創業者のフルネームが店名に
「楊國福」と「張亮」の発祥はその黒竜江省だ。私が訪れた「楊國福」は03年に黒竜江省ハルビン市で創業。07年からフランチャイズ化して中国各地に出店した。海外では日本、アメリカ、カナダなどにあり、世界の総店舗数は7000店を超える。福建省発のチェーン店「沙県小吃」よりも多い。まさに麻辣湯界の頂点に君臨する企業だ。
ちなみに、「楊國福」も「張亮」も店名は創業者のフルネームになっている。楊國福は中国人にありがちな名前で、張亮はさらにありふれた名前。おそらく中国全土に同姓同名の人が1000人か、あるいはもっといるかもしれない。
中国も韓国も日本よりも姓が少ないので、同姓同名はやたらと多い。日本でも老舗で、たまに「〇〇三郎商店」みたいなお店があるが、自分の名前を冠した店が国内だけでなく世界中に広がっているなんて、日本人の感覚ではちょっと考えにくい。
「張亮さんが今日、張亮で麻辣湯を食べています」なんていうことも起こりうる。
日本発のチェーン店も食べてみた
日本人が始めたことで有名なのは「七宝麻辣湯」。ラーメン評論家の石神秀幸さんが07年に東京・渋谷に一号店をオープンさせたのが最初だ。私は後日、比較のためにこのお店にも行ってみた。
こちらも客の大半は日本人の若い女性だった。具材などは中国系チェーンと似ているが、特徴は30種類以上の薬膳スパイスと、鶏や豚のコラーゲンをたっぷり含んだスープを使用しているという点だ。スープを飲んでみると、確かにスパイスが利いていて、「女子が喜びそう」「健康になりそう」な気がした。
マーラータンは「麻辣湯」と書く場合と「麻辣烫」と書く場合の2種類ある。「湯」は中国語で「スープ」の意味。「烫」も同じく中国語で「やけどするほど熱いスープ」の意味だ。
日本ではわかりやすく「湯」を使う店のほうが多いが、中国発のチェーン店は「烫」を使用している。余談だが、中国人観光客が来日し始めたばかりの頃、温泉施設の入り口で「湯」と書かれた暖簾(のれん)を目にして「ぎょっとした」という有名なエピソードがある。「なぜ温泉にスープが?」と思ったのだ。「湯」は中国語で「熱水(ラーシュイ)」という。

