かつて日本の物流を支えた「国鉄」、民営化でJRになってから2027年で40年となります。その国鉄時代を知るJR東海管内で”最後の駅長”がまもなく定年を迎えます。

■国鉄からJRへ 激動の時代知る「最後の駅長」

飛騨高山の玄関口、JR高山駅。年間およそ125万人が利用します。

駅長の畑中徹さん、64歳。今年8月に定年を迎えます。

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畑中さん:
「鉄道の制服は国鉄時代も含めてずっと47年着てきた。もうすぐ終わっちゃいますね、終了です」

畑中さんはJR東海で国鉄時代を知る“最後の駅長”です。昭和から平成、令和と続いた激動の時代に、現場に立ち続けてきました。

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日本で長きにわたり、ヒトとモノの流れを支えてきた「国鉄」。

ふるさとを離れ、集団就職でやってきた“金の卵”たち、ホームでの駅弁売りも懐かしい光景です。

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東京オリンピックが開催された1964年には、東海道新幹線が開業し、ビジネスや旅行に行動範囲は大きく広がりました。

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しかし、車社会の到来などで、採算がとれない路線が増え、国鉄の累積赤字は37兆円まで膨れ上がっていました。

そして1987年、国鉄は民営化され、JR東海など7つの会社に分かれました。この“分割民営化”により、経営体質の改善や、サービスの向上などが期待されました。

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民営化前の1980年、国鉄に就職していた畑中さんに当時の思いを聞くと…。

畑中さん:
「分割と言っても線路がつながっているわけですから、どうやって各社の業務やっていくのかなという。国鉄の職場は荒廃していて、仕事も割とずさんだった。リセットされていい状況になっていくんじゃないかと期待を持っていた」

畑中さんはその後、運転士の試験に合格し、東海道線などを運転。

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2018年に、生まれ育った高山で駅長となったのです。

■台風被害も経験…家族と乗客のために

畑中駅長の朝は、神棚に手を合わせ、安全を祈願することから始まります。

さらに作業服で、大きなタンクを背負って、1人でホームに向かいます。

畑中駅長:
「除草作業を行います。線路閉鎖をお願いします」

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駅長自ら除草作業にあたります。

さらに、駅員たちとホームに並び、横断幕を手に乗客を“お見送り”です。

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畑中さん:
「9時36分発のひだ6号はたくさんのお客さんが乗られますので、社員総出でお見送りします。全員で少しでもお客さんに“おもてなし”の気持ちを伝えるために」

飾らない人柄で、駅員からの人望も厚い畑中さん。しかし、過去にはつらい出来事もありました。

2004年10月、飛騨地方を襲った台風23号では、高山市内を流れる宮川の水があふれ、古い町並みも水浸しになりました。

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畑中さんは当時、高山駅の助役として、列車の運行計画などを担当していましたが…。

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畑中さん:
「妻の父親が災害の土のう積みに、川の氾濫を防ぐために出ていて、土石流に巻き込まれていなくなった、行方不明という連絡が夕方来たんですね。妻と向かうんですけど、途中寸断されていて、たどり着けないんですよね」

妻の父親が土砂崩れに巻き込まれ、行方不明に。一方で、高山線は鉄橋の一部が流されるなど大きな被害が出ていました。

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畑中さん:
「あまり寝れなかったですね。大変だった。職場と家庭と両方が、時間配分も何もできませんから『どうしたらといいのか』というのが大変でした」

畑中さんは、県や市と調整しながら代行バスの手配を行い、地域住民の足を支えました。そして、およそ3年をかけ、高山線はようやく全線で復旧を果たしたのです。

■地域のために…あふれる”鉄道愛”

地元を愛し、地元で愛されてきた“名物駅長”の畑中さん。この日は高山駅から4駅離れた飛騨市の杉崎駅を訪れました。

翌月に行われるJR東海「さわやかウォーキング」、駅を起点に周辺のスポットを歩いて巡る、人気のイベントです。畑中駅長は地元のメンバーと、参加者に配るマップを作るためにコースを下見します。

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観光協会の男性:「あそこにネコのベンチがあるでしょ。あれひそかな人気なんですよ」
畑中さん:「あれいいじゃないですか」
観光協会の男性:「子供たちにも人気なんですよ、かわいいかわいいって」

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畑中駅長にとっては、今回が最後。地元を愛する“仲間”と、知恵を絞ります。

観光協会の男性:
「夜になると、ここをライトアップして田んぼにも桜を映すっていうのを何年か前から地区でやっています。それを駅長に話したら『素晴らしいじゃないか』と、この地域を盛り上げようという話になって。(畑中駅長は)自分でいいなと思ったら仲間をつかまえて、みんなを盛り上げて形にするのが非常に得意な方」

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飛騨市の担当者:
「この人柄にみんながついてくるんだな。本当に“地域のお父さん”という感じで」

6月6日のさわやかウォーキング当日、畑中駅長は法被姿でお客さんを出迎えます。

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畑中駅長:
「花束ちょうだいしました。『勤務お疲れさまでした』と、ありがとうございます。うれしいですね」

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この日はおよそ130人がウォーキングに参加、1人1人に声をかけ、感謝の思いを伝えます。

参加した女性:
「この辺りのさわやかウォーキングに行けば、『畑中さんがいるかな』という思いはあったので」
参加した男性:
「バイタリティーあふれている。そもそも駅にいないです。すぐあちこちどっか行っちゃう。まだまだ現役でやっていただきたい、お元気なので」

最後のあいさつに、長野県から訪れた人もいました。

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男性:「今年で、定年退職でいなくなっちゃうのがさみしい」
畑中さん:「涙が出ちゃう」
男性:「こっちが涙出ちゃう」

国鉄からJRへ、47年の鉄道マン人生。晴れの日も雨の日も、お客さんの笑顔のために働いてきました。

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畑中さん:
「鉄道は地域を明るくする。地域のみなさまがあっての鉄道でありますし、鉄道あっての地域のみなさまだと思っております。(人生は)一言で申しますと『愛』ですね、鉄道への愛じゃないでしょうか」

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