福井県内でスポーツスクールを経営する男(34)が、7歳から12歳の男子小学生17人にわいせつな行為を行ったとして不同意性交等の罪に問われている裁判。第16回公判では、犯罪心理学の専門家が、被告が「監督と選手」という立場を巧みに利用し、児童らを精神的にコントロールする「性的グルーミング」があったと分析。被害児童の保護者は「一生刑務所にいてほしい」と怒りをあらわにした。
親とも関係を構築…自宅に招き卑劣な行為
起訴状によると、被告の男は2017年から2023年にかけて、福井市内の自宅や県内の研修施設などで、当時7歳から12歳の男子小学生17人に対して複数回わいせつな行為を行い、その様子をスマートフォンで動画に撮影・保存したとされている。

男はサッカースクールの経営者であり、強化チームの監督も務めていた。被害に遭った児童らは同チームに所属する選手たちだった。
9月28日に行われた第16回公判の証人尋問には、被害児童の保護者と、犯罪心理学の専門家が出廷した。
被害児童Bの母親は、検察官の質問に答える形で当時の状況を証言した。Bは小1の夏からスクールに加入し、男から誘われる形で強化チームに移籍。親を含めたプライベートでの交流も深まり、男を自宅での夕飯やバーベキューに招くこともあったという。
Bは男からプレゼントをもらうこともあり、小学2年生頃からは月に1回程度、男の自宅に泊まりに行くようになっていた。

男の逮捕をネットニュースで知った母親は、息子に「何かされなかった?」と尋ねた。最初は「何もない」と答えたBだったが、母親が「嘘をつくと良くない、正直に話して」と伝えると、ようやく口を開いた。男の陰部をなめたり、自分の陰部をなめられたこともあると明かしたのだ。
母親は法廷で被告に向けてこう述べた。
「許せないので、私たちの前に今後現れてほしくない。一生刑務所にいてほしい」
専門家「性的グルーミング」指摘
犯罪心理学を専門とする追手門学院大学の櫻井鼓教授は、20年近く警察の心理職員として非行少年や被害者支援に携わってきた。2024年2月には、捜査機関の依頼を受けて被害児童らの心理鑑定を実施した。
鑑定の結論は「児童らは性的グルーミングをされていた」というものだった。性的グルーミングとは、加害者がわいせつ目的を隠して若年者を手なずけるマインドコントロールの一種だ。被害として認識されにくく、被害者が加害者をかばうケースもあるという。
櫻井教授は性的グルーミングの5段階として①対象者を選ぶ②隔離する③信頼関係を構築する④性的行為に徐々に慣れさせる(脱感作)⑤秘密を保持させる、を挙げ、今回の事件にはこれらの要素が当てはまると指摘した。
「指導者」と「選手」という関係が、この5段階を完成させる土台となっていたと教授は分析した。
被害児童は強化チームの選手に限定されていて、家への宿泊や遠征時のホテル宿泊で周囲の大人から隔離。親とも信頼関係を築くことで、保護者が泊まることを止めない状況をつくり出していた。
「試合に出してくれなくなる」心を縛られた子供たち
児童らの心理をさらに複雑にしていたのが、「恐怖と恩恵」の関係だった。サッカーの指導では厳しい言葉や身体的な接触もあった一方、被告からお土産やプレゼントを受け取ることもあったといい、これにより児童の中に「何かお返しをしなきゃ」という心理が生まれやすくなっていたと櫻井教授は指摘。

行為を嫌がると食事や入浴をさせてもらえないこともあったといい「一切しゃべってくれなくなると思った」「試合に出してくれなくなる」「チームを辞めさせられると思った」と話す児童もいた。
司法面接の記録には、児童が被告に「とても大好き。厳しいこともすべて愛情だと思っている」「お兄ちゃんの体は僕のもの、誰にも渡さない」「ラブラブしたい」などとメッセージや手紙を送っていた事実も残されていた。男を「恩師」と呼んだ児童や、男が再びスクールを開いたら「そこでサッカーをしたい」と語った児童もいたという。
こうした発言は、いかに深くコントロールが及んでいたかを示している。
次回公判は12月3日、被告人質問へ
約2時間にわたった第16回公判の間、男は終始表情を変えずに話を聞いていた。次回の公判は12月3日に予定されており、被告人質問が行われる見通しだ。
アメリカの研究では、子供の性被害の3〜4割は性的グルーミングを受けているというデータがあると、櫻井教授は述べた。
スポーツ指導の場において、指導者と子供の間に築かれる信頼関係が悪用された今回の事件。果たして男は、法廷で何を語るのだろうか。

