災害の規模や地域によって復旧までの時間は大きく異なります。数日でライフラインが復旧することもあれば、長期間にわたって断水や下水道被害が続くこともあります。

国の計画では7日分備蓄しておくことを推奨しています。

また、内閣府のガイドラインに記載されているように、1日あたり約5回と考えたとき、1人あたり1週間分として35回分の携帯トイレを備蓄することが必要になります。

4人家族であれば合計140回分の備蓄が必要になる(イメージ)
4人家族であれば合計140回分の備蓄が必要になる(イメージ)

そのため、例えば4人家族であれば、5回(1人1日の排泄回数)×4人×7日で、合計140回分が目安になります。

7日分を基準に少し余裕を持って備えておけば、もし使わずに済んだとしても、それは良いことですし、必要になった人へ分けることも可能です。

復旧後にトイレを使う前に確認すべきこと

再び水洗トイレを使いはじめる際も、確認すべきポイントがあります。水洗トイレの仕組みは、大きく分けて「自宅の敷地内」と「敷地外の公共インフラ」の2つから成り立っています。

トイレから流れた排水は、自宅の配管を通り、公共下水道などへ流れていきます。つまり、この両方が正常に機能して初めて安全に利用できるのです。

そこで、まず確認したいのが公共下水道の状況。

これは自治体によって対応は異なります。「使用を控えてください」と呼びかける自治体もあれば、「問題があればこちらから広報します」とする自治体もあります。必要な情報をタイムリーに受け取るためにも、防災行政無線や自治体ホームページなどで情報を確認し、自分が住む地域の方針を日頃から把握しておきましょう。

もう一つは、自宅敷地内の設備です。こちらは自治体ではなく、所有者自身が管理しなければなりません。簡易的な自主点検が可能なのか、配管の破損や漏水が疑われる場合、誰に相談するのかを事前に確認しておくと安心です。ハウスメーカーや工務店、管理会社、設備業者など、相談先を把握しておくことで、いざという時に迅速な対応が可能でしょう。

公共下水道が復旧しても、自宅側の設備が壊れていればトイレは使えません。逆に自宅に問題がなくても、公共インフラが復旧していなければ利用できません。だからこそ、平時から確認しておくことが重要なのです。

一度使ってみることが最大の備えになる

いざという時、いきなり携帯トイレを使うのは難しいかもしれません。だからこそ、ぜひ一度使ってみてください。実際に排泄までしなくても、便器に設置して座ってみるだけでも十分です。特に小さな子どもがいる家庭では、親子で一緒に体験しておくと良いでしょう。

NPO法人 日本トイレ研究所 代表理事・加藤篤さん
NPO法人 日本トイレ研究所 代表理事・加藤篤さん

初めて使うものには誰でも不安を感じます。しかし一度経験しておけば、「以前やったことがある」という安心感につながります。

心身ともに大きなストレスを抱えやすい災害時だからこそ、排泄だけでも普段に近い環境で安心して行えるよう備えておくことが大切です。食料や飲料水と同じように、いやそれ以上に、「トイレの備え」を見直してみてはいかがでしょうか。

加藤篤(かとう・あつし)
日本トイレ研究所代表理事。排泄環境や災害時のトイレ対策に関する調査・研究、普及啓発活動に取り組む。

取材・文=内山直弥

加藤篤
加藤篤

日本トイレ研究所代表理事。排泄環境や災害時のトイレ対策に関する調査・研究、普及啓発活動に取り組む。東日本大震災や能登半島地震など、被災地におけるトイレ環境の実態調査にも携わり、災害時の衛生環境改善に向けた提言を行っている。