春の高校野球岩手県大会で、公立高校として唯一ベスト4入りを果たした大船渡高校。1984年にはセンバツ4強入りし、春夏連続で甲子園出場を成し遂げた公立の名門が、再び聖地を目指している。通称「大高坂」で鍛えた機動力、選手主体のチームづくり、そして地元への思いを胸に、大船渡ナインが41年ぶりとなる夏の甲子園出場に挑む。
通称「大高坂」が育てた脚力
正門から校舎へと続く約100mの急な上り坂は、通称「大高坂」と呼ばれている。
選手たちは、この坂道を使った走り込みを日々の練習に取り入れ、走力強化に力を注いできた。
トレーニングで培った脚力を武器に、春の県大会では準々決勝で6盗塁を決めるなど、機動力を生かした野球で2年ぶりのベスト4入りを果たした。
「傾斜で足を上げることがスピードが落ちないことにつながる」とその効果について話すのが、2番の村上大和選手(3年)だ。
村上選手は50m走でチーム最速の5秒9を誇る俊足の持ち主だ。
春は地区予選と県大会合わせて7試合でチーム最多の12安打と、打って走って大船渡の機動力野球をけん引している。
村上選手は「いかに得点に絡むかをモットーにしている。夏の大会で通算20盗塁はしたい」と意気込みを語る。
攻守支える主力たちの決意
大船渡打線を支える一人、1番打者の佐々木結大選手(3年)は、春の県大会準々決勝では先頭打者ホームランを放つなど、長打力を兼ね備える。
佐々木選手は「積極的に初球を打ったり盗塁をしたり、どんどんチャレンジしたい」と夏の大会への決意を口にする。
投手陣では、この夏エースナンバーを背負う山田旺輝投手(3年)がチームを支える。
最速135キロのストレートのほか、スライダーやチェンジアップなど4種類の変化球を操る本格派右腕だ。
山田投手は、「真っすぐで押しつつ変化球でかわしていくスタイル。チームのリズムをつくって勝利につなげたい」とエースとしての覚悟を語った。
自主性重視したチームづくり
大船渡高校は2019年、現在はドジャースで活躍する佐々木朗希投手を擁し、夏の岩手県大会で準優勝を果たした。
しかしその後は、夏の大会で3回戦の壁を越えられない状況が続いている。
チームは現状打破に向け、選手の自主性を重視したチームづくりを進めてきた。練習中には選手同士でプレーについて意見を交わし、課題の確認や改善策を話し合う。
さらに日々の練習メニューも選手たちが主体となって決めている。
熊谷郁海主将(3年)はその狙いについて、「自分で何をやればいいのか、どうするかを考えないと、うまくならない。自分たちで考えて野球をすると効率が良くなるので、そこを考えている」と話す。
地元への思い胸に全員野球で頂点へ
選手たちを支える存在も欠かせない。
4人のマネージャーは毎日9合の米を炊き、40個のおにぎりを作って選手たちの体づくりを支えている。
斉藤光凜マネージャー(3年)は「甲子園を目指しているので、大きい体をつくって野球を頑張ってほしい」とエールを送る。
選手たちからも「愛情がこもっていておいしい」と感謝の声が上がる。
大船渡高校が夏の甲子園から遠ざかって41年。大船渡ナインは、2025年の山林火災で被害を受けた地元に元気を届けたいという思いも胸に戦う。
熊谷郁海主将(3年)は、「公立高校が甲子園に出るというのは地元の人からも応援される。地元の人たちのためにも絶対に勝って、一番長い夏にしたい」と力を込める。
「大高坂」で鍛えた足、選手たちが主体となって築いてきたチーム力、そして地元への思いを胸に――。大船渡高校が41年ぶりの夏の甲子園を目指し、全員野球で岩手の頂点へ挑む。

