全国的にシカの増加が問題となっている。山間部だけでなく、都市部の意外な場所にもシカの群れが住み着いていることがわかった。今回撮影に成功したその場所は、JR沼津駅から1.5kmほどしか離れていない河川敷だった。
シカの大群「ぞっとするような光景」
2026年8月、南アルプスの長野県側を飛行するヘリコプターから衝撃的な映像が撮影された。上空から撮影した人は最初山肌の一部が茶色っぽく見えたという。そしてよく目を凝らすとシカの大群だった。「ぞっとするような光景だった」と振り返った。
沼津駅に近い河川敷にシカの群れ

山奥で急増するシカ。山間部だけない。静岡県沼津市を流れる狩野川。市の中心部も流れるこの川の河川敷にシカの群れが住み着いていることがわかった。この場所はJR沼津駅から直線距離で1.5kmしか離れていない。
河川敷には記者の背丈を超える高い草が茂っていた。河川敷を歩いてみると、けもの道ができているのがわかる。しかも枝分かれして四方に伸びていた。そして、河川敷の砂の上には、シカとみられる2本の蹄の跡が見つかった。周辺にも多くの蹄の跡があり、多くのシカがここを通っていると推測される。

河川敷にシカの姿 光る2つの目
撮影日の夜、取材班は河川敷の草むらの中で、シカの姿の撮影に成功した。暗闇の中で光る二つの目。よく見ると、大きな角をもったオスのシカが動いていた。奥の方にも光る目を確認でき、少なくとも2頭以上いることがわかる。じっと私たちを見つめ、こちらを警戒している様子がうかがえる。
鳴き声も聞こえる。秋は発情期で、オスは鳴きながらメスにアピールしている。オスのいる先にはメスで構成される群れがいる可能性が高いという。
シカは「うじゃうじゃいる」映ったシカの数倍もしくは数十倍
静岡県の職員で、シカ対策の専門家である大橋正孝さん(県森林林業研究センター)が、センサーカメラで捉えた画像にはシカの群れが映っていた。大橋さんによると、シカたちは「“うじゃうじゃ”いる」という。映っているシカの数倍、もしくは数十倍の数が生息している可能性があると説明した。
カメラを設置したのは、沼津市・清水町・伊豆の国市の3カ所。2025年の7月以降、毎月のようにカメラに姿が捉えられた。10頭ほどの群れがのんびり草を食んでおり、のどかに見えるが、ここは街中なのだ。

静岡県伊豆の国市で撮影されたシカには、出産間もない子ジカと母ジカが映っていた。河川敷が繁殖という動物にとって生活に重要な場所となっていることがわかる。しかし、周辺の住民はあまり気づいておらず、「シカが生息していることを知ってびっくりした」と驚きの声をあげた。
山中でシカの捕獲が進み河川敷へ
なぜ河川敷にシカの群れが生息しているのか。大橋正孝さんは、「山の中はシカの捕獲が進んできたため」と説明する。その上、河川敷はエサがあって、隠れる草やぶもあって、住宅に近いことから捕獲も行われていない。シカにとっていい条件がそろっていたことが、シカの生息につながったと考えている。山より川にいた方が安全だと学習したのかもしれない。

しかし、深刻なのは河川敷周辺の農作物への被害だ。川の周辺に田んぼがある地域だと、シカは夜になると、堤防を越えて群れで田んぼに出没していた。柔らかい稲を食べるためだ。普段は河川敷の草を食べ、時々もっとおいしい稲を食べに足を伸ばす。河川敷はそういう意味でも食べ物に恵まれた場所なのだ。
「捕獲をすべきでないと判断」対策はあるのか?河川敷のシカ
沼津市は報道を受けて、今回シカが撮影された付近の除草やしゅんせつ作業を国土交通省沼津河川国道事務所に要望していくことを明らかにした。草がなくなればシカが住みにくくなり、山に戻るかもしれない。
農業被害が出ている自治体では、川沿いの田んぼに防鹿柵を設置する動きも出ている。
しかし「街中で猟銃を使った捕獲はできない」と、沼津市の農林農地課の担当者は強調する。これまでのところ人的被害はない。最近よく耳にする「緊急銃猟」は人に危害を与えるクマやイノシシを対象としており、シカは対象ではない。もし猟をしてシカを刺激してしまい市街地に逃げ込んだら、逆に人的被害が出かねない。現時点で「捕獲をすべきでないと判断している」という。
しかし、シカが増えるスピードは想像以上だ。通常メスは毎年出産する。その子供もメスなら2歳からもう毎年出産するようになる。毎年1.3倍に増えていく計算だ。
今後、市街地に出没するようになれば、交通事故につながるおそれもある。特に雄のシカは大きな角をもっていて危険性も増す。大橋さんは実態を明らかにした上で、河川敷のシカ対策について関係機関に協力を呼びかけていく予定だ。
(テレビ静岡)

