『危険運転』の適用にあたり、飲酒の数値基準を導入した改正法が施行された。20年前の飲酒運転事故で、幼い我が子3人を奪われた遺族の母親は、今回の改正法をどのように受け止めているのか。

幼いきょうだい3人 まもなく20回目の命日

「苦しみも悲しみも今も消えることはない。それでも暗闇のなかで生き続けた先に小さな光を見出すことができた」。7月21日午後、大阪市で開かれた講演会に登壇したのは、飲酒運転による事故で最愛の家族を亡くした福岡の大沼かおりさん(49)だ。

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2006年8月25日、福岡市東区の海の中道大橋で、直前まで酒を飲んでいた男(当時・22歳)の運転する車が、大沼さん家族5人の乗る車に追突。

家族が乗った車は海に転落し、大沼さんの幼い子ども、長男(当時・4歳)と次男(当時・3歳)、それに長女(当時・1歳)の3人の無垢な命が奪われた。

まもなく20回目の命日。飲酒運転を巡る法整備は、大きな転換点を迎えた。危険運転致死傷罪の要件を見直す改正自動車運転処罰法が施行されたのだ。

明確化された『酒気帯び』と『酒酔い』の線引き

これまで飲酒運転は「アルコールの影響により正常な運転が困難な状態」と判断された場合に『危険運転』が適用されていたが、7月21日からは、アルコールの数値基準が「呼気1リットルあたり0.5ミリグラム以上」と明確化される。

同時に道路交通法も改正され『酒酔い運転』の基準についても危険運転と同様に「呼気1リットルあたり0.5ミリグラム以上」が適用されることになった。

今回の法改正で捜査の現場はどのように変わるのか。福岡県警交通指導課交通取締指導官の熊丸貴博・警部は「これまでの規定であれば、やはり曖昧な部分があった。酔いの程度は、やはり人それぞれ違うので、個別具体的に判断するようになっていた」と話す。

警察は、これまで飲酒運転を摘発する際『鑑識カード』と呼ばれる捜査書類を使ってアルコール数値のほか、飲酒の状況に関する回答や歩行能力などを記録し、その結果を総合的に判断して『酒気帯び運転』か『酒酔い運転』かを決定していて『酒酔い運転』について明確な基準がなかった。

このことについて県警の交通取締指導官、熊丸警部は「今回、新たな基準が導入されたことによって、飲酒運転でより確実に取り締まることができますので、悪質、危険な運転者を道路交通の場から排除することができると考えてます」と話す。

事故を起こした運転手の男は0.25ミリグラム

数値基準が示されたことで明確化された線引き。飲酒運転事故で3人の子どもを失った大沼さんは、今回の法改正について「数値があるということは、ひとつの明確な判断材料になったのかなと思う。一歩前進したのかなと思う」と感想を述べた。

しかし改正法の施行を評価する一方で、複雑な思いもある。

「すぐに検挙されたわけではないが、私たちの場合で運転手の男は0.25だった」(大沼かおりさん)。

3人の子どもの命を奪った運転手の呼気から当時、検出されたアルコールは0.25ミリグラム。『危険運転』や『酒酔い運転』の適用基準となる0.5ミリグラムには達していなかった。

大沼さんなど遺族団体は、これまで数値基準を見直すよう要望書を提出していたが、この数字が変わることはなかった。

「『0.3ミリグラムで』と要望は出したんですけど、それは、ちょっと今回は…。その点については、まだまだ前に進むための通過点かなと思ってます。これから変わっていく種を蒔いている状態だと思う」(大沼かおりさん)。

飲酒運転を撲滅することが、事故で亡くなった多くの人たちに報いる唯一の道なのだ。

(テレビ西日本)

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