例えば、バナナをつぶしたり、ご飯をやわらかくつぶしたものをあげるだけでも構いません。支援物資として配られるパンも、そのままでは食べにくければ、水分を含ませてやわらかくしたり、小さくちぎったりすることで食べられることがあります。
非常時なのですから、とにかく何でも食べてくれればOK。そうした考えのもと、離乳食期の子どもにご飯を用意する際、役立つのがラップやポリ袋です。
ラップの上からバナナをつぶしたり、ポリ袋の中でパンに水を加えてやわらかくしたりすれば、お皿を使わずに済みますし、洗い物も減らせます。災害時は水が貴重になるため、食器を洗う回数を減らせることも大きなメリットです。
離乳食を始めたばかりの頃、おかゆを食べるのは栄養を取るためというよりも、「スプーンで食べることに慣れる」ことが目的です。災害時も、「これを食べさせなければならない」と考える必要はありません。その時にあるものを工夫しながら、お子さんが食べられる方法を考えてあげてください。
お母さんも栄養バランスを気にし過ぎなくて大丈夫
災害時は、お母さん自身も「ちゃんと栄養バランスを考えた食事をとらなきゃ」と考え過ぎなくて大丈夫です。もちろん、普段の食事で栄養バランスを意識することは大切ですが、災害時はまず食べることを優先してください。
お母さんが食べなければ体力も落ちますし、育児を続けることも難しくなります。
そして、もし母乳が出るのであれば、赤ちゃんが欲しがるだけ授乳してあげてください。
授乳は栄養を与えるだけではありません。赤ちゃんにとっては、お母さんに抱っこされる安心感がありますし、お母さんも授乳によって、幸せホルモンとも呼ばれる“オキシトシン”が分泌されます。
おっぱいは子どもとお母さん両方のリラックスにつながるのです。
母乳の量が普段より減ってしまったとしても、授乳する時間そのものに意味があります。ですから、「十分に出ていないからおっぱいをあげても意味がない」と思わないでください。
そして、もう一つ知っておいていただきたいのが、哺乳瓶が使えない場合でも、赤ちゃんは意外とコップやスプーンで飲めることがあるということです。
紙コップの縁を赤ちゃんの唇に軽く当てて少しずつ傾けると、舌を使って少しずつ飲めるお子さんもいます。
コンビニなどでもらえるスプーンを使って飲ませることもできます。「哺乳瓶がないから飲ませられない」と思い込まず、その場にあるものを活用してみましょう。
災害時の育児で一番大切なのは、「これしか駄目」という答えを覚えることではありません。
母乳やミルクがあれば、それを優先する。それが難しければ、その時にあるものを使って水分や糖分を補い、子どもが食べられる方法を考える。普段の育児と災害時の応急的な対応は分けて考えるようにしましょう。
非常時だからこそ、柔軟に考え、親子で乗り切ることが大切だと私は思います。
河嶌美穂(かわしま・みほ)
小児科専門医。「半蔵門のびすここどもクリニック」院長。
取材・文=内山直弥

