波乱の国会が終わった。26日の新聞各紙の社説は以下の通り。
読売「大阪ありきに振り回された」
朝日「説明責任からの逃走 国会を歪めた首相の独善」
毎日「国会閉会と高市首相 独りよがりが分断深めた」
産経以外は高市総理に対しほぼ否定的なトーンだった。
ちなみに「説明責任からの逃走」「首相の独善」と断じた朝日は「中傷動画報道を受けた首相の対応は場当たり的で、最後まで疑念を払拭する説明はなかった」と憤っていた。
集中審議で野党から“中傷動画”質問なかった
しかしその「説明」が足りないということで国会閉会後の27日に行われた高市総理出席の衆院予算委の集中審議で、この中傷動画についてなぜか野党からは一切質問がなかった。

中道改革連合から質問に立った2人のうち1人は「中傷動画」ではなく「サナエトークン」について質問したが、新しい話は出なかった。
また先日、中傷動画を作成したとされる人物について「詐欺師」と発言した共産党の田村智子委員長も一切聞かなかった。共産党は17日の参院予算委の集中審議でも質問していない。もう関心がなくなったのか。
野党が聞くことがないのならメディアももう「説明責任からの逃走」などというのはやめたらどうか。

食品の消費減税「速やかに法案提出」
政治の次の焦点は「食料品の消費税を2年間事実上ゼロ」について高市総理がどう判断するかだが、27日の会見で高市総理は「速やかに法案を提出する」と述べた。
今週中に法改正手続きを自民党に指示し、来週には閣議決定の見通しだ。その場合、政府は直ちに法案条文の作成に入り、秋の臨時国会に提出。成立すれば来年4月から2年間は現在軽減税率で8%の食料品の消費税率が1%になる。

これについて現在野党で賛成する可能性があるのは日本保守党だけ。どころか自民党内にも以下のような理由による慎重論が多い。
「小売店が便乗値上げをして実質値段が下がらない」
「飲食店は10%のままなので経営破綻するところも出てくる」
「小規模農家は免税分がなくなって困る」
「2年後に戻す時の増税感がきつい」
まあどれもごもっともなのだが、同じ年間5兆円くらいの財源で所得税減税や給付をしても「使わないで貯めるだけ」「実感がない」「時間がかかる」など文句を言う人は必ずいるだろう。
立憲は与党案に賛成しても公約違反ではない
参院では与党は過半数がないのだが野党の協力は得られるのだろうか。
国民民主党は玉木雄一郎代表が15日の党首討論で高市総理から「今やらなかったら経済は強くならない。私は成長のスイッチを押して、押して、押しまくる。一緒にやりましょうよ」と呼びかけられたのに「気合と根性だけでマーケットは動かない」と、とっても感じ悪く否定したので、消費減税への賛成はないなと思った。

また参政党は国民会議への参加を断られているし、チームみらいは公約に「消費減税」を入れていないのでこの2党も賛成はないだろう。
実は立憲民主党は昨年7月の参院選での公約に「食料品の消費税率の最大2年間ゼロ」を打ち出し、その後法案も出している。
ただし今年2月の衆院選では公明党と合流して中道改革連合を結成し、公約は「食料品の消費税率を恒久的にゼロ」に変えた。
だがその後合流するはずだった参院はいまだに合流していないので参院では立憲民主党のままだ。つまり参院の立憲民主党が与党の消費税減税案に賛成しても公約違反ではない。

そもそもこれまでの構図は自民党を中心とする与党が消費税を上げ、それに対して野党が「下げろ」と要求するものであった。だから与党が消費税「下げる」と言ってるのに野党が反対して実現しなかったら野党支持者は納得するのだろうか。
各党は「消費税ではなく給付金を配れ」「いや所得税減税だ」などと反対しているが年間5兆円をばら撒くなら別にどれでもいいではないかという気もする。
そうは言っても立憲民主党が与党に賛成するというのは政治的にはなかなか難しいだろう。仮に日本保守党が賛成しても「副首都法案」の時のように自民に病欠が出れば本会議はギリギリの戦いになる。
もし参院で否決された場合に衆院の3分の2を使った再可決をやるのだろうか。これをやるとまた野党とメディアは「乱暴な国会運営!」と怒るだろう。

ただ2月の衆院選での与党の公約は「2年間ゼロについて国民会議で検討を加速」という表現になっているので、「頑張ったけど野党の反対でできませんでした」と謝る手もなくはない。
「ブレないリーダー」であり続けるなら
消費減税について世論は先週末の読売で「賛成」48対「反対」41、日経が「賛成」48で「反対」44と微妙な数字だ。賛成の方が少し多いが「絶対やってくれ」ではない。
だが高市総理は会見で「強引な国会運営」との批判に対して「反省点は特にない」と突っぱねた。「国会の古い慣習」より「衆院選での有権者との約束を守る」ことの方に重心を置いているのだろう。支持率の低下も気にしていないようだ。

たとえ「首相の独善」と批判されても「ブレないリーダー」であり続けるなら、すなわち「衆院3分の2」を使ってでも消費減税はやるということなのだろう。
【執筆:フジテレビ客員解説委員 平井文夫】

