毛艶の変化や動きの鈍さ、いつもと違う甘え方。後になって振り返ると、それらは愛猫からの「助けて」のサインだったのかもしれない。
著者の峯田淳さんが10年寄り添った愛猫・ジュテ。ガンと判明し、無我夢中で過ごした47日間の闘病の日々をつづった『猫のいる人生』(新潮新書)から一部抜粋・再編集してお届けする。
毛艶が失われ、電気座布団から離れなくなった
この頃に妻と話していたことを書いてみる。
朝晩の冷え込みが気になって、猫用の電気座布団は「強」のままにしてある。
ジュテも弟猫たちも温まっている時間が増えた。
休んでいるジュテを見て気になったのは、あれほど毛艶がよかったのに、毛割れして、ボサボサな時が多くなったことだ。
ジュテは抱っこと同じくらい、ブラッシングが好きだった。
針金の歯のブラシで背中をゴシゴシと力を入れて梳(す)いても、まったく嫌がらない。
むしろ快感だったらしく、ゴロゴロ言いながら気持ちよさそうにしていたのに。
病気がわかってからは、ブラッシングする時は背中側の背骨に沿ったところだけにして、お腹周りは掌でそっと撫でるようにしていた。
毛がボサボサしているのは仕方がない。
夜は電気座布団でジッとしていることが多い。
ただ病気が分かる前後から、人恋しいのかベッドに上がってきて、妻の隣で寝ることも増えた。
「一緒に寝てるでしょ。その時に私の顔とか瞼を舐めるの。
猫の舌はザラザラしているから、けっこう痛い。
あれは『具合が悪いの。助けて』と言いたかったんじゃないのかな」
これもジュテの異変だ。
ジャンプも階段も慎重に…少しずつ現れていた体の変化
「動作も遅くなっていると思わない?」
ジュテはスズメを捕まえてくることがあった、俊敏な猫だ。
それなのにベッドに上がる動作が、以前ならヒョイと身軽だったのが、位置を確認するようにしてからジャンプするようになった。
階段の昇降もそうだ。
これまでは2階からトントントンと軽快に降りていたが、一段一段、踏みしめるように降りている。
その横を弟猫のガトーやクールボーイがサッと通り過ぎていく。
「今から思えば、あれも変だなと思ったんだよね」
「かまって」と訴えるように甘える姿も病気のサインだった
妻にはほかにも思い当たるフシが……。
いつもは毅然として人に命令するようなしぐさを見せるジュテが、以前ならば考えられないほど甘えるようになっていたのだ。
「足元にまとわりついて、訴えるような目をするの。
背中や頬をこすりつけて、かまってかまって、がひどかった」
これまでにいくつも、なんらかのシグナルを送っていたことに、もしかして気付かなかったのか……。

