高知県中部を流れる一級河川の物部川。例年、この時季であれば、アユ漁を楽しむ釣り人たちの姿でにぎわう美しい川だ。しかし、この夏はかつてない異変に見舞われている。
先週からアユの大量死が相次いで発生しており、多い日には1000匹以上が川面に浮いているのが見つかっている。
危機感を強める漁協、わずか10分で回収された100匹の死骸
8月26日、物部川漁業協同組合の組合員たちが網を手に川に入り、死んだアユの回収作業に追われた。驚くべきことに、わずか10分足らずで100匹ほどが回収され、その後も途切れることなく流れ着いた。
物部川漁業協同組合の松浦秀俊組合長は、強い危機感をあらわにする。
「非常に危機的な状況。これだけの数のアユが流れるのは、先輩の皆さんも初めてだといいます」
物部川では、例年秋の産卵に向けて必要な親アユとして10万匹ほどの確保を見込んでいる。しかし、今回の大量死によってその数が確保できるのか、組合長は深い懸念を抱いている。推定では、アユの数が例年の半分以下にまで落ち込んでいるのではないかという。
猛暑と渇水で水温上昇
アユの大量死の背景には、渇水とそれに伴う水温の上昇があるとみられる。
流域ではここ一カ月、まとまった雨が降っていない。さらに、貯水率が低下した上流の永瀬ダムが8月4日から放水量を20%カットしたことも重なり、下流の水深は通常よりも20センチほど浅くなっている。水深が浅くなったことに加え、猛暑が続いたことで水温が上昇したとみられる。
現地で水温を確かめたところ、人間にはひんやりと感じる水温だったが、アユにとっては大きな負担に感じられるほどの高温になっているという。物部川漁協は、この猛暑が続く中で現在のダムの放水量ではアユが生きていける環境を十分に維持できていないと指摘している。
気候変動を見据えた「維持流量」の確保が急務
松浦組合長は、ダムの放水量について次のように語る。
「近年の気候変動によって水量が減ると水温が上がる。それによって生き物が生きていけなくなる。そのことは考えていないので、最低限必要な維持流量を考えていただきたい」
物部川では2024年にも渇水により多くのアユが死んでいるのが確認されているが、今回ほどの規模の大量死は過去に例がないという。気象台の予報では、一時的に雨が降る日はあるものの、むこう一週間はまとまった雨が期待できない状況が続く見通しだ。
一日も早くまとまった雨が恵みをもたらすことが望まれるが、渇水がこのまま長期化すれば、今後のアユの産卵に深刻な悪影響が及び、来シーズン以降の魚影が激減する恐れがある。
