玉川大学(東京都町田市/学長:小原一仁)工学部の学生を中心としたロボットチーム「eR@sers(イレイサーズ)」は、4月に滋賀ダイハツアリーナ(大津市)で開かれた国内最大規模のロボット競技会「ロボカップジャパンオープン2026」に参戦し、日常生活における人間とロボットの共同作業を追求する@ホームリーグで部門優勝しました。
<https://sites.google.com/site/robocuphomejapan/japanopen2026>
チームは、6月30日から韓国・仁川で開かれる「ロボカップ世界大会2026」にも出場します。
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<ロボカップジャパンオープン2026に参加した玉川大学チーム>
eR@sersが今回、首位を獲得したのは、@ホームの中でも、VR(仮想現実)環境を活用し、ロボットの自然な支援行動の性能を競うシミュレーション・オープンプラットフォームリーグ(S-OPL)です。ロボット開発の新たなフレームワーク「ROS2」がベースとなった競技システムのアップデートに対応し、自然言語やジェスチャーによる人の指示を的確に理解しながら、ロボットがタスク(課題)を着実に遂行した点が評価されました。
加えて、実機ロボットの性能を競う@ホームのオープンプラットフォームリーグ(OPL)でも、自律搬送ロボット「Kachaka(カチャカ)」を使ったKachakaチャレンジで1位(特別賞)、独自の課題についての発表やロボットを用いた実演を行うオープンチャレンジで2位の好成績を収めました。特筆すべきは、@ホーム史上、初めてとなる二足歩行ヒューマノイドロボットで競技に挑んだことです。
さらには、宇宙環境を想定した新設リーグである@スペースチャレンジにも参加し、大きな手応えをつかみました。工学部情報通信工学科の西野順二准教授、脳科学研究所の稲邑晢也教授らを含む@スペースチャレンジ実行委員会のメンバーは、新リーグを立ち上げた功績などにより「日本ロボット学会賞」を受賞しています。
人と共生し、協働する存在としてロボットをとらえる研究が、玉川大学eR@sersの特色と言えます。研究室に配属されていない大学1年生から、研究活動に打ち込む大学院生まで、総勢30人に及ぶ大所帯のチームには、情報通信工学科を中心に学部・学科の異なる多様な学生が在籍しています。最先端のロボットに日常的に触れられる「ロボティクスラボ」を拠点に、それぞれがのびのびと活動に取り組んでいます。学年や研究室の垣根を越え、チームが一丸となって臨む競技大会への挑戦がまた、学生にとって実践的な学びの場となっています。
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<ロボカップジャパンオープン2026へ出場の様子>
このたび、eR@sersを率いるチーム代表の水地良明准教授(@ホームS-OPL実行委員長)をはじめ、S-OPLリーダーを務めた能登稜介さん(情報通信工学科4年)、ヒューマノイドの開発を主に手がけた仲戸川凱さん(工学研究科1年)、Kachaka主要開発メンバーの松前侑香さん(情報通信工学科4年)に、ジャパンオープンを振り返ってもらいました。また、共にチームの指導にあたる西野准教授、同じ情報通信工学科の堀三晟講師、玉川大学 脳科学研究所先端知能・ロボット研究センターの稲邑哲也教授にもコメントしていただきました。
<インタビューに登場した学生3名と教員4名>
――S-OPLでの優勝に加え、実機リーグ(OPL)では二足歩行ヒューマノイドロボットで初出場するという大きな成果を挙げました。
水地「S-OPLは本学の稲邑教授らが2013年に立ち上げたリーグで、人とロボットのコミュニケーションに特化した種目を寄せ集めた競技です。今回、ロボットが人とうまくやりとりし、人を誘導する高い説明能力が評価されたと考えています」
水地「自律移動型ロボットによる競技会であるロボカップには、『2050年までに、サッカーの世界チャンピオンチームに勝てるヒューマノイドロボットチームを作る』というゴールがあります。人の作業を支援するサービスロボットの分野でも、いずれヒューマノイド化が進むことを見すえ、真っ先に手をつけようと、OPLには中国・宇樹科技(ユニツリー・ロボティクス)製のヒューマノイド『G1』で挑みました。2本足で歩行する本格的なヒューマノイドで@ホームに参戦したのは玉川大学が初めてで、大変注目されました」
<水地良明准教授>
――出場に至るまでに相当な苦労があったのではありませんか。
水地「そうですね。開発は容易ではありませんでした。車輪型ロボットと異なり、二足歩行ロボットは、歩行や腕の動作などを、常に姿勢を維持させながら統合的に制御する必要があります。また、@ホームリーグでもプラットフォームとして採用され、我々のチームも開発に着手してきた生活支援ロボット(HSR)は、開発コミュニティで基盤技術やノウハウが共有されていますが、G1は自律行動をさせる基盤技術が異なるため、さまざまな機能を新たに導入しなくてはなりませんでした。どうしたらヒューマノイドを自律的に動かせるかという難題に、仲戸川くんをはじめ、学生たちが試行錯誤しながら、懸命に取り組んでくれた結果だと思っています」
――3度目のジャパンオープン出場となった能登さんは、S-OPLに3年間挑戦しつづけたそうですね。
能登「はい。実機の開発も担当したことがありますが、S-OPLに向けて先輩方がこれまで開発してきたプログラムを読み解きながら、性能を少しずつ改善してきました。今回、新たなROS2に合わせてプログラムを組み直したことで、自分自身の理解もより深まりました。3度目にようやく優勝をつかむことができましたが、一方で課題も残りました。OPLで活用したプログラムをシミュレーションに移植したのですが、予期しないエラーが起きてしまうことがありました。当日はそうしたアクシデントもあったので、このつまずきを解消し、チームのノウハウとして次回以降の大会に生かしていきたいです」
<能登稜介さん>
――仲戸川さんはG1の開発を主導されましたね。
仲戸川「私も3度目の出場です。これまでは補助的な開発作業が中心でしたが、今回初めて主要な開発を担当したG1でOPLオープンチャレンジ2位となり、チームに貢献できたことがうれしいです。ヒューマノイドを@ホーム環境で実際に動かし、また、開発したシステムを公開する取り組みなどが評価されたようです。ただ、主要タスクで点数を落としてしまったことはとても悔しいです。水地先生がおっしゃったように、HSRなどの車輪型ロボットはセンサーやアーム制御のためのインターフェースが整っているのに対し、G1はそれらがなく、開発時間が正直、足りませんでした。世界大会に向けて、これから自律移動のパフォーマンスを向上させたいと思っています」
<仲戸川凱さん>
――松前さんは、Kachakaの受賞に貢献されましたね。
松前「私も過去2回、Kachakaを使って大会に出場しており、今回が3度目です。初回は1人で参加しましたが、開発が間に合わず成績は振るいませんでした。2回目は仲戸川先輩が加わってくださり、トライアンドエラーを繰り返したものの、なかなか結果が出ませんでした。今回はメンバーがかなり増えたので、先輩や後輩の力も借りながら、HSRをベースにこれまで蓄積してきた技術を組み合わせたことで、特別賞を受賞することができ大変うれしく思っています」
<松前侑香さん>
――どのようなきっかけでeR@sersに入られたのですか。
松前「私は先輩に憧れたことが大きいです。チームには気の合う仲間がたくさんおり、もちろん女子学生もいます。実際に活動してみて、プログラミングを習得できることに加え、それで実際にロボットを動かせるというフィジカル面の面白さも体感しています。eR@sersでの経験を生かし、将来は技術者として世の中に貢献していきたいと考えています」
能登「私は大学に入るまで、パソコンにほとんど触れたことがありませんでした。それもあって、大学では自分で手を動かして学べるロボットなどの機械系を専攻したいと思い、玉川大学工学部を志望しました。入学後にeR@sersの存在を知り、プログラミングの勉強を一から始めました。大会にも出場したことで、現在はROS2への移行を一人で進められるまでに成長しました。プログラムの開発を通じて論理的思考も身につき、社会に出て役立つ知識が得られたと感じています」
――仲戸川さんは研究と並行し、起業もされているそうですね。
仲戸川「はい。高校時代からドローン空撮の事業に取り組んでおり、ドローンをプログラムで自律的に制御したいと思い、ドローンの研究室がある玉川大学工学部への入学を決めました。その後、すぐイレイサーズに入って移動型ロボットに魅了され、HSRやKachaka、さらに昨年夏からG1の開発を進め、現在はヒューマノイドに関するコンサルティング業務や開発支援、子ども向けのロボットプログラミング講習などを手がけています。3次元で姿勢を変えるという意味で、ドローンとヒューマノイドの制御技術や開発方針には共通点もあります。大学で培った知識が社会貢献につながることを実感しています」
<ラボで開発中のヒューマノイドロボット>
近年、機械やロボットなどの物理的な身体機能を自律的に制御する「フィジカルAI(人工知能)」が注目されています。生成AIや画像認識、言語理解などの技術を実際に身体を持つロボットへ統合し、現実世界で活用する試みです。@ホームリーグ実行委員長を務め、日本ロボット学会副会長でもある稲邑教授は、「現在のフィジカルAIの研究は、ロボットにいかに作業をさせるかという“対物”が中心。“対人”、すなわち『人とロボットが協働する』という視点が圧倒的に欠けている」と語ります。
<稲邑哲也教授>
玉川大学工学部では、人とロボットのインタラクション、さらにはロボット同士のインタラクションを実現する未来に向け、幅広い分野の専門家が研究と教育に携わっています。西野准教授は「今回の成果の99%は学生の活動のたまもの。ヒューマノイドをここまで使い倒している大学は他にはないだろう」と話し、堀講師も「学生たちが頑張ってくれたことに尽きる」と口をそろえます。
<西野順二准教授>
<堀三晟講師>
玉川大学はキャンパス内に脳科学研究所を持つのも特徴で、人の脳や認知の研究者と、ロボットの研究者が連携できる恵まれた環境があります。稲邑教授は「対人のインタラクションに向け、現在のフィジカルAIから、人の身体、さらには人の内面にまで拡張していくことが今後の大きなチャレンジになる」と考えています。
また、ロボカップの運営やHSRコミュニティなど、ロボット研究のオープン化に向けた活動にも積極的に取り組んでいます。2025年にはAIロボット協会(AIRoA)主導のプロジェクトに参画し、日本科学未来館から玉川大学のキャンパス内にあるのロボットを遠隔操作することに成功しています。そこで収集されたデータは、将来、オープンプラットフォームを使ったヒューマノイドAIの開発に生かされるそうです。
「ロボティクスラボはこのようなユニークな研究環境において、多くの専門家の指導を仰ぎながら、学生たちが知識や技術を共有しながら成長しています。フィジカルAIのその先を見すえ、国内外の研究コミュニティにも引き続き貢献しながら、ロボティクス分野全体の発展につなげていきたい」と水地准教授は力強く語ります。
<ロボティクスラボでチーム集合写真>
以上
〇関連情報
・玉川大学 eR@sers
・ロボカップジャパン2026の成果報告
https://www.tamagawa.ac.jp/college_of_engineering/news/it/detail-019.html
・ロボカップジャパン @ホームリーグ
https://sites.google.com/site/robocuphomejapan/home?authuser=0
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