北陸新幹線が福井県に延伸した2024年3月16日、福井の空をブルーインパルスが飛んだ。そのうちの1機に、福井県人として初めてブルーインパルス隊員となった総括班長・青木明徳さん(51歳・坂井市出身)が乗っていた。30年近く戦闘機パイロットとして日本の空を守り続けた青木さんにとって、この故郷での飛行は「一番の思い出」と語る。福井の身近な疑問を解き明かし驚きを見出すローカル情報バラエティ番組「なんだー?ワンダー!」で、本拠地である宮城県東松島市の航空自衛隊松島基地に密着し、その活躍の全貌に迫った。

広報への志願理由は…「福井県民の自衛官、少ないしな」

ブルーインパルスは1960年、航空自衛隊の広報のために誕生した展示飛行チーム。「サンライズ」「スタークロス」「フェニックス・ループ」など20種類以上の演目で、全国各地の航空祭や記念行事の空を彩る。

6基で演目を披露するブルーインパルス
6基で演目を披露するブルーインパルス
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その本拠地、松島基地がある宮城県東松島市は、街全体が“ブルーインパルス一色”だ。

ポストまでブルーインパルス仕様!
ポストまでブルーインパルス仕様!

ポストまでもが赤ではなくブルーに塗られ、地域を挙げて盛り上げている。

その隊員らを支える総括班長が、青木明徳さんだ。

ブルーインパルス総括班長の青木明徳さん(福井県出身)
ブルーインパルス総括班長の青木明徳さん(福井県出身)

青木さんが航空自衛隊を志したのは、小学生の頃に小松基地の航空祭で戦闘機を見たのがきっかけだった。

小学生の頃に戦闘機の魅力にとりつかれた
小学生の頃に戦闘機の魅力にとりつかれた

「映画の初代トップガンの世代で、あの時に飛んでいた戦闘機がとてもかっこよかった」と振り返る。1994年に入隊し、F-4戦闘機の操縦者として約30年にわたって日本の空を守り続けてきた。

戦闘機の操縦者を引退した後、青木さんはブルーインパルスへの配属を自ら希望した。その動機は「福井県民の自衛官が少ないし…増えたらいいなと。表に出るような仕事をして、福井の人に認知してもらえたら嬉しいなと思った」と語る。

操縦かんを握る青木さん
操縦かんを握る青木さん

そして2024年3月、福井県人として初のブルーインパルスの隊員となった。

「7番機」が担う“縁の下”の役割

ブルーインパルスの展示飛行は6機編成で行われ、10人の操縦者が所属する。1番機から6番機まで担当が決まっており、それぞれヘルメットに番機番号が記されている。

ヘルメットには各番号が記されている
ヘルメットには各番号が記されている

総括班長の青木さんが担当するのは通称「7番機」だ。

「1から6までしかないんだけど、総括班長という立ち位置で、7番を貼ってもらって」と青木さん。その任務は展示飛行の統制にとどまらず、安全管理、隊員育成、チームの運営・調整まで多岐にわたる。

フライト以外の任務を担う総括班長
フライト以外の任務を担う総括班長

「展示飛行のための訓練を操縦者と整備員がやっているので、そのフライトや整備作業が淡々とできるように維持・管理をしている」

スムーズな整備作業ができるよう配慮
スムーズな整備作業ができるよう配慮

つまり、操縦以外の任務を担当し、華やかな飛行を陰で支える“縁の下の力持ち”なのだ。

訓練前に空の状態をチェック…総括班長の重要任務

展示飛行を終えた隊員らの休み明け、訓練再開の日に密着した。

休暇明けは全員で滑走路を点検する
休暇明けは全員で滑走路を点検する

午前6時30分、隊員たちが一列になって滑走路に向かう道を歩き始めた。「ゴミが落ちているとエンジンに入って飛行機が壊れてしまうので」と青木さん。

ブルーインパルス隊員のスケジュール
ブルーインパルス隊員のスケジュール

小さな異物でも、吸い込めば重大事故につながる。そのため、全員で通路を点検するのが休み明けのルーティンだ。

格納庫から機体が出される
格納庫から機体が出される

その後、格納庫からブルーインパルスの機体が続々と引き出され、整備員が入念にチェックを行う。

訓練前の天候偵察へ
訓練前の天候偵察へ

そして、訓練飛行前に青木さんに託された重要な任務が「天候偵察」だ。先行して飛び、雲の高さや視程(見通し)、タービュランス=気流の乱れがないかを確認する。

30年の経験で空の状況を読み解く
30年の経験で空の状況を読み解く

この日は1万フィート以下に雲がない一方、3000フィート以下に気流の乱れがあることを確認し、「要注意」と伝達した。データだけでは分からない空の状況を、30年の経験で読み解く判断力がチームを守っている。

取材した日は気象条件が合わず飛行中止に
取材した日は気象条件が合わず飛行中止に

そしてこの日は、朝のミーティングで飛行中止が決まった。「視界が悪い状態。雲の高さも着陸の重要な要素で、その両方がきょうは悪い」と青木さん。最優先は安全であり、飛ばない判断もまた大切な任務だ。

オリジナルサインを作ったのは同級生

飛行中止が決まった後、青木さんは机に向かってサインを書き始めた。各地で展示飛行する際に配布する広報用冊子に、隊員それぞれのオリジナルサインを書き込むのだ。

隊員らのサインを書き込んだ広報誌
隊員らのサインを書き込んだ広報誌

「自分で考えられなくて、中学校のときに一番仲が良かった同級生に考えてもらった」というサインを「50歳のおっさんがね…」と笑いながらも、心を込めて書いていく。

「ばってん」さんのサイン
「ばってん」さんのサイン

ちなみに青木さんのタックネームは「ばってん」。サインと一緒に書き込む。

正午になると、隊員たちは1番機・飛行隊長を先頭に自転車で食堂へ移動した。

そろって昼食を食べる隊員ら
そろって昼食を食べる隊員ら

しかし青木さんの姿はない。「仕事が立て込んで食べに行けないことが多い。朝しっかり食べて1日のエネルギーを補充している」といい、一人デスクに向かっていた。年間20〜30回に及ぶ展示飛行を支えるため、飛ばない日でも業務は山積みだ。

そんな多忙を極める青木さんの、特別な瞬間に取材班が立ち会うことができた。

飛行時間3000時間、無事故操縦で表彰
飛行時間3000時間、無事故操縦で表彰

2020年2月以来、飛行時間3000時間にわたり無事故操縦を続けた功績を表彰されたのだ。

チームに深い信頼
チームに深い信頼

「無事故は、整備員やそれ以外の人たちの協力や支援を受けて成り立つもの。僕だけの力でもらえるものじゃないので、代表してもらっていると噛み締めている」パイロット歴約30年の青木さんの言葉には、チームへの深い信頼がにじむ。

故郷の空を飛んだ時「鳥肌と涙が…」

青木さんに思い出のフライトを聞いた。

「やっぱり、北陸新幹線開業の時。福井を飛んで…めちゃくちゃ感動しましたね」

北陸新幹線開通記念でブルーインパルスが福井の上空に…青木さんは1番機に搭乗していた
北陸新幹線開通記念でブルーインパルスが福井の上空に…青木さんは1番機に搭乗していた

初めて携わった展示飛行が北陸新幹線の開通記念だったという青木さん。1番機の後席に乗り、GPSでルートを確認しながら、眼下に広がる故郷の景色に熱いものがこみ上げた。

ブルーインパルスの機体を見上げる県民ら
ブルーインパルスの機体を見上げる県民ら

「丸岡城だ、丸中(丸岡中学)だ!北高(北陸高校)だと鳥肌と涙が出ましたね」地上に広がる人波を上から眺め「こんなに人が来てくれた…良かったな」と胸が熱くなったという。

ブルーインパルスの任期は3年
ブルーインパルスの任期は3年

ブルーインパルスの任期は3年。青木さんは今年が最終年だ。「戦闘機に乗って国のために、24時間365日やっている人がいることを認知してもらえるだけでも嬉しい」と語る。

福井への愛を語る青木さん
福井への愛を語る青木さん

最後にこう締めくくった。「離れて分かるいいとこ、福井。俺は大好き」

輪島分屯基地の記念行事で演舞
輪島分屯基地の記念行事で演舞

この取材が終わった後、ブルーインパルスは石川県・輪島の空を飛んだ。能登半島地震の被災地上空を飛ぶのは2年ぶりのことだった。今日もどこかで、青木さんたちブルーインパルスは空を見上げる人たちに笑顔と希望を届けている。

福井テレビ
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