9月1日の「防災の日」、大阪府全域では南海トラフ巨大地震を想定した訓練が行われました。およそ1800の団体が参加する中、地震発生のアラームとともに人々が机の下に身を隠しました。
しかし「災害大国日本」を今夏も脅かしているのは地震だけではありません。
8月、千葉や石川・富山などで相次いで発生した「線状降水帯」は、大きな被害をもたらしました。
■予測できなかった気象庁 現状の的中率は半日前15%・直前30%
ことしから線状降水帯の発生の「直前予測」を気象庁が発信することになりましたが…。
【気象庁予報課 永山隆治さん】「ある程度危ない気象状況であるということはお伝えできていましたけれども、線状降水帯の予測は事前に予測はできませんでした」
8月の石川・富山では複数回にわたり線状降水帯が発生。しかし気象庁は未明に発生した最初のものについて、危険が迫っていることを呼びかけられませんでした。
富山・氷見市の住民は「あっという間。2時間ぐらいでここまで来た。床上まで、10センチあるかないか」と語りました。
8月13日の千葉豪雨でも同様の事態が起きていました。
【気象庁予報課 永山隆治さん】「半日前予測の方は、現在的中率が大体15%ぐらい。そして直前予測の方は大体30%ぐらい」
数字が示すとおり精度に大きな課題が残っているのです。
■日本の天気予報の中枢 スーパーコンピュータ
取材班は東京・清瀬市にある気象庁の施設を訪れました。
【記者リポート】「こちらにあるのが気象庁のスーパーコンピュータです。ずらっと並んでいて、なんとおよそ500台分あるということです」
おととし3月から運用を開始したこのスーパーコンピュータは、1秒間に6740兆回もの計算が可能。全国から集められた気象データをもとに大気の動きを予想し、さらに線状降水帯予測専用のスパコンも導入してより詳細なシミュレーションを行っています。
そのデータを活用しているのが…。
【気象庁予報課 永山隆治さん】「スーパーコンピュータの予測などを用いて、日々の天気予報、線状降水帯の予報なども行っています」
予報官が24時間体制で予報を作成しています。
■なぜ予測は難しいのか メカニズムに未解明の部分
それでも的中率が上がらないのはなぜでしょうか。
【気象庁予報課 永山隆治さん】「線状降水帯はまだその発生のメカニズム、どのように空気が流れているかということなど、未解明の部分が非常に多く残っている。例えば1年たって数%的中率が上がるということは、なかなか難しいところですね」
■観測強化へ 船舶・航空機・民間技術を総動員
精度を上げるため気象庁気象研究所はこの夏から観測強化の取り組みを始めました。
【気象庁気象研究所 酒井哲室長】「今回、航空機であったり、あと船舶ですね。そういう測器を導入して観測を強化しています」
これまで捉えにくかった海上の水蒸気の量や分布を把握するために、海上の大気にレーザー光を照射するしてデータを収集する機器を観測船に搭載。
【気象庁気象研究所 酒井哲室長】「連続的に24時間観測できるという点で、予測に役立つような観測データが取れるんではないかと期待しています」
■民間企業の技術も重要な役割
この観測では民間企業の技術も重要な役割を担っています。
尼崎市に研究所を持つ三菱電機は、気象庁の観測船にも搭載されている「水蒸気・風計測ライダー」を開発しました。
【三菱電機 柳澤隆行主席技師長】「ここからレーザーが真上に打たれまして、水蒸気と風を同時に測定する装置になります」
世界最高出力のレーザー光を出せる小型の装置で、遠隔操作も可能です。
【三菱電機 柳澤隆行主席技師長】「災害が起きるようなところに設置をして、その予測の精度を高めていくことに貢献していきたい」
さらにNTTも、観測器を搭載した気球を飛ばす独自の実証実験をおととしから開始。狙ったポイントでGPS機能付きの機器を雲の中に投下し、大気の状態を観測することができます。
気象庁は3年後の2029年には“市町村単位”での線状降水帯「半日前予測」の発表を目指しています。
■“予測”を超えた研究 気象制御で降雨を抑止する
予測精度の向上と並行して進められている研究があります。
取材班が向かったのは京都大学防災研究所。
竹見哲也教授が取り組むのは「気象制御」、すなわち気象現象を人工的に操作して災害を防ぐ研究です。今、国が主導する技術開発プロジェクトの一つです。
【京都大学防災研究所 竹見哲也教授】「積乱雲をどうやって制御しようか。熱のたまり・熱がこもっている状況を解消しようということですね。都市の地面から大気・空気に渡る熱の量を少しでも減らす。それによって積乱雲の発達する根っこを弱めてあげようということ」
大型の扇風機をビルに設置するなどして都市部からの熱放出量を削減することで、都市型の豪雨を10%ほど抑止できる可能性があるといいます。
【京都大学防災研究所 竹見哲也教授】「少しでも低減させることによって、我々の生活空間が守られる。それぐらいのレベルまで抑えることができる」
■気象予報士が線状降水帯の発生の仕組み解説
片平敦気象予報士が線状降水帯と、私たちにできる対策について解説したまし。
【片平敦気象予報士】「線状降水帯とは積乱雲(入道雲)の行列」
1つの積乱雲が発生して終わる通常の夕立とは異なり、次々と積乱雲が発生し同じ場所にかかり続けることで、外から見ると線のように帯状に発達した雨雲の列ができます。これが集中豪雨をもたらすのです。
【片平敦気象予報士】「未明に発生して、朝起きたら被害が拡大しているケースも多いが、夜間の大雨は“不意打ち”になりやすく被害が大きくなりがちなため、早めの予測と対策が特に重要」
■ 「空振りでも備えることが大切」
予測精度がまだ低い中で私たちに何ができるのでしょうか。
【片平敦気象予報士】「線状降水帯の予測ができるかできないかの2択じゃなくて、大雨への備えというものは、ほかの情報も使っていただいて、皆さんに的確に活用していただきたい」
例えば線状降水帯の予測が外れた場合でも、レベル4の大雨危険警報など別の警報・情報が発表されていることが多いといいます。
複数の情報源を組み合わせて早め早めに行動することが、命を守る上での基本姿勢だと強調しました。
(関西テレビ「newsランナー」2026年9月1日放送)
