自転車の『青切符制度』導入をきっかけに、「幼児用座席に同乗できる子供の範囲拡大」が検討されている。
現在、同乗が認められているのは「小学校入学前まで」。
小学生以上の子供を乗せることは“違反行為“であり、「青切符」の対象として3000円の反則金が科せられる可能性があるのだ。
「“子乗せ”の範囲拡大は、子育て世代にとって育児しやすい環境へ役立つと思われます。しかし、荷重が増すことでバランスを崩しやすくなったり、自転車が大型化した場合は駐輪場不足など様々な問題も起こってきます。便利さだけに目を向けず慎重に考えなければいけません」
こう警鐘を鳴らすのは自転車の安全利用促進委員会の遠藤まさ子さん。
詳しく聞いた。
■現状、ギリギリの設定…
【自転車の安全利用促進委員会 遠藤まさ子さん】
現在、自転車の幼児用座席(以下「チャイルドシート」)に乗せることができるのは法的には『小学校入学前』まで、です。
法律上は年齢での制限ですが、実際の走行時に重要になってくるのは“重さ”です。
一般に流通しているチャイルドシートの耐荷重は約22キロ。6歳男子の平均体重は21.4キロですからギリギリです。(文科省・令和7年度のデータより)
これに、チャイルドシート自体の重さが3~5キロあります。
いわゆるママチャリの荷台の耐荷重で多いのは27キロ。「チャイルドシートの耐荷重(子供の体重)+チャイルドシートの重さ」はギリギリの設定なのです。
検討されている「規定の見直し」は、「重さ制限」にするのか「年齢制限」にするのかといったあたりも議論されているようですが、いずれにせよ「範囲拡大」となると今のギリギリの設定も見直されることになると考えられます。
■あっという間に130キロ…
子育て世代の親御さんたちからは「小学校低学年ぐらいまで乗せたい」との要望が多いようです。
子供の体重(男子)は、6歳で21.4キロ、7歳で24.2キロ、8歳で27.4キロです。(文科省発表の令和7年度のデータより)
仮にチャイルドシートの耐荷重を30キロまで上げるとなると、強度を担保するために、チャイルドシートも大きく重くなると予想されます。
そうなると荷台の耐荷重も35キロ以上のものを作らなければいけない。荷重を支えられる強度にするため車体のフレームを厚くしたりすると、自転車自体の車重も上がります。
電動アシスト自転車の場合、チャイルドシートが付いたタイプは、既に35キロ近くのものもあります。
仮に自転車本体が30キロだとすると、次のような重さになることが想定されます。
【自転車本体30キロ+チャイルドシート(後ろ)5キロ+子供30キロ+大人60キロ=125キロ】
さらに子どもを2人乗せるとすると、さらに重量がかさみます。
【上記の125キロ+チャイルドシート(前)3キロ+子ども15キロ=143キロ】
子供1人だけ乗せたとしても、荷物が加わったり、買い物で食料品を買ったとすると、総重量は130キロ以上になる可能性は十分あります。
それを、自分の手足で安全に止めたり、ハンドルを確実にコントロールできるのかというと、難しいケースも出てくると思います。
130キロの自転車を運転するということは、運転する親御さんやお子さんだけでなく、歩行者や車を巻き込んだ大きな事故に繋がるリスクもあるのです。
■重さだけでなくはみ出し注意
危険なのは重さだけではありません。
国民生活センターが2024年5月に公表した資料によると、チャイルドシートに乗った子供の身体がはみ出していたことで障害物に接触し、大腿骨骨折など重篤なケガを負った事例が複数見られたということです。
具体的には、子供の足がガードレールに接触しケガをした、電柱をよけようとした際に頭にケガをしたといった内容です。
現在の法令の規定を満たす「体重が22キロ以内ならいいのでは」という意見もありますが、細身のお子さんの場合、重さをクリアしても、チャイルドシートから手足など身体が大きくはみ出してしまい、お子さんがケガをするリスクがあります。
また、障害物を避けようとしてバランスを崩し、自転車が転倒するといった危険も考えられます。
■駐輪場不足に住環境…デメリットは他にも
チャイルドシートを設置した自転車を駐輪する場合、重量や重心を考慮して「平置き」が安全とされており、地域によっては既に駐輪場所の取り合いが発生しています。
今後、もし大型化したりタイヤの幅などが広がれば、自転車ラックに入らないことも起こるでしょうし、さらに駐輪スペースが不足されると予想されます。
公共の駐輪場は、その都度対応が可能かもしれませんが、集合住宅に関してはどこまで対応してくれるか分かりません。
■子育て世代にとってはライフライン だからこそ“家族のルール”を!
私も子供が小さい頃は自転車で送り迎えをしていましたから、親御さんたちが困っている状況はよく分かります。
私の場合は、上の子の小学校と下の子の保育園が公共交通機関が殆どない状態で5キロ離れていました。
小学校には駐車場がないから車もダメ、となると自転車を使わざるを得ません。
自転車に下の子を乗せて小学校に迎えに行き、自宅までの2キロを上の子を歩かせて帰ってくる。1時間かけて戻ってくると夕飯をつくる時間がない!すぐに入浴させなくては!と焦ることもありました。
その上、どちらかが病気になってしまったらお手上げです。下の子が家で療養している間に上の子を学童に迎えに行くにはどうしたらいいのか、なるべく短時間で迎えに行く方法はないかと悩むこともありました。
子育て中のご家庭にとって、自転車はある意味、ライフラインです。
現実問題として、“子乗せ範囲”の拡大を望む気持ちは凄く分かりますし、実現すれば育児へのメリットは大きいと思います。
しかし、便利さと同時にデメリットも生まれます。国の定めるルールを守ることはもちろんですが、デメリットも把握した上で、家族全員が納得できる選択をして頂きたいです。
最後に、これからの季節に気をつけて頂きたいのが「レインカバー」です。
晴れた日でもチャイルドシートのレインカバーを付けっ放しにされている方がいるようですが、レインカバーは防水防風性がある素材のため、通気性が下がり、熱中症のリスクが高まります。くれぐれも気をつけて頂ければと思います。
(自転車の安全利用促進委員会 遠藤まさ子さん)
