8月30日未明、福井県嶺北地方に1時間50ミリ以上の猛烈な雨が降り注いだ。気象庁は「線状降水帯直前予測」を発表したが、実際には発生しなかった。では、なぜこれほどの大雨が降ったのか。それは、前線が“折れ曲がった”ポイントと日本海の高い海面水温、二つの要因が重なったことだった。村田光広気象予報士が解説する。
29日夜から活発な雨雲が断続的に流入
雨が降り始めたのは8月29日夜。気象レーダーからは、日本周辺の海域に帯状の強い降水域が広がり、その雨雲が嶺北地方へと流れ込んだことが分かる。
この活発な雨雲が福井県嶺北地方に流れ込んだことで、30日未明には1時間に50ミリ以上の非常に激しい雨を降らせた。
また気象庁は30日午前2時頃、線状降水帯が3時間以内に発生する恐れがあるとする気象防災速報を出したが、実際には線状降水帯は発生しなかった。線状降水帯には、大雨になっている範囲や雨の量、雨雲の形といった基準があるが、今回はその基準を満たさなかったためだ。
しかし今回のように、線状降水帯が発生しなくても記録的な大雨になることがある。
前線の「折れ曲がり」が危険を生んだ
では、なぜこれほど雨雲が発達し大雨をもたらしたのか。
8月30日午前6時の天気図では、前線が県内に停滞しているのが分かる。注目したいのは、ちょうど県内の沿岸にある前線が折れ曲がっている部分。
この場所は、高気圧の周辺から流れ込む湿った空気と、南西方向から流れ込む湿った空気がぶつかり合う地点で、雨雲が急速に発達する。その発達した雨雲が県内へ流れ込んだことで、集中豪雨となったのだ。
二つの湿った気流がぶつかり合う場所では雨雲が急成長しやすく、その影響が局地的な豪雨として現れることがある。今回の嶺北地方はまさにその「交差点」に位置していたということになる。
日本海が真っ赤…平年を大きく上回る海面水温
もう一つの要因が、日本近海の海面水温の高さだ。
30日時点の日本近海の海面水温を平年と比較したデータでは、平年より高い海域が赤く表示されているが、日本海はその大部分が赤く染まっている。この海水温の高さにより、日本海から水蒸気が次々と補給され、雨雲が発達することになったのだ。
海面水温が高いほど、海面から蒸発する水蒸気の量は増える。その水蒸気が雨雲のエネルギー源となることで、雨雲はより勢力を増す。
今夏の日本海は平年を大幅に上回る水温を記録していて、これが雨雲の「燃料」となってしまったと考えられる。
今回の大雨は、「前線の折れ曲がり」と「高い海面水温」という二つの条件が重なったことで引き起こされた。9月にかけては、秋雨前線が停滞しやすくなるとともに、台風の接近・上陸も増える時期。線状降水帯が発生しなくても記録的な大雨になる可能性があることを認識し、早めの避難行動をとることが重要だ。

