンスを踊っていました。これダンス踊っていますよね?」と藍教授が映像を見ながら末崎さんに説明する。

「尻ふりダンスを踊っているということは、どこかに蜜源があるということを仲間に知らせる行動。素晴らしい元気なミツバチのコロニー」の証だと藍教授は断言する。

ハチはどこから蜜を運んでいるのか?「ハチがどの方向に飛んでいっているかを見ると、比較的にこっちの方向が多い。たぶん南かな」と目ぼしを付けた藍教授。まずはハチが飛んでいく方向を目指して周りの環境を調べることにした。

末崎さんが「ここがどうかなと思ったんですけど…」と以前から気になっていた場所に藍教授を案内する。「蝶も蜜を集めに来ているので、他の虫たちがいるとハチもいる可能性がある」と藍教授。


巣箱からわずか100mほどの場所でハチたちが集まる花を発見した。

「巣箱に帰ってくる時にたくさん黄色い花粉団子を足につけていたハチ。たぶんこの黄色。ここがハチにとっては今の大きな主要な蜜源になっている可能性高い」藍教授は結論づけた。

「こんなに近くに蜜源があるとは思わなかった」と驚く末崎さん。希少なニホンミツバチが身近な自然の中で育む“桜坂産のハチミツ”を末崎さんは、できる限り続けていきたいと思いを新たなにしていた。
(テレビ西日本)

