先日、16年ぶりに米国ロサンゼルス(LA)を訪れたら、ウェイモ(Googleの親会社がLAなどで走らせている無人自動運転タクシー)が客を乗せて普通に道路を走っているので早速乗ってみた。
呼ぶのは日本のタクシーアプリとほぼ同じやり方で、10分ほどで来る。だが無人の車というのは正直怖い。
車の天井に衛星アンテナが、前後左右にカメラが搭載されているのだが、運転の上手な模範ドライバーが比較的ゆっくり運転している感じ。下手に飛ばしたりしないのが大変良い。
SFチックな音楽が車内に流れており、未来に来たような感覚だ。あっという間に降車地に着き、スマホでドアロックを解除して外に出ておしまいである。
私は運転手がいないのがやはり不安だったが、同乗した女性は運転手がいないのが良いと言う。深夜に見知らぬ男性運転手と狭い車という個室で2人きりになるのはストレスだったと。
日本は規制改革に時間がかかる国だ
LA在住の日本人ビジネスマンM氏に聞くと、ウェイモは普通の車より事故率は低いが、道が狭いニューヨークや東京ではまだ無理だろうということだった。
日本はウーバーも事実上普及しておらず、既得権益に政治が切り込めそうもないように見える。
人類にとって最大のリスクであろう人口減をカバーできるのはデジタルやAIによる技術革新だが、日本は規制改革に時間がかかる国だ。
高市総理は規制改革に前向きな日本維新の会もうまく使って切り込んでほしいと思った。
LAで物価と消費税について考えた
LAでは短期アパートを借りたのでスーパーに身の回りの物を買いに行った。
円安とインフレで物価が高いとは聞いていたが、1リットル入りの洗濯洗剤が1230円とやはり高かった。
だが、バナナは6本で230円、またブドウは大きなのが2房で360円と結構安い。ミネラルウォーターはまとめ買いで500ccが1本50円だ。
バナナは中南米から安い物を輸入し、ブドウはカリフォルニア州で大規模生産。また水も1ダース、2ダースの大量包装、輸送が原則なので安い。
基本的に米国の生鮮食料品は安い。加えてLAは消費税が9.75%と日本並みだが多くの食料品はゼロだ。
興味深いのはゼロはゼロでも「生活必需品」に限られているということだ。肉、野菜、魚、パン、牛乳に水などはゼロ。だが温かい惣菜や炭酸飲料、お酒はゼロではない。
日本では高市政権による「食料品の消費税ほぼゼロ」が実現した場合、軽減税率対象のテイクアウト食品もほぼゼロになるため飲食店の経営が圧迫されることを心配する人がいる。

だがLAではテイクアウトは元々減税の対象になっていない(サラダやサンドイッチは対象)のでこういう心配は無用である。
各国で行われている食料品の消費税減税は「生きていくために最低限必要なもの」に対する措置なので、日本もテイクアウトは最初から対象にしなければ良かったのかもしれない。
野球場の生ビールの価格と最低賃金
翌日、MLBのドジャースの試合を見に行った。野球といえばビールなので早速売店に買いに行くとなんと1杯が約3000円だ。
前に並んでいたヒスパニック系の青年がブラディーメリーミックス(トマト味のカクテルの材料)も一緒に買っていたので「それ何?」と聞いたらビールと混ぜてミチェラーダというカクテルにするという。
真似して買ったら4500円になってしまった。美味しかったが2杯目は3000円の生ビールにした。
野球は庶民のスポーツだ。だがみんな普通に3000円のビールや4500円のミチェラーダを買っているのだが大丈夫なのか。
再びM氏によると、東京都の最低賃金は1200円超なのだが、LAの最低賃金は日本円で2940円だという。
私が「東京の倍以上じゃないですか」と驚くと、M氏は逆に「東京は8ドル(LAは18ドル)ですね。悲しいです」とため息をついた。
確かに最低賃金が2940円なら3000円の生ビールも買える。ちなみに東京ドームの生ビールは1000円で、東京都の最低賃金に近い。

一部の食料品を除いて米国での買い物は日本の2倍から3倍かかる。それはビジネス面でも同じで、日本の価値は半分以下になってしまったということだろう。
日本は「安い国」になってしまったが…
M氏によると、先にまず賃金が上がり、その後に物価が上がっていったという。
しかし日本は「失われた30年」の間、デフレが続き賃金も上がらなかったが物価も上がらなかった。
アベノミクスによるデフレ脱却の試みに対し「デフレのままの方がいい」と言う人がいたのを覚えている。

確かに企業は賃金を上げなくていいし、労働者は物価が上がらなければ別に困らない。年金生活者も含めみんなハッピーだ。
だが、我々がそうやってデフレを「楽しんでいる」うちに日本の価値は半分以下になり、「安い国」になってしまった。
では日本はダメな国なのかというとそうではない。

米国の社会保障は年金も医療も介護も個人責任の比重が大きいで、日本のように国や企業が全てお膳立てしてくれない。
だから「格差」が生じることになる。60歳後半で完全引退して悠々自適な人もいれば、きつい仕事をしたり貧困に苦しむ高齢者も多い。
M氏は「失われた30年」を放置し、今でも変化に挑戦しない日本の政治家や企業経営者に怒っていたが、老後は日本に帰りたいという。
高市政権の経済成長路線と維新の役割
高市総理は何をなすべきか。まず食料品の消費税ほぼゼロは2年間はやってもいいが、もしその後も続けるなら、財源を見つけなければダメだ。
これについては維新が租税特別措置の廃止や医療費の削減を打ち出しているのに対し自民党は及び腰である。維新の圧力をうまく使ってこれで毎年5兆円確保できれば恒久的にゼロにできるのではないか

高市政権は物価高対策より経済成長の方に力を入れていて、それに対する批判も多いが、その路線は間違っていないと思う。
ただ経済成長への最大のカベは既得権益を持つ勢力の抵抗だろう。維新の馬場伸行前代表が総務大臣で入閣という見方があるが、規制改革担当大臣にして自民党のケツを叩かせたらどうかという案もあると聞く。面白そうなので是非やってほしい。

日本には技術革新をする能力は十分にある。規制改革で経済成長させれば「安い日本」ではなくなるだろう。
【執筆:フジテレビ客員解説委員 平井文夫】

