2年連続で盗難被害に遭い、もう「ナシの栽培を辞める」と肩を落としていた生産者。その後の意外な展開を取材した。
2年連続の盗難被害 手口はより巧妙に
福岡・うきは市の佐々木浩喜さん。代々、受け継がれてきた農園『三功園』で、父親の国義さんとともにコメのほか、ナシを栽培してきた。

しかし収穫を間近に控えた7月中旬。「許せないよねぇ。朝から晩まで親父がやっとって…。守りきらんかったね…」と佐々木浩喜さんが肩を落とす出来事があった。

収穫を間近に控え木々にたわわに実っていたナシ『幸水』が盗まれたのだ。その数約5000個。額にして200万円ほどにも上った。

実は佐々木さん、ナシの盗難に遭ったのは2年連続。2025年は約6500個のナシが盗まれる被害に遭っていた。

2026年は手口が巧妙になっていたという。ナシ畑の入口側の実は残ったまま。しかし、人目につきにくい奥まった場所の実が盗難にあったのだ。

2年連続で起きたナシの盗難被害。直後に佐々木さんは「いや…、もうやめます。もうナシはやめることになりました。2年連続こんなで…、もう気力なくして…。作っても泥棒のために作ってるようなもんやし…」とがっくりと肩を落とし、憔悴しきっていた。

差し伸べられた温かい励ましと支援の手
気力をなくし、ナシ栽培を諦めると話していた佐々木さん。しかし、2027年もナシ作りを続けることを決心したという。落ち込んでいた佐々木さんの気持ちをもう一度、奮い起こさせたのは-。

『佐々木さん頑張って下さい。絶対に負けないで!』
『温かく心休まるひとときを過ごせますように心より祈っております』
『応援している人がいっぱいいます』
『いつか佐々木さんの梨を食べたいです』
被害を聞きつけて差し伸べられたたくさんの人からの温かい励ましと支援の手だった。

「知らない人、全国の皆さんからお便り頂いたりメッセージ頂いたりして、助けて頂いて、もうほんと心折れてやめるつもりだったんですけど…、必ず来年もナシがお届けできるように頑張ろうという気持ちになりました」(佐々木浩喜さん)

初めての経験 “対面販売”
9月19日、ナシを手にした佐々木さんが向かったのは、福岡・久留米市のデパート『岩田屋』。「催事でナシを1個ずつ売らせて頂きます」と話す佐々木さん。盗難被害をニュースで知った岩田屋三越久留米店の今村隆史店長が、ナシを販売する特別イベントを開いてくれたという。

「大事に、1年かけて作ってるナシを盗むっていう…、2年連続と聞いた時には、もうほんと悲しかったですね」(岩田屋久留米店 今村隆史 店長)

実は佐々木さんと店長は高校時代に一緒に甲子園を目指した仲。被害を聞いていてもたってもいられないと動いてくれたのだ。

販売するのは『幸水』のあとに収穫期が来る品種『新興』。一般的に幸水より糖度が高く、1個600円で販売された。売れ行きは上々だ。

「テレビは見てましたけど、被害が大変だったということでですね。やっぱり頑張ってほしいので、1つでもと思って買いました」(久留米市内からの女性客)

「元気に販売しているのを見ると、立ち直ってきたのかなと思います」(同級生の男性客)

佐々木さんが用意したのは、2日間で約400個。それぞれ1時間ほどで完売した。

大切に育てたナシを消費者に初めて対面で販売した佐々木さん。「消費者の方の声で『頑張ってね』『大変だったね』とお言葉をかけて、全く見知らぬ方からもそう言われるので、嬉しいです」と励ましの声が一番、嬉しかったと話す。

非正規ルートで出回る多くの盗難物
一方、ナシを盗んだ犯人はいまだ見つかっていない。
捜査関係者によると果樹園は山奥の広大な敷地にあることが多く、人通りや防犯カメラが少ないことから検挙に繋げるのが難しいという。また盗難物の多くは非正規のルートで窃盗犯が売っていることが多い。

福岡県の農林水産部によると生産元が明記されていないものは買わないなど、窃盗犯に稼がせないようにすることが、消費者である私たちにできる対策だという。
そうしたなか、2027年は盗難の被害に遭わないようにと農園にも支援の手が差し伸べられていた。それがバリケード。農園へと続く道に車が入れないようにするものだ。建設会社を経営する野球部の後輩が設置してくれた。

更に、害獣対策用より少し高い位置に赤外線センサーを設置して、対策を強化することも検討している。

「いろんな対策の方法を他の農園にも提案できたらいいなと思って、ここから発信できたらいいと思います」と話す佐々木さん。

「来年、もっとパワーアップした美味しいナシを作るのはもちろんだけど、絶対盗られない農園に作り上げたいと思います。親父と2人で。頑張ります」と2027年に向け抱負を語った。
(テレビ西日本)

