夏山シーズン終盤を迎えた富士山で、静岡県側の救助件数が前年同時期の約2倍に増加しているという。特に目立つのは登頂中ではなく下山中の体調不良や転倒で、登山者の体力消耗や無理な登山計画、軽装での登山が背景にあるとみられている。
2025年から入山規制導入も…
8月28日朝の富士山頂上からの眺めだ。
目の前に自然豊かな景色が広がり、その先に駿河湾が大きな弧を描いている。
28日午後1時には、富士山に登ろうとたくさんの人が門をくぐっていく様子が見られた。
訪れた人は「初登山なので思い切ったことをしたい。一番高いところに行きます」「無理しないペースで上に登ってから、次の日の朝、山頂にご来光を見に出発できたら」と話した。

夏山シーズンも残り2週間ほどとなった富士山。
2025年から入山規制が導入され、トラブルは減ったかに思われた。

ところが、静岡県側では2026年に救助件数が激増し、遭難件数は2025年の同じ時期の2倍に上っている。
「登りでエネルギー使ってしまい…」
一体なぜなのか。

6合目付近で座り込んでいたのは、下山中の登山者だ。

下山中の登山者:
もう下山がやばいです。
下山中の登山者:
あと15分だけど、ここに座って待機している。それくらいしんどい。マジでしんどい。

遭難は厳しい登りで起きるものと思いがちだが、2026年に特に目立っているのが、「下山途中での体調不良」や「疲労で転んで動けなくなった」など、“下山中の事故”だという。

下山中の登山者からは「下山は結構急なので、ストッパーをかけながら下りるけど、それがやばかった」「ふくらはぎ、もうやばい。何もしなくても震えている気がします」「頂上で2000円のけんちん汁を食べて、めっちゃうまい、一番世の中でうまいと思って、最高や思ったら、下山でヘロヘロ」といった声が聞かれた。

夏の間、富士山頂に常駐して活動している写真家の植田めぐみさんは、下山中の事故が多発している理由について次のように指摘した。

富士山頂写真家・植田めぐみさん:
想定するには、今年は特に天気が良くて先が見える。登山道が見えると「もう少し進んでみよう」「まだいけるかな」と思ってしまう。登りでエネルギーを使ってしまい、下るときにエネルギーが残っていない。
「せっかくだから」無謀な登山に
加えて、入山規制により減ったとはいえ、依然として遭難の要因となっているのが“軽装登山”だ。

軽装登山者は、天気が悪い日にこそ目につくという。

8月11日、富士山では台風の接近が予想される中でも、多くの登山者の姿が見られた。

悪天候であっても登ろうとしてしまう心理について聞くと、登山者からは「(悪天候でも)行ってみようかな、みたいなのはわかりますね」「山小屋の予約を頑張ったので、無駄にしたくないという気持ちはある」「せっかく休みを取ったし、行くしかない」「当日の(山小屋)キャンセル(料金)は100%なので」といった答えが返ってきた。

「せっかくだから」という登山者の心理が無謀な登山につながっている可能性にさまざまな要因が重なり、2026年は遭難が増えているとみられる。
5合目から麓へ…“富士下山”に注目
そうした中、富士山の新たな楽しみ方への関心も高まっている。

それが富士登山ならぬ“富士下山”。
ひたすら登って山頂を目指すのではなく、5合目周辺からふもとへと下っていくトレッキングツアーだ。

富士山ネイチャーツアーズ・岩崎仁代表:
5合目から下に目を向けていくと、自然がどんどん変化していく。

山頂を目指す登山では体験できない富士山ならではの自然や、歴史的な一面に触れられる点が魅力だという。
時にはシカに遭遇することもある。

登り以外の魅力にあふれた富士下山が広まることで、登山道の混雑緩和や自然環境の保全にも期待できるという。
富士下山ツアー参加者は「ここ(下山道)は森の中でとても歩きやすい。自然もあってすごく感動した」と話した。

多くの人を魅了してやまない富士山。
無理をせず体力や天候に合わせて、より安心・安全に楽しむことが求められる。
(「イット!」8月28日放送より)

