福井市内の住宅街で、松の木の根元に世界最大のスズメバチ「オオスズメバチ」の巣を構えていた。その場所は、小学生たちが集団登校の集合場所とする場所。地元の人が依頼し駆除業者が30分にわたって格闘した末に女王蜂を捕獲。専門家は「山の生態系の変化が、ハチを人里へと押し出している」と指摘する。
「よく今まで何ともなかったな」身近に潜むスズメバチの脅威
この日、害虫駆除業者の神門正明さんが向かったのは、福井市内の住宅街。この道6年の神門さんの元には、1日2件ほどハチの巣の駆除があるという。
今回の依頼は、住宅街にある松の木にできたスズメバチの巣の駆除。案内された木の根元を確認すると、体長3〜4cmのオオスズメバチが飛び交っていた。
オオスズメバチは世界最大のスズメバチで毒性が極めて強く、気性が荒いことで知られる。
女王蜂は体長5cmに達することもある。樹木のウロや土中の空洞に巣を作る習性を持つ。
駆除を依頼した地元住民は「小学生の集団登校の集合場所になっているんです。保護者から、大きいハチがいるという話を聞いて」と語る。「よく今まで何ともなかったなって感じですよね」と巣を見つめる。
カメラマンも防護服を着用して作業に同行。神門さんたちは、巣穴に向かって一気に殺虫スプレーを大量噴射し、すぐさまタオルで穴を覆った。
別のスタッフは、巣に戻ってくるハチを粘着力のあるシートで次々に捕獲していった。
神門さんによると、巣の中には200匹以上の働き蜂が生活していて、半径5km圏内で虫などを狩りに飛び回っているという。
この日、巣穴から取り出した蜂は100匹以上。30分以上の格闘の末、ついに女王蜂を捕獲した。「女王蜂が捕まった時点で、巣はこれ以上進展もしないし、再生も不可能なんで」と神門さん。
神門さんが作業した木の幹は空洞化し、根元から上に向かって幹の中に50cmほどの巣が形成されていた。すべてをかき出すことは難しいと判断し、この日は殺虫作用のあるシートを巣穴に入れて作業を終えた。
エサを追って人里に…山の生態系の変化が背景に
通常は山間で生活するオオスズメバチだが、近年は住宅街でも巣作りをするケースが増えているという。
神門さんは「キイロスズメバチやコガタスズメバチといった小型のスズメバチが都市部に降りてきている。それを食べるオオスズメバチも、人間のそばに行けば何らかの食べ物が得られると判断して降りて来ているのでは」と話す。
そこで、専門家に話を聞くことにした。
福井市自然史博物館の梅村信哉学芸員は「住宅街に特に増えているという話は聞いていないが、餌となる樹液や花の蜜、木のウロなど巣が作れる環境が整えば、住宅街でも暮らすことができる」と説明する。

さらに、山の生態系の変化が関係しているとも指摘する。山中でシカが増えたことにより、花をつける植物などが食い荒らされ減少。その結果、山では住みにくくなったハチが人里へと生息域を広げているとも考えられると梅村学芸員は警鐘を鳴らす。
刺されないための対策として、梅村学芸員は香水や柔軟剤、整髪料など人工的な匂いの成分に注意するよう呼び掛ける。大声を出さない、黒い服を避けることも有効とされる。
それでもハチに遭遇した場合は、巣に近づかず、姿勢を低くして速やかにその場を離れること。万が一刺されてしまったときは、大量の流水で絞るように洗い流すことが重要だ。

クマの出没と同様に、ハチもまた人里へと生息域を拡大しつつある可能性がある。日常に潜むリスクとして意識し、対応を考えておこう。

