銅の価格が6年あまりで3倍以上に上昇していることを背景に、福井県内では神社を狙った銅板窃盗事件が相次いでいる。被害に遭ったのはいずれも宮司が常駐しない無人の神社だった。修繕に踏み切った地区住民は、費用の問題から「元の銅葺きには戻せない」と肩を落とす。人口減少が進むなか“地域の拠り所”をどう守るかが課題となっている。
「えっ」住民が駆け付けると銅板が散らばった状態
福井市の中心部から車で約30分。山あいにある福井市中手町は、23軒の民家が並ぶ小さな集落である。そのシンボルともいえる存在が、樺八幡神社だ。立派なイチョウや杉の木々に囲まれ、地域の人々に大切に守られてきた。
事件が起きたのは9月。地域住民が集まってお祓いをする秋祭りの後だった。福井市内の解体業の男ら2人が、本殿の屋根に使われていた銅板を剥がして盗んだ疑いが持たれている。
異変に気づいた住民は、当時の様子をこう振り返る。「上を見上げたら、えっ、という状態ですよね」細かい銅板が一面に散らばっており気が付いたという。
100万円の積立金で修繕も「元通りには、できないんです」
男は逮捕されたが、盗まれた銅板の一部はすでに金属の買取業者に売却され、神社には戻ってきていない。

地区は長年積み立ててきた100万円を費用の一部にあて、葺き替え工事を始めた。ただ、屋根が元通りになるわけではない。銅板葺きは金額が非常に高くなるため、元の状態にはできないという。住民は「銅で葺くのは大変なもんで、金銭的に難しいもんですから」と語る。
県神社庁によると、県内では2026年8月から10月にかけて、4つの神社で屋根の銅板が盗まれる被害に遭った。背景にあるのは銅の価格高騰だ。
警察によれば、金属を狙った窃盗は認知件数、被害額ともに増加傾向にあり、工場や会社事務所、神社仏閣での発生が目立つという。
狙われたのは“無人神社”
県内で被害に遭った神社には共通点があった。いずれも宮司や神主が常駐していない無人の神社だった。樺八幡神社も、先代の宮司が亡くなって以降、年に2、3度の祭りやお祓いの際にのみ、離れた場所から宮司が訪れている。
さらに、屋根の状態も一因となった可能性がある。銅板屋根の寿命は一般的に30年前後とされる。銅は元々、人の手で曲げられるほど柔らかく、寿命を過ぎた屋根は接続部が劣化しているため、犯行は容易だった可能性がある。
被害に遭った神社の屋根は、葺いてから30年から40年ほどが経過していた。
犯人に言えるなら…「元に戻して欲しい」
警察は、樺八幡神社の犯行について福井市の解体業の男を10月6日に逮捕し、27日には南越前町宇津尾の八幡神社の犯行容疑で再逮捕した。
本殿と拝殿をつなぐ廊下の屋根などから、時価100万円相当の銅板を剥がして盗んだ疑いがあり、銅板はすでに売却されたという。
この神社にも宮司は常駐していなかった。男は調べに対し黙秘している。警察は一連の犯行の関連も含めて捜査している。
被害に遭った神社がある地区からは、損害賠償を求めて訴訟を起こすべきだという声もある。自治会の関係者は「犯人にもし会うことがあればね、元に戻してほしい。もうそれだけですよね」と話す。そして、こう続けた。「もう元に戻ることはないんですけどね」

長年、神社を守ってきた人々の思いを踏みにじる今回の犯行。人口減少で地域の神社の維持管理が難しくなるなか、被害をどう防ぐか、課題が突きつけられている。

