今年5月に凍結した、敦賀市の金ヶ崎オーベルジュ計画。福井県、敦賀市、敦賀商工会議所、東京のゼネコンなどがそろって4年もかけて進めてきた、この一大プロジェクトが、なぜ凍結したのか。そもそも金ヶ崎にオーベルジュは必要だったのか、独自取材で探りました。
敦賀市の港に近い金ヶ崎エリアは、ウォーキングやペットの散歩をする人の姿が多くみられ、市民の憩いの場となっています。
3カ月前の5月28日、敦賀まちづくり協議会で奥井隆会頭は「一旦、ここで立ち止まる」と発言。金ヶ崎緑地で計画されていた富裕層向け宿泊機能付きレストラン=オーベルジュ計画が凍結されました。
民間事業者が建設から完成後の運営までを担う「民設民営」のスキームで県と敦賀市、敦賀商工会議所が、東京のゼネコン・前田建設工業などと2022年から計画を進めてきたオーベルジュ計画。マルシェなどのにぎわい施設も整備し、嶺南を代表する観光拠点を目指すプロジェクトでした。
しかし、事業を担う前田建設工業が「建設費や人件費高騰に伴い、民間事業として採算を取ることが難しい」と判断。今年5月にプロジェクトの凍結が正式に発表されました。
関係者は―
「建設費は倍々ゲームで上がっていった」
「建設費を抑えられれば、稼働率が低くても良かったが、最終的には投資回収が難しいと判断した」
福井テレビは、情報公開請求で2024年2月作成の市の中期財政計画を入手。この時点で市は、事業費を45億円と見込んでいました。
しかし今年5月、前田建設工業が示した最終的な事業費は75億円と、わずか2年ほどの間に30億円も上振れしていたことが分かります。
前田建設工業は施設を簡素化するなど経費を削減し、30億円に抑えるプランまで試算しました。さらに当初は「民設民営」とうたっていた計画が、行政からの整備費の「全額補助」を前提とする内容へと変わり、それでも「収益は限定的」と結論付けられたのです。
協定の締結から4年あまり。検討を重ねていたとはいえ、なぜ結論が出るまで時間がかかったのか。そして、そもそも計画の見通しに甘さはなかったのか。
その背景について、ある関係者は―
「県、市、商工会議所、前田建設工業と意思決定者が多かった」
「早い段階でこのプロジェクトは実現が難しいという人もいた」
「規模が大きい計画だけに、逆に慎重に判断して良かった」
実際に、このプロジェクトを市民代表の立場で見てきた市議会議員は―
「市から、なかなか情報が出てこないところを見ると、難航している雰囲気は伝わってきていた。民間も行政の補助金を引き出そうと駆け引きが続いていたのでは」
「プロジェクトが頓挫したことは残念だが、公的負担の増大はしないという市の判断は評価する」
当初からこの計画に疑問を呈していた北條正議員は「民設民営はある意味ではいいと思うが、今回は図面だけしか共有されず、お金も含めてどういう出し入れをしているか不明瞭な点が多かった。そして期間が長すぎて、本当に来るのかという市民からの疑問の声が多くあった」と話します。
さらに浮かび上がるのは、もう一つの要因です。
前田建設工業が事業としての成立が困難だと関係者に報告したのは今年3月31日。この日は、オーベルジュ事業を県の立場から推進してきた中村保博前副知事が自らへのハラスメントの疑惑の責任を取って退任した日でした。
そもそも、計画地の金ヶ崎緑地は県有地です。このプロジェクトは、金ケ崎エリアへの飲食・物販施設の誘致を模索していた敦賀市に県が声をかけて進められていたのです。
つまり、旗振り役だった中村副知事の退任も、一つの節目になったとの見方もあります。
ある関係者は「民間からの報告は、旗振り役だった前副知事が退任するこのタイミングしかなかった」と話します。
プロジェクトが凍結されたいま、改めて問われているのは、そもそも金ヶ崎にオーベルジュは必要だったのか、という疑問。
6月の市議会特別委員会・まちづくり特別委員会で大石修平議員は「緑地が広く残っていて、その姿を好む人もたくさんいる。いろんな人の意見を聞いてほしい」と発言していました。
実際に市民は―
「計画を聞いた時から現実味がないなとは思っていた」
「それだけ観光客や利用客が期待できたかな?自然そのまま残した方がいい気がする」
「敦賀市民には必要ないかもしれないけど、新幹線が開業し観光客が来た時に一つの目玉として、私はすごく楽しみだった」
こうした市民の声に対して米澤光治市長は「以前は観光客“全振り”みたいに考えていたが、多少バランスを考えながら市民の憩いの場としても、観光客などいろんな人に来てもらえる場所としても、どういうやり方がいいかこれから改めて協議したい」としました。
市は今年度、金ヶ崎での計画を念頭に、オーベルジュ誘致に対して最大10億円を補助する制度を設けていました。
計画がとん挫したことから、市は改めてオーベルジュの誘致を進めていますが、第1回の受付期限である8月末までに申し込みはなく、2回目の募集を検討しています。
敦賀市には今回の苦い経験を今後のまちづくりの教訓とできるのかが、問われています。
