和歌山市で、持病のてんかんによる発作で車を暴走させ3人を死傷させた、危険運転致死傷の罪に問われた女の裁判で、検察側は懲役8年を求刑しました。
娘を亡くした父は法廷に立ち、「『絶対に不幸にしない。幸せな一生を送らせる』という、生まれてきてくれた時の誓いを守れずにまだ、胸が苦しめられます」と訴えました。
裁判では暴走につながった意識障害が、持病のてんかんによるものかどうかが最大の争点になっていて、弁護側は「意識障害は狭心症によるもの」などとして、やむを得ない事故だったと無罪を主張しています。
■「『幸せな一生を』と誓ったことがさせてあげられず申し訳ない」
5年前、事故で娘を失った竹田正義さん。その悲しみをこう語りました。
【竹田正義さん】「出産にも私、立ち会ったんですよね。その時にはもう本当に幸せで。『絶対に不幸にしない。幸せな一生を送らせる』と本当に心に誓ったことが…させてあげられないことが申し訳ない」
娘の汐里さん(当時22歳)は2021年、ミニバイクに乗ってアルバイトに向かっていたところ、和歌山市の紀の川大橋近くの交差点で、対向車線から飛び出してきた車に衝突され、頭を強く打って死亡しました。
■被告は一度不起訴になるも再捜査の結果“危険運転”で起訴
車を運転していた西馬淳子被告(56)は、持病である「てんかん」の発作で意識を失う恐れがある状態で運転した疑いで逮捕されましたが、検察は「起訴できるだけの証拠がなかった」として不起訴に。
その後、遺族が検察審査会に不起訴不当を申し立て、再捜査の結果、危険運転致死傷の罪で起訴されました。
裁判では、「事故当時の意識障害がてんかんによるものか」が最大の争点になっていて、西馬被告は「てんかんによるものではない」と否認し、無罪を主張しています。
【汐里さんの父・竹田正義さん】「(被告は)違う違う、何も認めないと。堂々とはっきりと自信をもって述べる被告に対しては何も望むことはありませんし、私ができることは9月1日に私の気持ちを被告に伝えることが一番の今の希望です」
■命日に考えた「意見陳述」娘の無念を胸に
汐里さんの命日である7月15日、父・正義さんは次の裁判での意見陳述に向けて準備をしていました。
【汐里さんの父・竹田正義さん】「いろんなときの写真を見ながらとか、そのときの気持ちを文章に書いては消し、書いては消し」
大切に育ててきた汐里さんへの思いを込めました。
「何事にも一生懸命取り組む自慢の娘でした。斎場の火葬場では私が右手の親指で点火スイッチを押しました。生まれてきてくれた時の誓いを守れずにまだ、胸が苦しめられます」(意見陳述の内容より)
■「顔面傷だらけ、手に触れるとまだぬくもりがあり…」
きょう=9月1日に開かれた判決前最後の裁判で、正義さんは被告を前に意見を述べました。
【汐里さんの父・竹田正義さん(意見陳述より)】「子供のころは小柄でしたが、天真爛漫で楽しく遊ぶ姿を見た周囲の皆から『かわいい、かわいい』と愛されて育ちました」
また事故当日のことを「顔面傷だらけ、手に触れるとまだぬくもりがあり、開いたままの瞳からは『私、どうなったの?』と無念をいっぱい訴えているようでした。その顔も私の瞼に焼き付いています。消えません」と振り返りました。
そして被告に対して「自分の主張に無理があることは(被告)本人が一番よく分かっていると思います。重い実刑判決を望みます」と訴えかけました。
西馬被告は、意見陳述の間、声を上げて泣きながら聞いていました。
■「身勝手な犯行」と検察側「懲役8年」を求刑
検察側は、証人尋問での医師の証言などから「意識障害はてんかんによるもの」で、被告と夫がLINEでてんかんの薬を飲んだかどうかのやり取りをしているなど、「自身がてんかんの症状があると認識していた」と指摘。
その上で「てんかんを隠したまま運転し事故を起こした身勝手な犯行」などとして、懲役8年を求刑しました。
■被告は謝罪も…改めて弁護側は無罪主張
一方で弁護側は、「意識障害の原因は、狭心症による可能性があり、てんかんの発作によるものとは限らない」「脳腫瘍の手術の影響で理解力が低下し、自身がてんかんと認識していなかった」などとして、改めて無罪を主張しました。
審理の最後、西馬被告は「何をどうしても汐里さんは帰って来ない。申し訳ございません」と、謝罪の言葉を口にしました。
【汐里さんの父・竹田正義さん】「(西馬被告は)最後まで無実と言いました。言い切りました。
本当に謝罪の気持ちがあるなら、(今後言い渡される)判決を素直に受け止めていただきたい」
判決は11月18日に言い渡される予定です。
(関西テレビ「newsランナー」2026年9月1日放送)
