高市の支持率が下がった。この週末に行われた各社の世論調査の結果は以下の通り。

毎日新聞 10ポイント減の41%
朝日新聞 7ポイント減の53%
ANN      10.9ポイント減の49.2%

朝日調査では「皇室典範の改正」について「国民の理解」が「得られていない」の60%が「得られている」の24%を大きく上回っており、朝日は「この法改正が内閣の支持・不支持模様に影響を与えた一因となった」と解説している。

“養子案”への国民の反応は

確かに国民の多数がこの改正は「理解を得られていない」と思っている。だが一部野党やメディアから反対が多い「養子案」について国民も同じように反対しているのかというと必ずしもそうではない。

「旧宮家を養子として皇族に復帰させる」ことについて、また「養子に男子が生まれた場合は皇位継承権を持つ」ことについても、いずれも「納得できる」と「できない」が40%台で拮抗している。

改正皇室典範が成立した 7月17日
改正皇室典範が成立した 7月17日
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「養子案」についての回答は社によってばらつきがあり、毎日調査では朝日より否定的な声の割合が高く、ANN調査では肯定的な声が多い。聞き方によって答えが変わるものと見られ、まだ国民に迷いがあるのではないか。

保守的政策は評価されている

また朝日調査で興味深かったのは、「国旗損壊罪」について「賛成」が65%で「反対」の24%を大きく上回ったことだ。

朝日新聞の世論調査では国旗損壊罪 賛成65% 反対24%
朝日新聞の世論調査では国旗損壊罪 賛成65% 反対24%

つまり高市政権の「保守的政策」は否定されているわけではなくむしろ評価されている部分も多い。

朝日調査によると今回の内閣支持率の低下は無党派層が離れたからであり、自民党支持者が離れたわけではないのだが、これは実は重要なことだ。

筆者は故安倍晋三元総理から「無党派層の人はいつ離れるかわからない。だが保守層を絶対に離してはいけない」と聞いたことがある。

自民党の中には実はリベラルな考えを持つ人もたくさんおり、高市総理の保守路線への反発もあるようだが、そこは間違えてはいけない。保守的な政策をやめてしまえば高市政権は終わりなのだ。

中傷動画問題 半数近く“納得出来ず”

高市政権は昨年10月の発足以来高い内閣支持率を維持してきたが、朝日の調査では10ヶ月目にして初めて6割台を割り込んだ。

最近の内閣で高い支持率といえば小泉純一郎政権と第2次安倍政権だが、いずれも発足1年目の手前に支持率が下がっているのは高市政権と同じだ。小泉政権は10ヶ月目に「田中真紀子外相更迭」で下がり、安倍政権では11ヶ月目に「特定秘密保護法成立」で下がった。

安倍内閣では集団的自衛権の見直しの際も下がっており、やはり与野党で意見が分かれる法案、あるいはメディアが批判的に報じる法案が通ると支持率は下がる傾向にある。

調査で意外だったのは週刊文春の報道による「中傷動画」問題については朝日も毎日も「納得できる説明をしていない」と答えた人が半数近くいたことだ。

中傷動画問題 「納得できる説明をしていない」が半数近くに
中傷動画問題 「納得できる説明をしていない」が半数近くに

これについては共産党の田村智子委員長が中傷動画を作成したとされる人物について「詐欺師だ」と発言。これを受けたのかどうか知らないが、17日の参院予算委の集中審議で共産党の議員は中傷動画についての質問をしなかった。

週刊文春はこの問題について7月2日号を最後に続報を出しておらず、中傷動画を作ったかどうかという話から、高市総理が野党の求めに対して「ちゃんと答えていない」という話に変わっているように見える。

内閣支持理由は“総理の指導力”

支持率の低下は「皇室典範改正」よりはむしろこの「野党にちゃんと答えない」を含めた高市政権の国会対応への不満に原因があるのではないか。

確かに2月の衆院選では自民党に単独で3分の2の議席を与えたが、かと言って数の力で暴走してもらっては困るということだろう。実はこういう声は政治、経済の各界から最近よく聞く。

内閣支持の理由「指導力に期待」が47%
内閣支持の理由「指導力に期待」が47%

だがこれは世論と実は矛盾している。というのは毎日調査で「高市内閣を支持する理由」は「総理の指導力に期待する」が47%でダントツにトップなのだ。

自民党内の声を聞き、野党の言うことも聞いて丁寧に国会運営などしたら指導力など発揮できない。だから高市総理は今後もある程度「暴走」した方がいいと国民は本当は考えているのではないだろうか。

高市総理の難局は続く

差し当たって、会期延長中の国会で残っている大きい法案は副首都法案で、まだ参院で過半数に2議席足りず、このままでは否決されて衆院で3分の2を使って再可決という声も出ているのだが、この支持率低下局面でできるのか。

副首都法案に行方は
副首都法案に行方は

自民党内には「副首都法案はもうどうでもいい」という声も上がっているが、それを日本維新の会が許してくれるのか。

さらに高市総理は来月上旬までに「食料品の消費税率を2年間ほぼゼロ」について決断しなければならない。これもまた難しい判断で、党内外から反対が多いものの公約に入れているので臨時国会での法案提出はせざるを得ないという見方が強い。

だが参院での可決のメドが立っておらず、これも否決された場合に衆院で3分の2を使うのかという問題がある。野党に否決されておしまい、という方がいいような気もする。

高市総理にとっては難しい判断が続く。だがいずれにしても「保守的政策」の実現に邁進する姿勢さえ崩さなければ自民党支持は離れないだろう。そこを忘れてはいけない。

【執筆:フジテレビ客員解説委員 平井文夫】

平井文夫
平井文夫

言わねばならぬことを言う。神は細部に宿る。
フジテレビ客員解説委員。1959年長崎市生まれ。82年フジテレビ入社。ワシントン特派員、編集長、政治部長、専任局長、「新報道2001」キャスター等を経て報道局上席解説委員に。2024年8月に退社。