国立大学で、にわかに信じられない事態が起きた。

今月、神戸大学にある築60年の学生会館の天井が大規模に崩落する事故が発生したのだ。

この学生会館は学生が日常的に使う場所で、この日は、偶然学生がいなかったため人的被害はなかったが、ある学生は、「1日後だったら確実に誰か巻き込まれていた」と語る。

いったいなぜこのような事故が起こってしまったのか、そして、防ぐことはできなかったのか、背景を取材した。

■「屋根が落ちてくるとは普通に思わない」

事故が発生したのは6月9日午後6時半ごろ。

神戸大学の学生会館6階の天井が、突如として約100平方メートルにわたり崩れ落ちた。

この学生会館は築60年。山の斜面に沿うように6階建てとなっており、主に文化系クラブの部室や自習スペースとして、学生が日常的に利用する施設だ。

崩れた部分の真下にはホールがあり、上空から撮影した映像では内部の鉄骨がむき出しになっている悲惨な状況が確認できた。

ある学生は「屋根が落ちてくるとは普通思わないから怖い」と語り、別の学生は「ちょっとボロい建物なのかなとは思います」と率直な印象を口にした。

学生会館
学生会館
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■「1日後だったら確実に誰か巻き込まれていた」

人的被害がなかったのは、偶然が重なった結果だった。

事故の直前、5月末に台風6号が発生し、期末試験が延期になっていたため、当日は「延期された試験日」にあたり、たまたまクラブ活動をする学生がいなかったのだ。

この建物に部室があるという、文化系クラブに所属する学生に話を聞いた。

学生:テストの予備日で、本当は台風が来ていなければ私たちもその日活動していた。一歩間違えれば重大な事故になっていた。

さらに、6階は普段から楽器系の部活が使用しており、「その時間帯は誰かしら6階にいる状態だった」という。

「1日後だったら確実に誰か巻き込まれていた可能性が高い。死傷者が出てもおかしくなかった」と、危険な状況を振り返った。

まさに間一髪の事態だったのだ。

学生が巻き込まれていた可能性も
学生が巻き込まれていた可能性も

■ クラブ活動にも大きな影響が…

事故は学生のクラブ活動にも深刻な影響を及ぼしている。

部室に保管していた機材や備品は取り出せない状態が続いており、精密機器のレンタルなどで数十万円単位の追加費用が発生している。

外部施設の利用も含め、すでに60万円以上の負担が学生にのしかかっている状況だ。

学生にとって大きすぎる出費だが、大学側から補償についての説明はなく、崩落の原因についても「調査中」とされたままだ。

真下にはホールがあり学生が日常的に利用
真下にはホールがあり学生が日常的に利用

■以前にも雨漏り…排水機能に問題?

崩落の原因について取材を進めると、ある事実が明らかになった。

学内の情報を発信するニュースネット委員会によると、実は3年前、学生会館の3階と4階で大規模な雨漏りが発生し、建物内が水浸しになる事態が起きていたのだ。

さらに2026年4月には、2階のバルコニー部分に広く水が張っている様子が確認されており、排水がうまく機能していなかった可能性がうかがえる。

大学側は取材に対し、「大雨の際は雨漏りがあったが、その都度補修対応をしている。事故以前は法令に基づく点検において崩落の予兆は確認されなかったため、特に利用制限は行っていなかった」と文書で回答している。

以前から雨漏りなどのトラブルが
以前から雨漏りなどのトラブルが

■「未然に防げた事故なんじゃないか」専門家が指摘

建築診断協会の鷲尾僚和氏に天井が崩落した学生会館の映像を確認してもらうと、「こんなに落ちる?」と率直な感想を口にした。

そのうえで、このような分析をした。

建築診断協会・鷲尾僚和氏:屋根面や外壁面あたりからおそらく漏水していた。それが鉄骨を錆びさせ、構造耐力が低下して崩壊につながったと考えます。

鷲尾氏によると、天井が崩落した真下のホールは大空間を確保するために柱がなく、鉄骨をボルトで支える構造になっていた。

漏水により鉄骨とボルトの両方が錆びたことで、崩落に至った可能性があるというのだ。

また、屋上には枯れ葉が大量に堆積しており、数カ月ほど清掃されていなかった可能性があるとみられることも分かった。

鷲尾氏は、落ち葉が排水を妨げ、屋上に水がたまる原因になっていた可能性もあるとし、過去の雨漏りこそが“予兆”だったと指摘する。

建築診断協会・鷲尾僚和氏:漏水というサインがもう出ていたということは、恐らく大学側も把握してる可能性が高いので。

そこを根本解決するような改修であったりとか、1つ手を加えるってことはできたのかなと思う。未然に防げた事故なんじゃないか。

学生会館の構造見立て(鷲尾氏による)
学生会館の構造見立て(鷲尾氏による)

■ 20年で約40億円の減額 国立大学は限界?

大学の財政問題に詳しいジャーナリストの石渡嶺司さんは、神戸大学が厳しい現状に直面しているとみている。

石渡嶺司氏:神戸大学の財務資料を見たところ、建物の修繕にあてるほど余裕があるとは言い難い状況です。神戸大学というのは関西ではトップクラスの大学であって、関西の学術研究をリードしていく立場です。その大学の中の施設が、天井が空いてしまいました。あまりにも情けない。

国立大学は22年前に法人化され、大学運営の自由化が図られた。
しかし、国からの運営費交付金は大幅に減少し続けており、神戸大学もこの20年で約40億円の減額となっている。

それが、設備投資に影響しているのだろうか。

実際、学生によると、「チャイムが壊れてもなかなか直らない」「部屋に空調を付けてほしいと要請しても断られた」などの問題が生じているそうだ。

国からの運営費交付金は大幅に減少
国からの運営費交付金は大幅に減少

■ 厳しい財政状況で安全をどう守るのか?

石渡氏はこうした問題はほかの国立大学でも起きると警鐘を鳴らす。

石渡嶺司氏:他の国立大学でも似たような状況になっている。国の運営する大学、それもトップクラスの大学であっても予算がない。もう国がお金を出すしかない。それ以上の方策は率直に言ってかなり限定的だ。

神戸大学は施設の維持管理について、「社会情勢等を踏まえると厳しい状態が続いているが、必要不可欠なものについては引き続き実施していく予定」と回答している。

あわや学生の命を奪いかねなかった今回の天井崩落事故。台風による偶然がなければ、取り返しのつかない事態になっていたおそれがある。

厳しい財政事情の中で、安全をどう守っていくのかが課題だ。

(関西テレビ「newsランナー」2026年5月25日放送)

天井が突然崩落した神戸大学・学生会館
天井が突然崩落した神戸大学・学生会館
関西テレビ
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